高校無償化で私立高校に人気が集中:公立高校の定員割れが相次ぐ予想通りの展開に

高校授業料の無償化が広がる中、公立高校から私立高校への生徒流出が鮮明になっている。兵庫県の2026年度公立高校一般入試では、全日制の平均倍率が0.97倍となり、2015年度の学区再編以降で初めて1倍を割った。長田高校などの進学校を含め、79校109学科が定員割れした。私立高校への進学希望者増加が背景の一つとみられている。

【参照リンク】高校無償化で「私立が第1志望」増、県立は相次ぎ定員割れ…苦境に立つ公立はどう立ち向かう? 読売新聞

兵庫でも公立高校の倍率が1倍割れ

大阪府ではさらに深刻だ。今春の公立高校入試では140校中67校が定員割れする一方、私立高校の専願率は過去最高となった。府は8月、3年以上定員割れが続いている淀商業、鶴見商業、住吉商業の3校を統合し、新たな商業系高校を設置する方針を示した。

大阪府は2026年度から、所得制限なしで高校授業料の完全無償化を全学年に拡大した。保護者の負担軽減や学校選択の自由を広げることが目的だが、公立と私立の授業料差が小さくなったことで、設備やブランド力、大学進学実績などを理由に私立を選ぶ家庭が増えたとの指摘もある。

会見する吉村大阪府知事

東京・大阪で進む私立高校への流出

同じ傾向は東京でもみられる。2026年度の都立全日制高校の第1志望率は65.79%で、前年から1.18ポイント低下した。東京都も私立高校について所得制限を設けず、平均授業料相当額まで支援している。

高校無償化によって家計負担が軽減されること自体は歓迎されやすい。しかし、私立を選ぶ際の価格差が政策的に取り除かれれば、公立高校はこれまで以上に生徒獲得競争にさらされる。その結果、定員割れした公立校が統廃合される流れが強まる可能性がある。

商業・工業高校の縮小に懸念

とりわけ問題なのが、公立高校の縮小が普通科だけでなく、商業や工業など職業教育を担う学校にも及んでいる点だ。

大阪府自身、商業系高校についてDXやデータサイエンスなどを取り入れ、産業界を支える人材育成を掲げている。その一方で学校数を減らせば、地域の職業教育の受け皿そのものが縮小しかねない。

高校無償化は「人への投資」という名目で進められている。しかし、税金で私立高校の授業料を肩代わりしながら、公立の職業教育を縮小するのであれば、政策目的と結果が逆転する。

高校無償化より「職業教育無償化」を

むしろ今後必要なのは「高校無償化」から「職業教育無償化」への転換ではないか。AIの普及によってホワイトカラー業務の代替が進む一方、製造、建設、設備、物流などでは人手不足が続いている。

工業高校や商業高校、専門学校、職業訓練施設を18歳までの若者だけではなく、20代、40代、60代でも学び直せるリスキリング拠点にする方が、「人への投資」としては合理的だ。

高校無償化は大阪維新が全国に先駆けて進めてきた看板政策である。しかし、その結果として公立高校、とりわけ産業人材を育てる専門校の統廃合が加速するなら、将来振り返ったとき、維新最大の政策失敗と評価される可能性もある。

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