髙市さんは早く辞任すべきだが、パヨクやネトウヨのジャガイモデマも酷すぎる

米国産の生鮮ジャガイモの輸入解禁が話題になっている。9月18日に農林水産省が説明会を開くこともあって、タイムラインにいろんな反論が流れてくる。

わたし自身は髙市さんは早く辞めるべきだと思っている。それは別に隠さない。ただ、流れてくるジャガイモ関連の投稿を一つずつ農林水産省の資料に当てていったら、事実と反しているものがあまりに多かった。

右からは「ジャガイモの自給率は100%だ」「ポテトチップスは100%国産のジャガイモで作られている」。左からは「放射線照射されたイモが入ってくる」「ポストハーベスト農薬が野放しだ」。——これ、全部違う。どちらも原典を1本も開かずに書いているのが丸わかりで、正直、馬鹿が酷すぎる。

政権を批判するなら事実でやったほうがいい。嘘で叩くと、叩かれた側に「デマだ」と言い返す口実を与えるだけで、こちらの主張がまるごと信用を失う。というわけで、この記事では農林水産省・植物防疫所・財務省貿易統計・国立国会図書館の一次資料だけを使って、ジャガイモをめぐる数字を整理する。

先に結論
  • ばれいしょの自給率は66%(令和6年度・重量ベース)。100%ではない。いも類全体でも71%。
  • ポテトチップスを含む加工食品用の原料1,814千トンのうち、1,204千トン=66%が輸入。「100%国産」は成り立たない。
  • 生の米国産ジャガイモは2006年2月からすでに輸入解禁済み。令和6年度で38,787トン入っている。「これから入ってくる」のではない。
  • ただし法令上、輸入した生のいもは指定施設で「130度以上の油に2分間以上」加熱加工することが義務。生のまま店頭に並ぶことは制度上ありえない
  • いまの争点は「一般流通用(生食用)」への拡大。米側の要請は2020年3月が起点で、2025年7月の日米合意(概要)にジャガイモ・検疫・SPSの記載は一切ない
  • 輸入反対側からよく出る「放射線照射されている」も違う。照射食品の輸入は禁止で、日本で唯一照射が認められているばれいしょは、北海道士幌農協が1974年から国内でやっていたほうだ。
  • 叩くべき本丸は別にある。種いもの採種生産者は北海道で11年間に31%減、シストセンチュウで種いもほ場が確保できない、青果用の抵抗性品種普及率は27.5%——ここが本当の弱点だ。
正直な但し書き。国別の内訳は、2024年の資料の読み取りが総量と計算が合わなかったため、整合が取れた2023年の数字を使っている。また「2006年の解禁後に米国の農場で病害虫が見つかり輸入が一時停止された」という経緯は北海道新聞の社説に拠るもので、植物防疫所の一次資料には当たれていない。本文でもその都度どこ由来かを明記する。
デマ①「ジャガイモの自給率は100%」→ 66%です

農林水産省が毎年公表している食料需給表に、品目別の自給率が載っている。令和6年度のばれいしょは66%。いも類全体でも71%だ。100%という数字はどこにも出てこない。

内訳はこうなっている。国内生産量2,299千トン、輸入量1,204千トン、輸出量8千トン、国内消費仕向量3,495千トン。輸入が消費の34.4%を占めている。

おそらく「自給率100%」と言っている人は、青果売り場に並ぶジャガイモがほぼ国産であることを、ジャガイモ全体の話だと勘違いしている。青果用(生食用)529千トンは確かにほぼ100%国産だ。でもそれは日本のジャガイモ需要の15%にすぎない。

資料:農林水産省「食料需給表」(令和6年度は概算値)。昭和60年度から令和6年度まで。

グラフの通り、この40年で国内生産は3,727千トンから2,299千トンへ1,428千トン減り、輸入は200千トンから1,204千トンへ1,004千トン増えた。輸入が消費に占める比率は5%から34%になった。これが日本のジャガイモの現在地だ。

デマ②「ポテトチップスは100%国産」→ 加工用原料の66%が輸入

用途別の内訳を見ると、この主張がどれだけ現実と違うかがすぐわかる。

資料:農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる状況」令和8年3月。

用途 数量 構成比 うち国産 うち輸入
青果用(生食) 529 15% 529 0
加工食品用 1,814 52% 610 1,204
でん粉原料用 722 21% 722 0
その他(種子・飼料・減耗等) 438 13% 438 0
3,503 100% 2,299 1,204

