「被害者ポジションが最強」という狂った現代

黒坂岳央です。

現代社会において、「被害者」は最強の「攻撃手段」になった。今は加害者すらも「自分もひどく傷ついた」「その言い方は人としてありえない」とすぐさま被害者のポジションを取ろうとする。

「被害者ぶるな」という言葉がある通り、加害者が最も被害者ヅラをしたがる。SNSにはそうした人の巣窟に思える。

筆者は特定の誰かを個人攻撃しているのではない。「被害者ポジションが最強」というズレた現代社会の構造を批判している。これがまかり通ることで真の被害者が泣く現代社会は明らかに健全ではない。

社会構造の問題とは?なぜ被害者ポジションが最強なのか? 持論を展開したい。

chinaview/iStock

法律より強い「SNS民意」

現代社会は法が正義を決めるようでいて、実際にはSNS民意で決まると言っても過言ではない。

厳密に言えば依然として法であることは正しい。我が国は法治国家であり、法によって人は裁かれる。だが、「実態」としてSNS民意はあまりに強い。

たとえば冤罪が晴れて法的には「無罪」となっても、SNSで「こいつは実はあんなひどいことをした」「裏金を出して法を突破した」などと「誤解」で人は叩く。叩く人を見て集まってきた人がまた叩く。

結局、集団リンチで法の結果と関係なく、民意という感情が相手を裁いている。「裁判所が出した結果」よりも「SNS民意」は強く、現実はこちらで動いている。

そうなると被害者ポジションは強い。弱者という立場の相手に、まともな人ほど何も反撃できない。反撃した瞬間に「弱者叩き」という烙印を押されてリンチを受ける。つまり「どちらがより可哀想か」で勝敗が決まる戦場において、被害者ポジションはノーリスク高リターンの最強戦術として機能する。

この構造を理解すれば、被害者ポジションが増殖している理由は明白だ。そうしたインセンティブがあり、ずる賢くも合理的な人間ならためらわず正義をかなぐり捨てて相手を潰すために使うだろう。

職場でも強い「被害者ポジション」

被害者ポジションは職場でも盾であり、同時に剣として機能する。

典型例が職場でのパワハラ冤罪だ。議論で言い返せなくなった瞬間、あるいは業務上の指摘を受けた瞬間に「自分はハラスメントを受けた」と申告する。申告された側は証明責任を負い、調査が入り、業務が止まる。

事実関係の確認に時間がかかる間、申告者は守られ続ける。「試合に勝っても喧嘩で負けた」という状態だ。論理で負けそうになった時点で戦場を感情の場に移す、極めて合理的な戦術だ。

さらに進化したのが昨今の若手社員に見られる診断書の活用である。上司からの業務指導を受けた後、医療機関の診断書を持参して「うつ状態になった」と訴える事例が増えている。

感情の訴えに医療という権威が加わることで、指摘した側が完全に封じられる構造だ。正当な業務指導すら「加害行為」に転換できる。

被害者ポジションには賞味期限がある

しかしこの戦術には致命的な欠陥がある。明確に賞味期限が存在することだ。

子供が「○○君に叩かれた」と親に泣きついてくる場面を想像してほしい。周囲は同情する。なぜなら子供には自分で問題を処理する能力がまだないからだ。20代の若い子が「あの人にやられた」と泣きつけば周囲も同情的になる。

確かに20代であれば、被害者ナラティブに一定の真実がある。実際に力関係の非対称が存在し、理不尽な扱いを受ける場面も多いからだ。

だが30を超えた大人が同じことをするのは「責任からの逃避」「痛い人」という解釈になる。だが、同じことを40代の管理職がやったらどうなるだろうか。同情を引く代わりに、冷たい目線が向けられるはずだ。

「いい年をした中年が何を子供みたいに騒いでるの?」となるのが普通だ。30半ばを超えたら人は会社組織や後世世代を育成する立場、という周囲の期待値が一気に高まるので、「無条件に同情される」という年齢ではなくなるからだ。

もちろん、中年も同情されるべき文脈はあるだろう。だが、20代よりも明確にその基準値が上がる。

戦略的放置という末路

そして周囲も少しずつ対応を学習する。

被害者ポジションを繰り返す人間のパターンを一度認識した瞬間、周囲は関わることのリスクを計算し始める。何かを依頼すれば被害者にされるかもしれない。指摘すれば騒がれるかもしれない。その計算の結果として生まれるのが「戦略的放置」である。

会社組織においてこれは致命的だ。誰も仕事を依頼しなくなる。重要なプロジェクトから外される。挑戦的な業務が回ってこなくなる。本人は「また無視された」「評価されない」と感じ、再び被害者ナラティブを強化する。だが、やがて本当に誰も相手にしなくなり、孤独を深めていくのだ。

厳しい事を言うと、20代後半くらいから「守られる立場」ではなく「守る立場」を学習するべきだと考える。具体的には取引先、後輩、後世を守る場面が増えていく。自分は上司から「もう30近いでしょ?大人になれ」教育してもらったので大変感謝している。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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