東大教授で日本教育学会会長でもある本田由紀氏をめぐる騒動が泥沼化している。発端は9月1日、本田氏が三笠宮家の彬子さまや麻生家について「血筋」に言及した投稿(すでに削除)だった。

特定の人物を遺伝や血統と結びつけて否定的に評価するのは、優生学的な含意をもつ差別表現ではないかとの批判が殺到した。日本教育学会は、倫理委員会による対応を検討している。
「天皇制批判だ」という奇妙な擁護
ところが騒動が大きくなると、左派から、本田氏を擁護する声が出始めた。哲学者の植村恒一郎氏は、本田氏は「この人たちが醜い」とは書いておらず、「遺伝」という言葉は「天皇制の本質への批判」なのだから「投稿には何の問題もない」と主張している。
しかし本田氏は天皇制を批判したのではなく、特定の人物を見た感想として遺伝的ルッキズムを語っている。また「皇族は近親婚なので遺伝的に劣っている」という俗説もほのめかしている。
「スマホ農場」の陰謀論まで登場
さらに東京大学史料編纂所教授の岡美穂子氏は、本田氏への批判について、自民党側の「スマホ農場」の工作員が主導している可能性があるとの投稿に「私もその可能性はあるのではないかと感じています」と反応した。
スマホ農場とは、多数のスマホを使って特定の人物をつるし上げるものだ。ここまで来ると、本田氏の投稿そのものを説明するより、「批判している側がおかしい」「政治的工作ではないか」という方向へ話をそらしている。
本田氏は呉座勇一氏を批判するオープンレターの中心人物で、女性差別(と彼女が思うもの)や自民党の政治家を激しい言葉で批判することで知られる。それが今度は自分にはね返ってきたわけだ。
擁護するほど問題が大きくなる
興味深いのは、普段は差別表現やルッキズム、出自による偏見に極めて厳しいはずの人々の一部が、本田氏についてだけ「文脈を読め」「制度批判だ」と言い始めたことだ。差別かどうかを決める基準が、発言内容ではなく「誰が言ったか」「誰を攻撃したか」になれば、人権という普遍的な原則は崩れてしまう。
本来なら本田氏自身が「遺伝的要因のおそろしさ」とは何を意味したのか説明すればいい。表現が不適切だったと思うなら撤回すればいい。ところが本人がノーコメントのまま、周囲が擁護すればするほど「差別に反対する」という左派の主張との矛盾が次々と露呈する。
本田氏の一つの投稿から始まった騒動は、いつの間にか日本の左派のダブルスタンダードを問う話になってしまった。「遺伝的要因のおそろしさ」よりも、この身内を守るためなら人権原則まで簡単に曲げてしまう政治的部族主義のほうが、よほどおそろしいのではないだろうか。






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