単位:千トン・生いも換算。令和6年度。資料:農林水産省「ばれいしょをめぐる状況」令和8年3月。

ポテトチップスが入る加工食品用は1,814千トンで需要全体の52%を占め、そのうち1,204千トン(66%)が輸入だ。輸入の中身の大半は冷凍ポテト(フライドポテト)とフレーク・マッシュポテトである。

農林水産省の資料も、この状況を率直に書いている。

「加工メーカーは不足分を輸入に頼らざるを得ない状況」
——農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる現状と課題について」(2025年度ポテトフォーラム、令和7年12月)

しかも、ポテトチップスの出荷数量は平成16年度の93千トンから令和6年度の123千トンまで一貫して伸びている。需要は増えているのに、国産の供給が追いついていない。

デマ③「これから米国産の生ジャガイモが入ってくる」→ 2006年から入っている

ここが一番の勘違いポイントだと思う。米国産の生のジャガイモは、2006年2月1日からすでに輸入が認められている。

根拠は農林水産省告示第114号(平成18年2月1日)と、同日付の植物検疫実施細則(17消安第10801号、最終改正 令和5年3月31日)。輸入実績は財務省貿易統計に載っている。

資料:農林水産省「ばれいしょをめぐる状況」令和8年3月(原資料:財務省「貿易統計」)。年度ベース。

解禁初年度の平成18年度は0トンだったが、平成24年度に16,729トン、平成28年度に35,050トン、令和3年度には過去最高の50,469トンまで増えた。直近の令和6年度は38,787トンである。

デマ④「解禁されたら店頭に米国産の生ジャガイモが並ぶ」→ 制度上ありえない

現行制度で入ってきている生の米国産ジャガイモには、用途がひとつしか認められていない。

告示・実施細則が定める条件
  • 用途は日本向けポテトチップ加工用に限定
  • 植物防疫官が指定した加熱加工処理施設で、薄切りして摂氏130度以上の食用油に2分間以上浸漬する処理が必須
  • 産地はジャガイモシストセンチュウが発生していない地区に限る。対象は16州(アイダホ州はビンガム郡・ボンネビル郡を除く、アリゾナ、ウィスコンシン、オレゴン、カリフォルニア、コロラド、テキサス、ニューメキシコ、ネバダ、ノースダコタ、フロリダ、ミシガン、ミネソタ、メーン、モンタナ、ワシントン)
  • 加工施設は隔離保管・加熱処理・残さ処理の管理基準を遵守する必要がある

つまり、港に着いた米国産の生のいもは指定工場に直行し、その日のうちにポテトチップスになる。スーパーの棚に生のまま並ぶことは、いまの制度では起こりようがない。だから「米国産の生ジャガイモが食卓に」という煽りは、少なくとも現行制度の話としては成立しない。

では今回の協議は何かというと、この用途限定を外して「一般流通用(生食用)」でも輸入できるようにしてくれ、という米国側の要請である。ここが争点だ。用途限定が外れれば話は変わる——という指摘そのものは正しい。ただ、それは「これまで一切入っていなかったものが解禁される」という話とは違う。

デマ⑤「日米関税合意でジャガイモを差し出した」→ 合意文書に記載なし

内閣官房「米国の関税措置に関する総合対策本部」が公表した「日米間の合意(概要)」(令和7年7月25日)を開いて確認した。農産品として書かれているのは、バイオエタノール、大豆、トウモロコシ、肥料等の米国農産品の購入拡大、MA米制度の枠内でのコメ調達、LNG等のエネルギーである。

ジャガイモ・ばれいしょ・検疫・SPS(衛生植物検疫措置)の記載は一切ない。「農産品を含め、日本側の関税引下げは含まれていない」とも書かれている。

米国側の解禁要請の起点は2020年3月で、これは第1次トランプ政権の時期だ。つまり関税交渉より前から続いている案件である。もちろん「関税交渉で圧力がかかっている」という見立て自体はありうるし、北海道新聞の社説(2026年6月30日)も「第2次政権でも昨年の関税交渉で迫っていた」と書いている。ただ、公表されている合意文書に書いてある、という言い方はできない

