東大の新学部「価値創造学部」は絶滅危惧種のコンサル育成をめざす?

東京大学が約70年ぶりに新しい学部をつくります。2027年9月に開設予定の価値創造学部(College of Design)です。授業はすべて英語。文系・理系の垣根を越え、社会課題を発見し、世界にインパクトを与える「チェンジメーカー」を育てる学部だそうです。

公式ホームページ

これはどう見てもコンサル養成所

価値創造学部のカリキュラムは、幅広い分野を学び、社会課題を発見し、仮説を立て、チームで議論し、プレゼンし、インターンシップを経験し、最後にはプロジェクトをまとめるという構成です。

どこかで聞いた仕事内容ではないでしょうか。そう、東大生の就職人気ナンバーワンの外資系コンサルです。

東大は「コンサル養成学部をつくります」とは一言も言っていません。「価値創造」「社会課題」「デザイン」といった美しい言葉を並べています。しかし、この手の抽象語を大量に並べるところまで含めて、かなりコンサルっぽいのです。

コンサルはAIで絶滅危惧種になる

皮肉なのは、東大が5年かけて育てようとしている人材の仕事を、生成AIが猛スピードで奪い始めていることです。

資料を集める。要約する。市場を分析する。競合を比較する。論点を整理する。仮説を立てる。文章を書く。スライドの原案をつくる。これはまさに、若手コンサルタントが徹夜でやってきた仕事でした。

かつて外資系コンサルは、東大卒を大量採用し、ExcelとPowerPointを駆使して企業の課題を分析し、それを高い時間単価で販売することで急成長しました。しかし今や、その「新人が徹夜でつくる資料」をAIが数分で仕上げます。残業代は不要です。

東大は「昨日の勝ち組」を量産するのか

日本の大学は、社会で成功した職業が現れると、その職業に必要とされた能力を教育し始めます。金融が花形になれば金融教育、ITブームが来れば情報学部、起業が流行ればアントレプレナー教育。そして今度は「デザイン思考」と「価値創造」です。

しかし大学には時間がかかります。学部を設置し、学生を募集し、5年間教育して卒業させる頃には、世の中は次のゲームに移っています。

価値創造学部の第1期生が社会に出るのは2030年代です。その頃、企業が本当に欲しがっているのは市場調査をして戦略を提案する人材でしょうか。それともAIを自在に使い、自ら会社をつくり、商品を売り、失敗の責任まで引き受ける人材でしょうか。

必要なのは「課題を語る人」ではなく「自分でリスクを取る人」

もちろん、専門分野を越えて考えることは重要ですし、英語で学ぶことも必要です。複雑な社会課題を前に、従来の縦割り教育だけでは限界があるという東大の問題意識には賛成です。

しかし、「課題を発見して解決策を提案する人」は、もう十分にいます。これからはAIが、その仕事の大半を代替するでしょう。足りないのは、自分の金と人生を賭けて、その解決策を実装する人です。

起業家は「御社の課題を整理しました」と言って帰ることはできません。製品をつくり、顧客を獲得し、資金を集め、失敗すれば自分が責任を負います。そこがコンサルとの決定的な違いです。

今から外資系コンサルという「昨日の勝ち組」をめざす人材を量産しても、日本経済はあまり豊かになりません。むしろ自ら会社を立ち上げ、研究成果を事業化し、誰も答えを知らない問題に挑む卒業生がどれだけ生まれるか。それこそが、本当の「価値創造」になるはずです。

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