超大型倒産もあり得るAI戦国時代

かつてEVがインキュベーションから成長期に移行した頃、世界中の自動車メーカーがこぞってその開発に臨み、多くの自動車メーカーが一定の開発達成はしたものの期待したほどの市場の成長スピードとならず、撤退を余儀なくさせられた会社が後を絶ちませんでした。その際展開の特徴は中国市場で国内戦国時代を勝ち抜いた数社が世界戦略戦争に参入し、先駆した西側企業が過剰投資で企業体力が落ち、資金余力の小さい企業を中心に淘汰され、現在に至る流れかと思います。

日本は幸いにしてか、EVについては世界に大きく出遅れたため、いざ参戦と言う時には既に戦争は終わっていた、という何とも表現のしようがない状況にあったと言えます。(もちろん、日本勢はHVが作れたことで生き残りができたとも言えるのかもしれません。)

では現在いよいよ佳境に差し掛かったAI第一次開発競争はどうなるのか、考えてみたいと思います。

孫正義氏とサム・アルトマン氏 2025年5月 ソフトバンクHPより

私の今の見立てを結論から言うと相当の衝撃がおき、超大型倒産もあり得るとみています。これはあくまでも企業経営という枠組みにおいてAIという「金くい虫のお化け」に対応できるのか、という観点から見ています。AIがEVのように伸びが緩やかになるかどうかは別の視点から分析する必要があります。

数年前にメタのザッカーバーグ氏がAIに参入すべきかどうかの瀬戸際の際、「やらないリスクよりやるリスクを取る」と決断し、その後、爆速で投資を重ね年間でAIに20兆円以上も投じています。これはザッカーバーグ氏がSNSから次の業態への変化にうまく軌道に乗せられなかったことへの反省があると考えています。例えばビットコインが世の話題をさらっていた頃、ザッカーバーグ氏はリブラという独自の仮想通貨を作る構想を進めるもアメリカ議会などから強い反発を食らい、幻のプランとなったことがあります。

GAFAMがブームになって以降、それらの企業の株価は決してものすごく上がっているという状況にはありません。むしろ、事業成績が高原状態の中、次の高みに向かうために誰もが必死であり、その中でAIは確実な進歩と人間社会への根本的な変革を与えるのがほぼ確実視される中、ハイパースケーラーとしての生き残りを賭けたとも言えるのです。

しかし、この賭けに出たのはメタだけでもなく、ハイパースケーラーだけでもないのです。世界で生き馬の目を抜く様な経営者たちが血みどろの戦いに挑んでいる、それがAIの地獄絵にもなりつつあるわけです。

一方でアメリカ中心のAI技術勃興に対して中国の出方は常に最大の関心事でありました。Deep Seekが発表された時、大きな衝撃となったのは単に彼らがアメリカの何分の一もの安価で短期間に作り上げただけではなく、中国がそこまで力をつけた(ないし、アメリカの技術を盗んだ、ないし利用した)ことで瞬く間に注目を浴びるまで成長したことへの脅威でした。

今般、中国版AIの目玉とされるムーンショットAI社(月之暗面)が香港市場で上場する方向だとリークされました。ムーンショットのKimi K3はアンソロピックのClaude Fable 5やオープンAIのGPT5.6に次ぐレベルだとされ、西側諸国で今まであまり注目されてこなかっただけに第2のDeep Seekショックが起きないとも限らない状況にあるのです。ちなみにKimiという名前は日本に関係するのかと思いきや、創業者のヤン ジリン氏の英語のニックネームでそのあとのKは世代と言う意味でK3で第3世代という意味であります。

私は少し前に汎用型AIの企業は3社程度に絞られるのではないか、と申し上げたことがあります。なぜかといえばEVの開発の時同様、巨額の投資への体力とそれに見合うリターンが見込まれるかどうか、ここのバランスが非常に悪い気がしているのです。

では何が不安なのか、というとハイパースケーラーはデータセンターの確保が一つのステップになります。ではデータセンターが誰のもの、と言えばそれらハイパースケーラーとは全く関係のないデベロッパーがデータセンターという器を作るのです。デベロッパーは基本的にエンドユーザーを確保した上で建物をカスタマイズして作り上げます。ただ、デベロッパーは私が店舗などを開発するのと同様、作るのは空洞であります。極めて高性能で気密性があり、安全性がある箱なのです。わかりやすく言えば金庫を作る会社は金庫の中はタッチしませんよね。それと同じです。

つまり、データセンターの箱が出来たらそこにハイパースケーラーたちが10-20年単位で賃貸借契約して、彼らがサーバーなどを持ち込むわけです。今はその段階にあるのです。要するにAIにコミットする会社にとって資金の流出が始まるのはこれからであります。また帳簿上、出来上がっていないデーターセンターのリースコミットメントは簿外ですから、パッと見ても負債が膨らんでいるようには見えませんが、これがこれから1-2年のうちに天文学的数字に膨れ上がるわけです。

確かにAIの勝者は当面は絶対君臨できるかもしれません。ですが、FIFAのサッカー同様、優勝候補と言われたところが次々と脱落していくのです。その脱落者が誰になるか、いよいよその決戦が待ち構えているわけです。更に最強敵である中国がいよいよここで頭角を現してきたとなればその勝負の行方は全く予知できないとも言えそうです。

一般経済問題として気を付けるべきは名もなきデベロッパーがデータセンターを開発するにあたり、巨額の借り入れを行っている点であります。銀行などは当然でありますし、一部のメガ不動産投資企業、ブラックストーンなども当然絡んでくるわけでAIの行方は確実に世界経済にリーマンショック級の影響を与えると言ってよいでしょう。とすれば今回も日本はソフトバンクG以外、出遅れていることを良しとするのか、なんだかあまり冴えない話ではあります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月20日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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