デマ⑥「米国産は放射線照射されている」→ 照射品の輸入は禁止。照射していたのは国産のほう

ここからは、輸入反対の文脈でよく出てくる主張のほうを見る。こちらも原典に当てると、事実と違うものがある。

食品安全委員会のファクトシート「放射線照射食品」(平成24年6月14日作成)を開いて確認した。

日本の放射線照射食品の制度
  • 照射が認められている食品はばれいしょ1品目だけ。目的は発芽防止に限定
  • 吸収線量は150グレイを超えてはならない。線源はコバルト60のガンマ線
  • 根拠は食品衛生法第11条に基づく「食品、添加物等の規格基準」
  • この発芽防止のばれいしよ以外の照射食品の流通等は禁止されています

照射食品の流通が禁止されているということは、輸入も認められないということだ。米国産の照射ジャガイモが入ってくることは制度上ない。

そして、ここが一番ひっくり返るところなのだが、その唯一の照射を実際にやっていたのは日本国内である。同ファクトシートによれば、1974年より北海道士幌農協によって商業照射が開始され、年間約8,000トンのばれいしょが照射され、3月下旬〜4月に出荷されていた。

「輸入品は照射されていて危険、国産は安全」という語り口は、事実としては向きが逆になっている。

※士幌の照射施設の現在の稼働状況は今回確認できていない。上記は平成24年時点のファクトシートの記述である。

デマ⑦「ポストハーベスト農薬が野放し」→ 収穫後に使うものは食品添加物として規制されている

厚生労働省の「防かび剤(ポストハーベスト農薬)について(Q&A)」を開いた。日本の制度はこう整理されている。

「収穫前に使用する化学物質は農薬、かび等による腐敗等の防止の目的で、収穫後に使用する化学物質は食品添加物として整理」

つまり収穫後に使う薬剤は農薬ではなく食品添加物として扱われ、食品安全委員会による科学的なリスク評価を経て、薬事・食品衛生審議会での審議を経て食品添加物として指定される。そのうえで、こう明記されている。

「海外で使用されている場合でも、我が国の基準に適合しない防かび剤が使用されている食品の輸入や販売は認められません」

ただし公平を期すなら、「制度がある」ことと「運用が十分か」は別の話だ。輸入時の検査体制や違反件数までは今回確認していない。制度の不備を突くなら、その数字を持ってきたほうが話が強くなる。「野放し」という一言で片づけると、そこで議論が終わってしまう。

※この厚生労働省のQ&A文書には公表日の記載がない。

デマ⑧「遺伝子組換えが大量に入ってくる」/「日本ではGMは一切認められていない」→ どちらも違う

この論点は、反対側も擁護側も雑なことを言っている。

厚生労働省の「安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧」(令和3年3月12日現在、食品325品種)に、じゃがいもは12品種が収載されている。性質は「害虫に強い」「ウイルス病に強い」だ。だから「日本ではGMじゃがいもは一切認められていない」という擁護も、事実としては間違っている。

一方で、現行制度で入ってくる生の米国産ジャガイモには、繰り返しになるがポテトチップ加工用限定・16州・シストセンチュウ未発生地区という条件がついている。

ここは正直に書いておく。米国の作付面積のうち遺伝子組換え品種がどれだけを占めるかは、今回一次資料で確認できなかった。だから「大量に入ってくる」とも「ほとんど入っていない」とも書かない。この論点を本気で突くなら、USDAの作付統計に当たる必要がある。

デマを批判する記事で、自分だけ確認していない数字を書いたら世話がない。

どこの国から輸入しているのか

「アメリカから買わされる」と言う前に、すでにどこから買っているかを見たほうがいい。

資料:農林水産省「ばれいしょ関連品目の輸入状況」(原資料:財務省「日本貿易統計」)。2023年・暦年、生いも換算。

2023年のばれいしょ関連品目の総輸入量は1,182,164トン。うちアメリカが683,539トンで57.8%を占める。次いで中国97,645トン(8.3%)、カナダ49,420トン(4.2%)、その他351,560トン(29.7%)だ。

