キオクシア株は値上がり分をほぼ吐き出した壮大な「行ってこい」

AI・半導体ブームの象徴だったキオクシアホールディングスの株価が、猛烈な勢いで逆回転している。7月29日のキオクシア株は前日比6170円(13.8%)安の3万8380円で引け、5日続落となった。

6月22日に付けた上場来高値11万2700円からの下落率は約65%に達する。わずか1カ月あまりで株価の3分の2が消えた計算だ。

日本経済新聞

AI期待で膨らんだ株価が急速に逆回転

キオクシア株の急騰が本格化したのは4月だった。3月31日の終値は1万9080円。それがAI向けデータセンターの拡大に伴うメモリー需要への期待から買われ続け、6月22日には11万2700円まで上昇した。3カ月足らずで約6倍である。

ところが、そこから景色は一変した。7月だけで株価は5万1300円、率にして57%下落。6月末に49兆円まで膨らんでいた時価総額も、29日時点では約21兆円まで縮小したという。

3月末から6月高値までの値上がり幅は9万3620円だった。一方、高値から7月29日までの下落幅は7万4320円。つまり、わずか1カ月あまりで、それまでの値上がり分の約8割を吐き出したことになる。まさに壮大な「行ってこい」が完成しつつある。

「AIなら何でも買い」の反動

もちろん、キオクシアの事業そのものが突然悪化したわけではない。生成AIの普及でデータセンター向けストレージ需要が拡大するという長期的なストーリーには合理性がある。キオクシアもAI社会の拡大を成長機会として位置づけている。

しかし株式市場では、企業の将来性と株価が適正かどうかは別問題だ。春以降の相場では「AI」「半導体」という言葉が付くだけで資金が集中し、業績改善をはるかに先取りするような株価形成が進んだ。その代表格がキオクシアだった。

上昇局面では「上がっているから買う」というモメンタム投資が株価を押し上げる。ところが流れが逆転すると、今度は「下がっているから売る」という力が働く。

7月相場で起きているのは、企業価値が1カ月で劇的に変化したというより、過剰な期待によって付いた価格が剥落していると見るほうが自然だろう。

「半値八掛け二割引き」まで到達

興味深いのは、昔から相場で知られる「半値八掛け二割引き」という格言だ。高値から「半値」×「8掛け」×「2割引き」まで下落するという意味で、計算すると高値の32%になる。

キオクシアの上場来高値11万2700円に当てはめると約3万6064円だ。29日の安値は3万7650円であり、ほぼこの水準まで下がった。単なる相場格言に科学的根拠があるわけではないが、市場参加者の心理を考えるうえでは興味深い数字である。また株価は100日移動平均線を割り込み、3万2496円の200日移動平均線も視野に入った。

31日の決算で「仕切り直し」になるか

次の焦点は7月31日の決算発表だ。キオクシアは同日15時30分に2027年3月期第1四半期決算を発表する予定としている。ここでAI向け需要の強さや今後の収益見通しが改めて確認されれば、急落に歯止めがかかる可能性はある。一方、少しでも市場の高すぎる期待に届かなければ、株価がさらに調整する可能性も否定できない。

キオクシアの株価は3月末の1万9080円と比べればまだ約2倍であり、「完全な行ってこい」には至っていない。しかし、11万円台まで駆け上がった熱狂から見れば、すでに値上がり分の約8割が消えた。

わずか4カ月で「AI期待→熱狂→急落」という一連のサイクルをここまで鮮明に描いた銘柄も珍しい。キオクシアのチャートは、企業の成長ストーリー以上に株価が先走ったときに何が起きるのかを示す、2026年のAI相場を象徴するチャートになりつつある。

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