米国のベッセント財務長官が、日本の経済政策についてかなり踏み込んだ発言をしている。ロイターのインタビューでベッセント氏は、日銀の利上げについて聞かれ、「私は彼らに何をすべきか指示するつもりはない」と断ったうえで、「われわれはおそらくアベノミクスの終わりに達したと思う。あれはリフレ政策だった」と述べた。

ロイター
「デフレ脱却」したのにリフレ政策を続ける矛盾
アベノミクスは2013年、長期デフレから脱却するために始まった。大規模な金融緩和、財政政策、成長戦略という「3本の矢」で需要を刺激し、物価を上げることが目的だった。
ベッセント氏は、その目的はすでに達成されたと評価している。日本はデフレを「克服した」と述べ、アベノミクスの成果を享受すればいいと指摘した。
実際、2026年7月の全国消費者物価指数は総合で前年比1.9%、生鮮食品を除く指数で1.8%上昇している。ここで減税、補助金、政府支出の拡大、低金利を組み合わせれば、デフレ対策をインフレ局面で続けることになる。病気が治ったのに同じ薬を飲み続けているようなものだ。
日銀の9月利上げを予想
高市政権はアベノミクスを高く評価し、成長分野への政府投資や家計支援など積極財政を進めているが、日銀は逆方向を向いている。日銀は6月に政策金利を1%まで引き上げ、ロイター調査では9月にも1.25%へ引き上げるとの予想が強まっている。
背景には円安とインフレ圧力がある。政府が財政でアクセルを踏み、日銀が金利でブレーキを踏む。これでは政策として整合性がない。
ベッセント氏も日銀の植田和男総裁について「正しいことをすると思う」と述べ、金融政策の正常化に信頼を示した。これまでにも日銀の利上げを促す発言を繰り返しているので、これは9月の金融政策決定会合で政策金利を1.25%に上げるという予想だろう。
円安を介入だけで止めることはできない
さらに重要なのが円安だ。ドル円は再び160円台に入り、市場では日米による再度の協調介入への警戒が強まっているが、ベッセント氏は今回のインタビューで現在の円相場について「かなりうまく抑えられている」と述べ、「無秩序な動き」ではないとの認識を示した。
これは日本政府にとって微妙な発言である。160円を超えたからといって、米国が毎回一緒に円買い介入してくれるわけではないからだ。そもそも財政を拡張して円安要因をつくりながら、円安になったら為替介入するのでは政策が自己矛盾している。為替市場が見ているのは日本の経済政策そのものだ。
アベノミクスを「卒業しろ」というアドバイス
もっとも、ベッセント氏はアベノミクスを批判しているわけではない。むしろその成功を高く評価している。彼の発言のポイントは、「アベノミクスは失敗したからやめろ」ではなく、「成功したのだから、もう卒業しろ」ということだ。
現在の「タカイチノミクス」については、規制緩和や労働市場改革、株主を重視する政策を評価している。つまり財政・金融政策まで安倍政権時代に戻す必要はないが、構造改革は続ければいいという考え方である。
2013年の日本に必要だったのはデフレ脱却だったが、2026年の日本が直面しているのは、円安、輸入物価上昇、国債金利上昇という別の問題だ。アベノミクスが正しかったとしても、永久にアベノミクスを続ける理由はない。米国からそれを指摘される前に、日本政府が気づくべき話ではないだろうか。






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