AI時代は資源の定義を書き換える:負債が資源へ反転する地方の未来

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中国で海底データセンターの話題を見かけた。海中の低温環境を利用してデータセンターを冷却するという発想である。

その技術的な実現性についてここで議論するつもりはない。私が興味を持ったのは別の点だった。

なぜ人々は海底にまでデータセンターを沈めようとしているのか。

その答えは単純である。AIは大量の熱を生み出すからだ。

AIブームによって注目されているのは半導体や電力である。しかし、その次に来るボトルネックは熱処理かもしれない。

そして、そのことを考えているうちに、ある疑問が浮かんだ。私たちが現在「価値がない」と考えているものの中に、AI時代の資源が眠っているのではないか。

AI産業が直面する次のボトルネック

ここ数年、世界中でGPUの争奪戦が起こり、大規模データセンターの建設競争が進んでいる。

AIの性能向上競争は、半導体性能競争から電力確保競争へと広がりつつある。しかし、AIが消費した電力のほとんどは最終的に熱へ変わる。どれだけ高性能なGPUを並べても、その熱を処理できなければ計算能力を維持できない。

実際、近年のデータセンターでは液浸冷却や温水冷却など、熱マネジメント技術への投資が急速に進んでいる。

AI産業はCPU競争、GPU競争、電力競争を経て、やがて熱マネジメント競争へ向かうのかもしれない。

資源は環境変化によって生まれる

私たちは資源という言葉を聞くと、石油や天然ガス、レアアースのようなものを思い浮かべる。しかし歴史を振り返れば、それらも最初から資源だったわけではない。

石油はかつて厄介な汚泥のような存在だった。レアアースも需要がなければただの鉱物に過ぎない。

社会が必要とする機能を発見した瞬間、それは資源へと変わる。つまり資源とは物質そのものではない。社会や技術の変化によって価値を与えられた存在である。

そう考えると、現在は価値がないと思われているものの中にも、将来的な資源が眠っている可能性がある。

「負債」が資源へ反転する可能性

現在の地方では、多くのものが負債として語られている。

雪は除雪費用を生み出す。
過疎化は自治体財政を圧迫する。
廃坑や廃トンネルは維持管理コストのかかる負の遺産である。
空き工場や空き施設は衰退の象徴として扱われる。

しかし、もしAI時代のボトルネックが熱になるなら話は変わる。

雪や地下水は冷熱資源として再評価されるかもしれない。
廃坑やトンネルは熱交換設備の候補になるかもしれない。
人口密度の低さは、騒音や景観問題が起きにくいという立地優位になるかもしれない。

実際、秋田県仙北市で活動している知人から興味深い話を聞いたことがある。田んぼ脇の側溝にイワナやヤマメが見られる場所があるというのだ。渓流釣りをする人間としては驚く話だった。都市部の人には単なる自然の豊かさに見えるかもしれない。

しかし別の見方をすれば、それは年間を通じて低温の水が身近に存在していることを意味する。

重要なのはモノそのものではない。社会が何を必要としているかである。

冷やすだけではなく、熱も資源になる

さらに興味深いのは、データセンターは冷却対象であると同時に巨大な熱源でもあることだ。

これまで排熱は捨てるものと考えられてきた。しかし近年では、その熱を利用する発想が広がっている。

例えば温室栽培であれば暖房コストを下げられる可能性がある。養殖施設であれば水温管理の補助になる。木材乾燥や食品乾燥にも利用できるかもしれない。

重要なのは単純に冷やすことではない。熱の収支全体を設計することである。

農業や養殖が盛んな豪雪地帯であれば、冷熱資源と排熱利用先が同じ地域に揃う条件になりうる。冷熱資源だけではなく、排熱利用先まで含めて考えたとき、地方の見え方は大きく変わる。

観光誘致から計算誘致へ

地方創生というと、観光客を呼び込む議論が中心になりがちだ。もちろん観光は重要である。しかしAI時代には別の可能性も見えてくる。

それは「計算を誘致する」という発想だ。

かつて自治体は工場誘致を競った。工場は雇用を生み、税収を生み、地域経済を支えた。

AI時代には、電力、通信、冷熱資源、熱利用先を備えた地域が、新しい意味での産業拠点になる可能性がある。

私は東北の地下水だけで巨大データセンターを冷却できると言いたいわけではない。しかし、これまで価値がないと考えられていた条件が、新たな立地優位になる可能性は十分にある。 

問題とは、まだ使い道を発見されていない資源なのかもしれない

私たちは現在の価値観で未来の価値を判断してしまう。雪は厄介者であり、過疎は衰退であり、廃坑は負債である。それは現在の文脈では正しい。

しかし歴史を振り返れば、価値の定義は何度も書き換えられてきた。

かつて価値がなかったものが、技術革新や社会変化によって戦略資源へ変わった例は数え切れない。AI時代もまた、同じことが起きるかもしれない。

問題とは、それは本当に問題なのか、まだ使い道を発見されていない資源なのかということだ。

私たちが見ている「負債」の中には、次の時代の資源が眠っているのかもしれない。

もしAI時代に熱と水の重要性が増すなら、日本の山岳地形と豊富な山水そのものが、新たな国家レベルの戦略資産として再評価される日が来るかもしれない。

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