キオクシアホールディングスの株価が再び急落した。17日の東京市場では、前日比1万円(13.67%)安の6万3100円まで売られる場面があった。
6月22日には上場来高値の11万2700円をつけていたため、わずか1カ月足らずで約45%下落したことになる。3週間ほどで株価が半値近くまで下がった計算だ。
キオクシア暴落で追証が発生しましたがお金を用意することができません
1658万の負債を抱えてしまいました
どうすれば良いのでしょうか
— ✹✹☆ (@a_rin_ur) July 13, 2026
昨日キオクシア買った
運命には抗えない… pic.twitter.com/RCcn7MPCiB— 水谷隼🏓Jun Mizutani (@Mizutani__Jun) July 2, 2026
もちろん、キオクシアの工場が止まったわけでも、NAND型フラッシュメモリの需要が突然消滅したわけでもない。問題は企業の技術力ではなく、その将来を株価がどこまで先取りしていたかである。
1年半で75倍になった株
キオクシアは2024年12月、公開価格1455円で上場した。それが2026年6月22日には終値で10万8700円となり、公開価格の約75倍に達した。時価総額が一時トヨタ自動車を上回るほどの熱狂だった。
背景にあったのは、生成AI向けデータセンターの拡大である。
AIというとGPUやHBMが注目されてきたが、推論サービスが本格化すれば、大量のデータを保存するNANDフラッシュメモリやSSDも不足する。キオクシアはAI関連の「次の主役」として買われた。
実際、同社の2026年3月期は、売上収益が前期比37%増の2兆3376億円、営業利益が92.7%増の8704億円と急成長した。業績そのものが好調だったことは間違いない。
しかし、利益が2倍になった企業の株価が75倍になれば、もはや現在の業績を買っているのではない。何年も先の成功を、失敗の可能性をほとんど考慮せずに織り込んでいたのである。
「AIだから下がらない」という物語
株価が上昇している間、強気派はさまざまな理由を挙げていた。
AI需要は始まったばかりだ。NANDは供給不足になる。キオクシアの技術は他社より進んでいる。データ量は増え続ける。従来の半導体サイクルとは違う――。
これらは、すべて部分的には正しい。
キオクシアは次世代の3次元NANDを開発し、AIサーバー向けの高性能SSDにも力を入れている。NANDがスマートフォンやPCだけでなく、データセンターの基盤技術になっていることも事実である。
だが、優れた企業であることと、いくらで買ってもよいことは別問題だ。
2000年前後のITバブルでも、インターネットが社会を変えるという予測自体は正しかった。それでも、将来の利益を過大に織り込んだ株価は崩壊した。技術革命が本物であるほど、投資家は価格を無視しやすい。
好材料で上がらなくなったことが転換点か
相場の天井は、悪材料が出たときではなく、好材料が出ても株価が上がらなくなったときに形成される。
キオクシアの場合も、AI需要の拡大や次世代製品、大株主の売却圧力後退といった材料が伝えられても、上昇を維持できなくなった。6月26日にはOpenAIの上場延期観測をきっかけにAI関連株が売られ、キオクシアも一時12%下落した。
企業固有のニュースというより、「AI」という物語で一括して買われていた資金が、一括して逃げ始めたのである。
直近でも、米国や韓国のメモリー株の上げ下げに連動し、キオクシア株は1日で10%を超える変動を繰り返している。これは長期投資家が企業価値を冷静に評価している値動きではない。短期資金が同じ出口に殺到している投機相場の値動きだ。
「今回は違う」は最も危険な言葉
バブルのたびに語られるのが、「今回は違う」という言葉である。
鉄道、電力、自動車、インターネット、住宅、暗号資産、そしてAI。新しい技術や制度が登場するたびに、過去の評価基準は通用しなくなったと説明される。
確かに、今回は過去と違う。すべてのバブルには、それぞれ異なる技術と物語がある。
歴史を振り返ると、その時代を象徴した大型バブルは、その後80%前後の大幅下落を繰り返してきた。今のAI・半導体株も期待を先取りし、既に半値以下となった銘柄もある。「キオクシア」もわずか3週間で半値近くまで急落している。「今回は違う」という言葉こそ、歴史が最も警戒してきたサインである。 pic.twitter.com/pMoFILvPQe
— 朝倉智也(Tomoya Asakura) (@tomoyaasakura) July 16, 2026
しかし、投資家が将来を過大評価し、価格が利益から乖離し、最後に全員が同じ出口へ向かう構造は変わらない。人間の強欲と恐怖には、イノベーションが起きていないからだ。
キオクシアが成長企業であることと、キオクシア株がバブルだったことは両立する。株価が半値になっても、上場時の公開価格と比べれば、なお40倍を超える水準である。
45%下落したから割安になったとは限らない。75倍になった株が半値になっただけかもしれない。
「今回は違う」という言葉が市場を支配したとき、投資家が警戒すべきなのは企業の将来ではない。その将来に対して、自分がどれほど高い値段を払っているかである。

キオクシア







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