高市首相に円安を説教する「トンデモ経済アドバイザー」がベッセントの怒りを買った

NYタイムズの記事が、ネットで波紋を呼んでいる。ベッセント財務長官が今年5月に片山財務相と会談したときの様子を書いたものだ。

2時間にわたって、ベッセント氏は、日本の指導者が打ち出した経済政策の方向性に対する不満をぶちまけた。ヘッジファンド運用者だった時代から日本経済をつぶさに追ってきたベッセント氏にとって、高市氏の政策は看過できないものだった。[…]

ベッセント氏は、日本銀行が利上げすれば、この状況は改善できると述べ、高山市を問い詰めた。「なぜ日本銀行に政策運営の自主性が与えられていないのか。なぜ高市氏の周辺にいる一部の経済アドバイザー(some economic advisers around Ms. Takaichi)は、円安のメリットを説教しているのか?」

問題の部分は新聞では「経済顧問」と訳されているが、aroundというのは「高市氏の周辺の」ぐらいだから、これは円安を賞賛している高橋洋一氏会田卓司氏のことだろう。

「変な経済アドバイザー」が高市政権の変な政策の原因

これはいいポイントを突いている。高市氏の経済政策についての説明は、トンデモ経済学に依拠しているので意味がよくわからない。彼女の「円安ホクホク」の出所は高橋氏の「円安ウハウハ」だ。

高市首相は「わからないことがあったら高橋さんに電話する」と言っているので、高橋氏が首相に影響を与えていることは間違いないが、その根拠は「近隣窮乏化」というからお笑いだ。

これは1930年代の為替レート引き下げ競争を批判してジョーン・ロビンソンが使った言葉で、変動相場制の今は関係ない。1980年代に日本の為替レートを「近隣窮乏化」と批判したのは、トランプなどの保護主義者だ。

貿易はゼロサムゲームではないので、円安でアメリカが損しても、日本が得するわけではない。円安による石油の値上がりなどの交易損失は年間約20兆円で、貿易黒字1.5兆円よりはるかに大きいのだ。

高市首相の「独学」は危険だ

もう一人は、日本成長戦略会議のメンバーになった会田卓司氏だ。彼は「国債は借り換えられるので無限に発行しても大丈夫」といって「成長投資枠」を提案した。これが来年度の概算要求に影響を与えている。

2人とも経済学界ではお笑いネタだが、高市首相に与える悪影響は無視できない。彼女は経済学を系統的に勉強したことがなく、首相公邸で独学しているというが、こういうトンデモ経済学の動画を見ているのではないか。

まず会田氏を戦略会議からたたき出せば、ベッセントも改悛の情を認めてくれるだろう。その上で、標準的なマクロ経済学の教科書を読むことをおすすめしたい。いま話題のアセモグルのテキストはわかりやすい。

アセモグル/レイブソン/リスト マクロ経済学
リスト,ジョン
東洋経済新報社
2019-02-01

 

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