月次で見ても構図は変わらない。農畜産業振興機構の集計では、令和7年8月の冷凍ばれいしょの輸入28,314トンの内訳は、米国19,481トン、中国5,225トン、オランダ3,608トンだった。

総輸入量そのものは2014年の903,073トンから2019年に1,104,351トン、2022年に1,196,485トン、2023年1,182,164トン、2024年1,169,542トンと、100万トン超で高止まりしている。

米国産ジャガイモは「これから入ってくる」のではない。すでに輸入の6割弱が米国産で、わたしたちは毎日それを冷凍ポテトとして食べている。

叩くならここ——なぜ日本の生産量が減ったのか

ここからが本題だと思う。デマを潰すだけでは何も前に進まない。

ジャガイモの作付面積は昭和60年の130,100haから令和6年の70,900haへ45%減った。収穫量は3,727千トンから2,295千トンへ38%減。減少要因について、農林水産省自身がこう説明している。

「生産者の高齢化に伴う作付中止」
「農地の集約化が進んだこと」
「他の省力的な輪作作物の作付割合が増加」
——農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる現状と課題について」令和7年12月

担い手が消えている
指標 平成25年 令和6年 増減
北海道の栽培農家 13千戸 9千戸 約▲3割
種ばれいしょ採種生産者(北海道) 1,386人 952人 ▲31%
採種ほ場合格面積(北海道) 4,622ha 3,839ha ▲17%
1戸当たり作付面積(北海道) 3.9ha 5.3ha +36%

資料:農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる現状と課題について」令和7年12月。

とくに深刻なのが種いもだ。北海道は全国の種ばれいしょの9割以上を担う供給基地だが、その採種生産者が11年で31%減っている。種いも生産は投下労働時間が207.6時間/haと、生食・加工用の113.6時間/haの1.8倍かかる。手間がかかるほうから先に人が抜けていく。

シストセンチュウという時限爆弾

写真はWikpediaより

ジャガイモシストセンチュウは、発生すると収量が最大で50%以上減少し、シスト体で10年以上土壌に残存する。一度入ったら10年その畑が使えなくなる、ということだ。

さらに厄介なジャガイモシロシストセンチュウは、北海道網走市で平成28年10月から緊急防除が始まり、平成29年度には隣接する大空町でも発生が確認された。令和7年3月時点の防除区域は6大字8ほ場25haである。

農水省の資料は、「ジャガイモシストセンチュウ発生地域の拡大により種ばれいしょほ場の確保が困難」で、「一部地域では、地域内で必要な数量の種いも生産が困難な状況」と書いている。

そして抵抗性品種の普及率(令和5年・北海道)は、でん粉原料用が72.5%、加工用が52.1%に対して、青果用は27.5%しかない。理由は単純で、男爵薯(作付割合14%)、ニシユタカ(8%)、メークイン(8%)という主力3品種がいずれも感受性品種、つまり抵抗性を持っていないからだ。わたしたちが名前で選んで買っている品種が、まるごと無防備である。

国産を使いたいのに買えない

皮肉なのはここだ。農水省の資料は「原料原産地表示の義務づけにより、加工メーカーの国産原料志向は益々高まっているところ」と書いている。メーカーは国産を使いたがっている。それでも輸入に頼らざるを得ない。需要側の問題ではなく、供給側が細っているという話である。

令和6年度は7月の干ばつで小玉傾向となり、10a当たり収量が前年を下回って国内生産量は約230万トンにとどまった。気候の振れにも弱くなっている。

なぜいま輸入拡大の話が出ているのか

時系列で並べると、これは急に降ってきた話ではないことがわかる。

時期 出来事
2006年2月1日 告示第114号・実施細則を制定。ポテトチップ加工用に限り米国産生塊茎の輸入を解禁
2020年3月 米国側が、用途を限定しない一般流通用(生食用)として改めて解禁を要請
2021年5月 衆議院農林水産委員会で政府が「繁殖用への転用リスクが大きい」と答弁(国立国会図書館の調査資料による)
2023年9月 二国間協議で米側が病害虫リスク評価の提供を拒否(同上)
2024年4月11日 カントウェル上院議員ら超党派グループが大統領に要望書。業界は年間1.5億ドルの輸出増を見込む(同上)
2025年7月25日 内閣官房「日米間の合意(概要)」公表。ジャガイモ・検疫・SPSの記載なし
2026年8月28日 農水省が説明会開催を公表。リスク管理措置の協議対象として病害虫21種を特定、現在ステージ2
2026年9月18日 「米国産一般流通用生鮮ばれいしょの検疫協議の進捗状況に関する説明会」13:00〜14:30、Teamsでオンライン開催

