農林水産省は2日、2025年に放出した政府備蓄米に対応する2025年産米21万トンを買い戻す方針を正式決定した。9月18日から集荷業者などとの手続きを始める。
農水省は2026年産米の生産量を従来の732万トンから745万トン前後へ上方修正した。買い戻し後でも2027年6月末の民間在庫は264万トン前後と過去最大級になる見通しだ。
それでも、なぜ政府は21万トンを市場から吸収するのか。
2025年産だけが備蓄から抜けている
政府備蓄は約100万トンを基本とし、各年産を約20万トンずつ5年分保有する。ところが2025年はコメ不足を受け、同年産米の通常の備蓄買い入れを中止した。このため2025年産が「欠番」のような状態になった。
2026年産については別に21万トンの通常買い入れが予定されている。今回2025年産を対象とするのは、この年産構成を元に戻すためだ。鈴木憲和農水相も、各年産約20万トンを5年分保有する基本を踏まえたと説明している。
買戻し期限は「5年以内」
しかし、2025年産を買う理由があっても、今すぐ買う理由があるとは限らない。
政府が2025年に行った備蓄米の売り渡しは買戻し条件付きだが、その期限は途中で「原則5年以内」に延長された。つまり政府には数年間待つ余地がある。
鈴木農水相も9月1日の会見で、今回の対象について「売渡し後5年以内に買い戻す条件」が付いていると認めている。それにもかかわらず、豊作で需給緩和が始まったタイミングで21万トンを一気に買い戻す。
高く売った米をさらに高く買い戻すのか
元農水官僚の山下一仁氏はPRESIDENT Onlineで、さらに大きな問題を指摘している。
2025年の備蓄米放出時の平均落札価格は60kg当たり2万2477円だったのに対し、現在の2025年産米の価格は3万5451円。仮にこの価格差に近い水準で21万トンを買い戻せば、山下氏の試算では売却時との差額は約450億円に達する。実際の価格は見積もり合わせで決まるため確定していないが、急いで高値で買えば、その負担は納税者に回る。
しかも今回の買戻しは一般競争入札ではなく、見積もり合わせによる随意契約だ。農水相もこの方式を明言している。
備蓄政策が米価維持策に変わっていないか
山下氏は、2007年にも米価下落局面で政府が34万トンを備蓄米として買い入れ、価格下支えに利用した経緯を指摘する。今回も、JAなどが概算金を引き下げる一方で政府が大量購入に動くという構図は似ている。
政府は「食料安全保障」を理由にする。しかし2026年産は豊作で、民間在庫も過去最大級になる。しかも買戻しには5年の猶予がある。
それなら価格が十分に下がるまで待てばよい。高値の今、政府が21万トンを市場から吸収すれば、結果としてコメ価格を下支えすることになる。
2025年産を買うことには制度上の理由がある。問題は、なぜそれを今、納税者の負担で急いで買う必要があるのかである。農水省には、この最も基本的な疑問への説明が求められている。

鈴木憲和農水相Xより








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