夏が来れば思い出す再エネ賦課金:負担は国民、利益は投資家へ

夏が来れば思い出す。猛暑とエアコン、そして電気料金にしっかり乗ってくる再エネ賦課金である。

2026年度の単価は1kWhあたり4.18円。月400kWhを使う世帯なら月1,672円、年間2万64円になる。FIT・FIPによる買取費用等は年間4兆8,507億円だ。

9月4日のアゴラでは、尾瀬原清冽氏が「蓄電池市場の活況は『第2の再エネ賦課金』の始まりか」と問題提起した。太陽光や風力が増えれば、出力変動を補う蓄電池や調整力も必要になる。

蓄電池市場の活況は「第2の再エネ賦課金」の始まりか
蓄電池市場が活況系統用蓄電池の参入が相次いでいる。図1は系統用蓄電池の連系申込量と実際の連系実績の推移である。2025年9月には、連系量で50万kW、連系申込量では2,431万kWに達している。さらに、2026年8月17日の日本経済新聞の記...

一方、投資市場では系統用蓄電池の設置予定地を対象にした不動産ファンドまで登場している。ヤマワケエステートでは、過去に想定年利14%、15%の系統用蓄電池用地EXITファンドが組成され、償還実績も出ている。

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その利回りをそのまま電力利用者が払っているわけではない。土地を取得して売却する不動産投資である。

だが私は、この光景に強烈な既視感を覚える。

政策による費用負担は社会全体に広げ、その政策によって生まれる収益機会は資本を投入できる側に与える。

2012年に始まったFITも、同じ問題を抱えていたのではないか。

40円を20年間保証したFIT

制度開始時、10kW以上の事業用太陽光は1kWhあたり40円+税、20年間の固定価格で買い取られた。

まだ高価だった再エネ設備を急速に普及させるため、長期価格を保証して投資リスクを下げる。政策として理屈はある。

問題は、そのリスク低減費用を誰が負担したのかだ。

発電設備を所有する側には長期の収益予見可能性が与えられる。その費用は、太陽光パネルを持たない人も、賃貸住宅の人も、高齢者も低所得者も、電気を使う限り負担する。

しかも高い価格で認定だけ取得し、設備価格が下がってから発電を始めれば過剰な利益を得られる未稼働案件まで発生した。資源エネルギー庁自身が問題を認め、制度改正を迫られた。

政府は2026年の国会でも、現在の賦課金水準には制度開始後3年間の高い買取価格が大きく影響していると説明している。初期案件の20年間の買取りが順次終了するため、賦課金が減少に転じるのは2032年以降の蓋然性が高いという。

2012年の政策判断を、国民は20年単位で払い続けているのである。

貧しい人ほど重い「一律4.18円」

私がFITで最も納得できないのは徴収方法だ。

再エネ賦課金は所得税ではない。資産課税でもない。

年収200万円でも2,000万円でも、1kWh使えば同じ4.18円である。

だが電気はぜいたく品ではない。冷蔵庫、照明、給湯、通信、そして猛暑時のエアコン。所得が10倍になったから冷蔵庫を10台使うわけではないし、所得が低いから夏の気温が下がるわけでもない。

したがって所得に占める負担割合は、低所得世帯ほど重くなりやすい。

これは後知恵ではない。

FIT法成立時の2011年、衆議院の附帯決議はすでに、賦課金が「中小企業及び低所得者に対して過重なものとならないよう」必要な措置を求めていた。

2018年には消費者庁も、再エネ賦課金には逆進性があり、低所得者層の負担が重いとの指摘を公式文書に記している。

最初から分かっていたのである。

企業には最大8割減免、生活者は1kWhごとに払う

さらに皮肉なのが減免制度だ。

電力を大量に使う一定の事業者には、国際競争力の維持・強化を理由として、賦課金を最大8割減免する仕組みがある。

企業については「電気代が高すぎれば経営に響く」と制度的に配慮した。

では、年金生活者や低所得家庭について「電気代が高すぎれば生活に響く」と、なぜ賦課金そのものの設計では同じ発想にならなかったのだろう。

格差是正や弱者保護を掲げる側にとっても、これは本来正面から扱うべき問題だったはずだ。

とりわけ原発停止と再エネ拡大を同時に求めるのであれば、その代替政策の費用を誰が負担するのかまで説明する責任がある。

原発の事故リスクやコストを厳しく問うなら、再エネについても「誰が払い、誰が利益を得たか」を同じ厳しさで検証しなければフェアではない。

実は国会は「市民ファンド」まで考えていた

さらに興味深い。

2011年の同じ附帯決議には「国民の再生可能エネルギー発電設備への投資が促進されるよう、市民ファンド等の設立を支援すること」とも書かれている。

政府が何もしなかったわけではない。環境省は地域主導型再エネや地域低炭素投資ファンドなどの支援策を実施した。

しかし、それはFIT本体の利益配分ルールにはならなかった。

全国の電気利用者から賦課金を集める仕組みは自動的に作った。一方、国民や地域住民を所有者・受益者にする仕組みは任意の支援策にとどまった。

負担を広く社会化したのに、リターンの社会化はしなかったのである。

海外は負担者と受益者をどう扱ったか

この設計は必然ではない。

ドイツにも、日本の再エネ賦課金に似たEEG賦課金があった。しかし2022年7月に電気料金への上乗せをゼロにし、その後は再エネ支援の必要額を連邦予算から賄う方式へ移した。費用そのものが消えたわけではないが、生活必需品の使用量に比例して徴収する方式から離れた。

英国には低所得世帯などを対象とするWarm Home Discountがあり、2026年冬には約600万世帯が150ポンドの電気料金割引を受ける。

スペインでは2026年、脆弱な消費者の電気料金を42.5%、より困窮した層を57.5%割り引く「ボノ・ソシアル」が設けられている。

受益側でも違いがある。デンマークでは2020年まで、新規風力などの事業者に、最低20%の持分を地域住民へ原価で購入できるよう提供する制度があった。後に制度は変更されたが、「再エネ設備を置くなら住民も受益者にする」という発想自体は明確だった。

制度は各国で違う。それでも、低所得者を保護する、電気料金への賦課から財政負担へ移す、地域住民に所有機会を与える、といった設計は可能なのである。

民主党だけの責任ではない

FITは菅直人民主党政権の政策という印象が強い。

だが、民主党だけを責めれば済む話でもない。

2011年、法案には民主党、自民党、公明党の共同修正が入り、衆議院では全会一致。参議院本会議でも投票総数237、賛成237、反対0で成立した。

その後の自民党政権も未稼働案件対策、入札制、FIP導入などの制度修正を重ねたが、初期案件による長期負担を消すことはできなかった。

これは一政党の失策というより、日本政治全体が作り、誰も完全には後始末できなかった制度なのである。

安全性が確認された原発の再稼働を進め、化石燃料輸入を減らすことも、電気料金とエネルギー安全保障を考えるうえで当然の選択肢だ。

ただし、原発を再稼働しても既存FITの20年契約は消えない。

だからこそ、今後の蓄電池やGXで同じ失敗を繰り返してはならない。

負担を社会化するなら、利益も社会化する。

低所得者への直接的な負担軽減、税財源による支援、地域住民への持分付与、国民が小口で参加できる仕組み。選択肢はいくらでもある。

夏が来れば思い出す。

再エネ賦課金の高さだけではない。

負担能力ではなく電気使用量で広く金を集め、資産を持つ者に収益機会を与えた、日本の制度設計の失敗を。

【出典】

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