若林楽人の西武復帰で考える「終身雇用型プロ野球」の限界

プロ野球では珍しい「出戻り」が実現した。

西武は7月29日、巨人の若林楽人外野手を金銭トレードで獲得すると発表した。若林にとっては、わずか2年ぶりの古巣復帰となる。

SNSでは巨人ファンから「今までありがとう」「寂しいけど西武でも頑張って」といった惜別の声が相次いだ。

しかし、この移籍は単なる「古巣復帰」という美談以上に興味深いものがある。

プロ野球でも、もっと選手が会社員のように球団を行ったり来たりしていいのではないだろうか。

西武から巨人へ、そしてまた西武へ

若林は駒大から2020年ドラフト4位で西武に入団した。

ルーキーだった2021年には44試合で20盗塁。5月の時点で両リーグ最速の20盗塁に到達するなど、「新スピードスター」として一気に注目を集めた。

ところが、その後は故障などもあり、レギュラー定着には至らなかった。

2024年6月、西武は若林を巨人へ放出し、松原聖弥を獲得する交換トレードを成立させた。

巨人移籍後の若林は同年にサヨナラ打を放ち、リーグ優勝も経験した。2025年には86試合に出場し、打率.241、3本塁打、16打点、9盗塁を記録した。一方、今季はここまで出場機会を減らしていた。

そして今回、西武が金銭トレードで若林を呼び戻した。

西武では外野手に故障者が出ており、選手層を厚くしたい事情がある。若林の走力や守備力、そして何より西武という球団を知っていることはメリットになるだろう。

2年前にはトレードで放出した選手が、チーム事情が変われば再び「必要戦力」になる。

これは決しておかしな話ではない。

「一度出た会社には戻れない」は古い

日本のプロ野球には、いまだに「生え抜き」という言葉がある。

ドラフトで入団してから引退するまで同じ球団でプレーする選手は特別視される。一方、FAやトレードで移籍してきた選手はしばしば「外様」と呼ばれる。

しかし、考えてみれば不思議な話である。

一般社会では転職が当たり前になった。一度退職した会社に再入社する「アルムナイ採用」も珍しいものではなくなりつつある。

ある会社では力を発揮できなかった人が、別の会社で経験を積み、数年後に戻って活躍する。そんなキャリアも今では自然なものになっている。

スポーツ選手も同じではないだろうか。

監督が変わる。戦術が変わる。競争相手が変わる。本人の技術や経験も変わる。

選手の価値は固定されたものではない。

若林も西武を離れたことで巨人の野球を経験した。セ・リーグでプレーし、優勝争いも経験した。その経験を持って再び西武へ戻る。

同じ若林楽人でも、2024年に西武を出たときの若林と、2026年に戻ってくる若林は違う選手なのである。

MLBでは移籍はキャリアの一部

この点で、日本よりはるかに選手の移動が日常化しているのがMLBだ。

MLBではFAやトレード、マイナー契約などによる移籍が頻繁に行われている。オフシーズンには各球団の補強や放出が大きなニュースとなり、移籍市場そのものが野球の重要なコンテンツになっている。

かつて在籍した球団に戻ることも、それほど特別な出来事ではない。

そこにあるのは「裏切った」「帰ってきた」という感情よりも、「今、その選手がチームに必要か」という判断だ。

もちろん、ファンにとって球団への愛着は大切である。

しかしプロスポーツである以上、球団は最適な選手を集め、選手は自分の能力を発揮できる環境を求める。その流動性が高まれば、埋もれていた才能が生かされる可能性も高まる。

ただし、日本のプロ野球はまだ「転職社会」ではない

もっとも、今回の若林の移籍を一般社会の「転職」とそのまま同一視することはできない。

会社員なら原則として自分で会社を辞め、次の勤務先を選ぶことができる。

しかしプロ野球選手は、一定のFA資格を取得するまで自由に他球団と契約できない。トレードも基本的には球団間で決まり、選手本人が「西武に転職します」と応募するわけではない。

そういう意味では、プロ野球はまだ本当の意味での「転職社会」ではない。

近年は現役ドラフトが導入され、出場機会の少ない選手が新天地で活躍するケースも増えてきた。これは球界にとって良い変化だろう。

一つの球団で出番がないからといって、その選手の価値がないわけではない。

環境を変えれば活躍するかもしれない。数年後には古巣が再び必要とするかもしれない。

若林の西武復帰は、それを象徴する移籍ではないだろうか。

「生え抜き」か「外様」かではなく、どこで選手の能力を最大限に発揮できるか。

プロ野球も、もう少し「転職」に寛容な世界になっていい。

若林がベルーナドームで再び躍動すれば、「出戻りも悪くない」と考える球団やファンが増えるかもしれない。

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