検疫協議は3段階で進む。ステージ1が解禁要請の受付と潜在的病害虫の特定、ステージ2が病害虫リスク評価と現地調査、ステージ3がリスク管理措置案の策定。いまはステージ2の実施中で、その先に学識経験者・利害関係者への意見聴取、パブリックコメント、関係省令の改正という手順が控えている。

特定された病害虫は21種。コロラドハムシ、ジャガイモシストセンチュウ、Epitrix属(ハムシ科)3種、センチュウ類6種のほか、菌類・細菌・ファイトプラズマ・ウイルス・ウイロイド各種が含まれる。

つまり、今日明日に決まる話ではない。だからこそ、いま声を上げるなら事実に基づいてやるべきだと思う。9月18日の説明会はオンラインで誰でも参加できる(申込締切は9月11日10時)。

まとめ
出回っている主張 原典に基づく事実
ジャガイモの自給率は100% 66%(令和6年度・重量ベース)。いも類全体でも71%
ポテトチップスは100%国産 加工食品用原料1,814千トンのうち1,204千トン(66%)が輸入
米国産の生ジャガイモはまだ入っていない 2006年2月から解禁済み。令和6年度で38,787トン
解禁されたら店頭に並ぶ 現行制度では指定施設で130度以上の油に2分以上が義務。生のまま流通しない
日米関税合意で差し出した 合意(概要)に記載なし。米側の要請は2020年3月が起点
米国産は放射線照射されている 照射食品の流通・輸入は禁止。唯一の例外の発芽防止照射は士幌農協が1974年から国内で実施
ポストハーベスト農薬が野放し 収穫後使用は食品添加物として規制。基準不適合品の輸入・販売は認められない
日本ではGMじゃがいもは一切認められていない 12品種が安全性審査済み(令和3年3月12日現在)

繰り返すが、わたしは髙市さんは早く辞めるべきだと思っている。その考えは変わらない。

ただ、事実と反することで叩くのはお門違いだ。しかも今回のケースは、デマを撒いている側が「守るべき国内農業」の実情をまるで知らないことが露呈している。自給率66%の作物を100%だと思い込み、種いもの採種生産者が11年で31%減っていることも、青果用の抵抗性品種普及率が27.5%しかないことも知らずに、輸入解禁だけを叩いている。

そしてこれは右も左も関係ない。「自給率100%」「ポテチは国産」で叩く側も、「放射線照射」「ポストハーベスト野放し」で叩く側も、やっていることは同じで、どちらも原典を1本も開いていない。放射線照射に至っては、照射していたのは国産のほうだった。

米国産ジャガイモの一般流通用解禁には、検疫上の実際のリスクがある。ジャガイモシストセンチュウが一度入れば10年その畑が使えない。それは真剣に議論されるべき論点だ。だからこそ、嘘を混ぜてはいけない。嘘が1つ混じった瞬間に、正しい9つの指摘までまとめてゴミ箱に放り込まれる。

