私が父親から教えられたことの一つに「衣食住は潰れない」があります。父親が洋服屋をやっていたこともあるのですが、その意味は人が生活するにおいてその3つだけは絶対に必要とするものだ、と言うことです。同様に「鉄は産業のコメ」ともよく言われたのですが、これはどこかで聞いてきたことだったのでしょうけれどまだ中学生ぐらいの私の心に刻んだのであります。なので私は後者の格言を信じてゼネコンに入社してしまったのであります。
ユニクロで展開するファースト リテイリングが今年8月の決算見込みで売り上げ3兆9700億円となり、業界世界第2位のH&Mを抜き、いよいよ業界1位のZARAのブランドで知られるインディテックスを追撃します。世の中がAIだ、データセンターだ、半導体だと大騒ぎする中、実は衣食住の基本である衣料の会社がしっかり成長していることに改めて父親の言い残したごく当たり前のことが身に染みるのであります。

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日本の衣料業界ではユニクロはともかく、しまむらが熱いとされます。しまむらは一時、ユニクロに踊らされて大量生産、コスト重視型経営をやったのですが、大失敗し、3期連続の減益を経験します。そこで切り替えたのが「お宝さがし型経営」。一店舗に同じ商品はごくわずかしかないため、客が宝物探しに毎日のように来る、人によっては複数店舗を行き来するというファン層を作り上げます。しまむらは売り上げ7000億円程度でファーストリテイリングに次ぐ業界国内第2位ですが、経営の推移を見ると着実に安定して伸びているのです。
衣食住のビジネスは基本的に安定成長です。ある日突然洋服を10枚必要になる人はいません。住宅が2つ必要な人は少ないでしょう。人が成長しても3倍食べられるわけでもありません。この業種は目立たない、だけど着実であるというのが特徴であります。
ユニクロの柳井正氏はかつて3兆円の事業に成長させたいといっており、それはとうにクリア。次は5兆円と言っていましたが、今4兆円ですから柳井氏が現役のうちに到達するのではないかと思います。しかし、当時は誰も信じない高い目標でした。何故到達できたかと言えば海外事業が花咲いたからです。上述のように人は突然洋服が必要になるわけではありません。ましてや人口減の日本において衣料で成長するのは至難の業。ならば海外に打って出る、でした。ですが、ユニクロの歴史を見ればわかる通り、当初、英国に出店するも大失敗で撤退。その後、満を持して海外展開を行い、アジアから欧米までまんべんなく市場をカバーすることで世界に衣料を届けたのです。
私は住のビジネスをしています。分譲住宅については時の流れ、政治的判断、経済状況で売れ行きは大きく左右されます。しかし、それは所有形態の話であって所有だろうが、賃貸だろうが住むところは必要なのです。そして人流のグローバル化が進めば数年単位のセカンドハウスはどうしても必要になります。ゆえに私は東京で賃貸住宅を経営し、安定した運営ができるのです。そのポイントは一時的住居を必要とするセグメントをピンポイントでとらえることです。私のエリアでは学生、新社会人、及び外国人が主流です。もちろん、ファミリー層向け賃貸もありますが、私の事業エリアは東京の利便性の良いところなのでファミリー層エリアではありません。そういうターゲットマーケッティングをするのです。
衣食住ビジネスの特徴は景気に左右されにくいのです。もちろん、不景気なら洋服を買う枚数は減らすかもしれませんが、ゼロになることはないでしょう。カナダで景気の浮沈を見ていると不景気の時はレクリエーショナルな出費が一番に削られます。それらは極端な話、ゼロにすらなり、ビジネスをする側からすれば消えてなくなるということです。飲食については私はエキスパートではないですが、外食か家で食べるかの違いはあっても食べるという行為は変わらないのです。
そう考えると衣食住の基盤となるビジネス、ベーシックな衣料の製造販売や賃貸住宅、食材提供の下支えをする業種などは不可欠である一方、参入障壁は思った以上に高いと思います。それは昔からやっている業者が圧倒的シェアを占めていることから新参者が参入できる余地が少ないためです。よって新たに市場参入するには高級衣料や飲食店経営などに走らざるを得ない、だけどそこはレッドオーシャンが待っているともいえるのでしょう。
起業は2-30年前に比べてはるかにハードルが上がりました。私も「若者よ、起業せよ」とはたやすく言えなくなりました。国を挙げてのスタートアップ養成もありますが、成功者になるのは私の実感では数%だろうな、と思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月10日の記事より転載させていただきました。







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