
6月最後の金曜日。明日、ダブル台風が東京を直撃する、大雨が降る、大風が吹く、電車が止まるとメディアが大騒ぎしていた日の夕方。わたしは東武鉄道の特急スペーシアに乗るために北千住駅にやってきました。スペーシアって、こんな黄金色でしたっけ…?

列車は春日部、新栃木などの各駅に停まるたび乗客を降ろしていきます。夕方発のスペーシアは多くの通勤客に利用されているようです。鬼怒川温泉駅に到着したときには、同じ車両に乗っていたのはわたしを含めて2名だけでした。

鬼が怒ると書いて鬼怒川。鬼がシンボルで、そこかしこに鬼が構えています。栃木県は下野(しもつけ)国と呼ばれていますが、下野は古くは「けぬ」と呼ばれており、そこを流れる川ということで「けぬがわ」が「きぬがわ」に転じたという説が有力です。

温泉地らしく、駅前には足湯もありましたが、19時を過ぎていて本日の営業は終了。また明日入りに来るとしましょう。

何も食べずに東京からやってきたのでお腹がすきました。温泉に来たお客さんの殆どはホテルの部屋食を食べるので、駅前はそんなに多く飲食店はありません。地元の方用と思われるラーメン屋に入ります。

せっかく栃木に来たので餃子をオーダーしました。大ぶりで食べ応えがあります。私がいる間に他のお客さんが来ることはありませんでしたが、ラーメンも素朴ながらなかなかの美味で来た甲斐がありました。帰るとき傘を忘れてしまったのですが、わざわざ追いかけて届けてくれたことに感謝です。

時刻は20時前。鬼怒川温泉は昔ながらの大型の旅館がほとんどで、この時間に街に出て出歩く必要はありません。旅館の部屋の灯りは灯っていますが、街には人の姿がほとんどありません。

私が泊まるホテルに向かう途中に雨に濡れる猫がいました。ごめんな、エサ何にもないんよ。

今回お世話になったのは、大江戸温泉物語 ホテル鬼怒川御苑。鬼怒川温泉には大江戸温泉物語系列のホテルが複数ありますので要注意です。実際私、ホテル間違えて別のホテルに行きかけました。

この日は夜遅めの到着だったので、癖のない泉質の温泉にゆったりと浸かってそのまま床に入りました。時折電車の音が聞こえてきますが、しょっちゅう通るわけではありません。それでは、おやすみなさい。

台風…?
おはようございます。気持ちいい快晴の朝です。今日、台風が関東を直撃するはずなのですが、こんないい天気。もってます。やはり私は晴れ男です。

ホテルが並ぶ地域の真ん中に架かるふれあい橋。

ホテルの横には、鬼怒川を渡る人道橋、ふれあい橋があります。階段を降りて振り返れば、ここにも鬼が待ち構えています。

ふれあい橋から鬼怒川を見下ろします。川沿いに大規模なホテルがいくつも並ぶ昔ながらの温泉街です。それにしてもほんとうにいい天気。本当はこの日は日光で車を借りて、ここから1時間強のところにある那須までドライブに行く予定だったんですが、さすがに悪天候だろうということで中止しました。これ…ドライブできたんじゃね?

ここからは鬼怒川に沿って上流方向に歩いていきます。土曜の朝、ホテルのチェックアウト時間なんですが人影がありません。みなさん車で移動しているのでしょうか。

鬼怒川プラザホテル前に足湯があります。ここは鬼怒川温泉発祥の地。江戸時代には滝温泉と呼ばれており、日光の寺社領であったことから大名や僧侶のみが利用できる温泉でした。
明治時代に一般にも開放されると会津街道を行き交う旅人のための宿ができはじめます。昭和2年に川向こうの藤原温泉と合わせて鬼怒川温泉と改称し、東武鉄道が鬼怒川温泉駅まで延伸されると東京の奥座敷として多くの観光客が押し寄せるようになり、高度経済成長期に大型のホテルが連なる北関東の一大リゾート地となりました。

ふれあい橋の北に架かるくろがね橋から鬼怒川を眺めます。台風とは思えない青空の下、深緑がまぶしいです。

ここからは川の東岸を鬼怒川公園駅に向かって歩いていきます。東武鉄道と川の間の一本道。その間にホテルと思われる建物が並んでいるのですが、

どこも建物は閉鎖され、そのまま廃墟として放置されてしまっています。鬼怒川温泉は近年廃墟となるホテルが多く、景観を概して問題になっていますが、駅からはやや遠いこのエリアは特にそれが目立ちます。

バス停は第一ホテル前ですが、その第一ホテルは2008年に閉館されています。

川の向こうから廃墟ホテル群を眺めます。
バブル期までは大型の観光ホテルが盛況だったものの、バブル経済の崩壊や団体旅行から個人旅行への旅行需要のシフトなどもあって、大型のホテルは苦境に立たされることとなりました。鬼怒川温泉や水上温泉は新幹線の恩恵にあずかりにくく、日帰り圏内となったことから宿泊客が減少して衰退の度合いが大きかったようです。
一方、同じく一時期衰退した熱海温泉は新幹線で1時間弱という地の利を生かし、日帰り需要も多く取り込み、風光明媚な相模湾の絶景を堪能しに宿泊する方も多くいます。熱海より先、伊豆半島への観光の足掛かりにしている方も多いようです。
もともと新幹線の恩恵がなかった草津温泉はうまく個人旅行への転換を図り、若者が多く集まる賑やかな温泉街となっています。鬼怒川温泉では駅周辺をはじめとして店舗が少なく、鬼怒川の景観以外に歩いて楽しめる観光スポットがないことが若者が魅力を感じない理由のひとつなのではないかなと感じました。熱海は駅前の商店街、草津温泉は湯畑を中心に寄り道できる店舗が多く並びます。鬼怒川温泉は大型の団体旅行からの脱却が図られておらず、復活にはまだまだ時間がかかるのではないかなという印象でした。
東武の特急は鬼怒川温泉駅までで、その先には来ないものの、この廃墟群は線路脇で電車から丸見えです。かなりイメージが悪いです。本来は所有者の責任ですが、日光市や栃木県も本腰を入れて対応した方がいいと思います。

廃墟ホテルを撮影するのに渡った橋はこちら。吊り橋ですが、しっかりした作りです。ただ、人が全くわたっていないのがちょっと寂しいし、怖さを感じます。

吊り橋からも曲がって流れる鬼怒川を撮影。


散歩の最後は、鬼怒岩橋の北にある大滝へ。滝といいますが、高低差は少なく濁流が岩の間を勢いよく流れているのに近いです。かつて鬼怒川温泉が滝温泉と言われたのはこの滝があったため。滝の畔に宿をとれば一日この景観を眺めることができます。真夏なんか涼しそうでいいですよね!
名勝・鬼怒川のほとりに沸く温泉でかつて多くの観光客を集めた鬼怒川温泉。ホテルこそ宿泊客は多かったものの、多くはここから日光方面に向かってしまっているようで鬼怒川温泉で観光を楽しんでいる方はほぼおらず、街は閑散として寂しい印象でした。
日光市としては東照宮のある観光エリアに集中的に投資したいのかもしれませんが、今の時代にあった、魅力ある観光地として新たな息吹を注ぎ込んでもらいたいなと思いました。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2026年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。







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