叩くなら、農水省の資料に書いてある数字で叩けばいい。資料はぜんぶ無料で公開されている。

出典と確認ステータス
原典確認済み 15件/報道ベース 1件/未確認 4件(いずれも本文では使用せず)
この記事の数値・日付・固有名詞は、以下の一次資料を1件ずつ開いて確認したものだけを使っている。未確認の4件——①米国の作付面積に占める遺伝子組換え品種の割合、②遺伝子組換え表示制度の対象農産物とじゃがいも加工品の扱い、③士幌町農協の照射施設の現在の稼働状況、④2024年暦年の国別内訳(資料の読み取りが総量と整合しなかったため2023年を使用)——は、本文で断定していない。また「2006年の解禁後に米国の農場で病害虫が確認され輸入が一時停止された」という経緯は北海道新聞の社説に拠る報道ベースのため本文では扱っていない。
原典確認済み(15件)
  1. 農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる状況」令和8年3月
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/siryou-18.pdf
  2. 同「ばれいしょをめぐる状況について」令和7年5月(輸入量系列の年次照合に使用)
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/siryou-10.pdf
  3. 農林水産省農産局地域作物課「ばれいしょをめぐる現状と課題について」(2025年度ポテトフォーラム)令和7年12月
    https://bareishokyougikai.jp/common/files/data_suzuki.pdf
  4. 農林水産省「令和6年度食料需給表」(参考2)令和7年10月
    https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/251010-2.pdf
  5. 農林水産省「ばれいしょ関連品目の輸入状況」(暦年総輸入量)
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/attach/pdf/r5shiryo-21.pdf
  6. 同(令和5年度版・2023年の国別内訳)
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/r5shiryo-63.pdf
  7. 植物防疫所「アメリカ合衆国から発送されるばれいしょの生塊茎に係る農林水産大臣が定める基準」(平成18年2月1日 農林水産省告示第114号)
    アメリカ合衆国から発送されるばれいしょの生塊茎に係る農林水産大臣が定める基準:植物防疫所
    植物防疫所ホームページ

     

  8. 植物防疫所「アメリカ合衆国産ばれいしょ生塊茎に関する植物検疫実施細則」(平成18年2月1日 17消安第10801号、最終改正 令和5年3月31日)
    アメリカ合衆国産ばれいしょ生塊茎に関する植物検疫実施細則:植物防疫所
    植物防疫所ホームページ

     

  9. 農林水産省プレスリリース「米国産一般流通用生鮮ばれいしょの検疫協議の進捗状況に関する説明会の開催について」令和8年8月28日
    米国産一般流通用生鮮ばれいしょの検疫協議の進捗状況に関する説明会の開催について:農林水産省

     

  10. 同 関連資料(病害虫21種・協議のステージ)
    https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/attach/pdf/260828_1-1.pdf
  11. 内閣官房 米国の関税措置に関する総合対策本部事務局「米国の関税措置に関する日米協議:日米間の合意(概要)」令和7年7月25日
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tariff_measures/dai6/250725siryou1.pdf
  12. 農畜産業振興機構「4 野菜の輸入動向(令和7年8月)」『野菜情報』2025年11月号
    4 野菜の輸入動向(令和7年8月)|農畜産業振興機構
    独立行政法人農畜産業振興機構は、農畜産業及びその関連産業の健全な発展と国民消費生活の安定のために価格安定業務,補助事業,情報収集提供事業を実施しています。

     

  13. 食品安全委員会「ファクトシート 放射線照射食品」平成24年6月14日作成
    https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f06_food_irradiation.pdf
  14. 厚生労働省「防かび剤(ポストハーベスト農薬)について(Q&A)」(文書に公表日の記載なし)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001212846.pdf
  15. 厚生労働省「安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧」令和3年3月12日現在
    https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000755992.pdf
交渉経緯の出典

国立国会図書館 調査及び立法考査局 北村弥生「【アメリカ】米国産生食用バレイショの日本市場開放交渉」『外国の立法』No.302-2(2025年2月)pp.31-32
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F14051536
※2021年5月の国会答弁、2023年9月の協議、2024年4月の要望書は、この調査資料経由での引用であり、会議録原文には当たっていない。

報道ベース(1件)

北海道新聞「<社説>米国産イモ輸入 全面解禁のリスク議論を」2026年6月30日
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1331305/

今日のどうでもいい話

今回いちばん驚いたのは、輸入した生のジャガイモを「130度以上の油に2分間以上」浸けろ、という条文が本当に告示に書いてあったことだ。植物検疫の条文にフライの調理条件が書いてある。

考えてみれば当たり前で、病害虫を殺すのに一番確実なのは揚げることなのだろう。国境を越えた生き物を油で無害化する、という発想が妙に潔い。

ポテトチップスを食べるとき、あれは食品加工であると同時に検疫措置でもあるんだな、と思うと少しだけ味が変わる気がする。そしてそんなに国産のポテチがいいなら高いけどこれ食ってろ


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年9月4日の記事より転載させていただきました。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント