ライドシェア解禁は今夏も見送り:GO上場で「タクシー王子」は大富豪

ライドシェアの全面解禁が、今年も見送られた。政府の規制改革推進会議は、答申でライドシェアには踏み込まず、7月21日に閣議決定された規制改革実施計画でも、全面解禁への道筋は示さなかった。

川鍋一朗氏(Wantedly)

「日本版ライドシェア」はタクシー会社の業務委託

現在の「日本版ライドシェア」は、Uberなどが海外で展開しているライドシェアとはまったく違う。一般ドライバーが自由に参入するのではなく、タクシーが不足する地域や時間帯に限り、タクシー事業者の管理下で一般ドライバーを走らせる業務委託だ。

国土交通省自身も「法人タクシー事業者の交通サービスを補完する制度」と位置づけている。その結果、「日本版ライドシェア」の利用は伸び悩んでいる。日本経済新聞によると、大都市では日本版ライドシェアの稼働がピーク時から8割減った地域もあり、事業者からは「コストに対する売り上げが見合わない」という声も出ている。

これは需要があるからドライバーが参入するという市場メカニズムを封じ、行政が「タクシーの不足する時間と台数」を決めているからだ。ライドシェアという名前は付いているが、実態は「タクシー会社による臨時増車制度」に近い。

ライドシェア解禁に徹底的に反対してきた川鍋一朗氏

この制度設計を決めたのが、日本交通ホールディングス代表で、全国ハイヤー・タクシー連合会会長でもある川鍋一朗氏だ。業界では「タクシー王子」とも呼ばれる。

全タク連は川鍋氏のもとで「公共交通を破壊するライドシェア新法は不要」と徹底的に反対してきた。川鍋氏自身もライドシェアには反対する一方、タクシー会社が管理する日本版ライドシェアを推進し、配車アプリGOをつくった。

安全管理や事故時の責任、ドライバーの労働環境は重要な問題だが、それは事業者に保険加入、本人確認、運行記録保存、事故責任などを法律で義務づければよい。タクシー会社が運転手を雇用する必要はない。世界各国でやっている通りだ。

配車アプリGO上場で時価総額2800億円

その川鍋氏が代表取締役会長を務めるGOは、6月16日に東証グロース市場へ上場した。時価総額は約2800億円である。川鍋氏には186万株余りが付与され、その総額は約73億円だ。

GOがこんなにもうかるのは、ライバルになるライドシェアを禁止しているからだ。それを禁止する運動のリーダーが、まがいものライドシェアのサービスで2800億円もうけるというのは、絵に描いたような官民癒着である。

発展途上国と同じ官民癒着

政治家が業者の独占を守る見返りに政治献金をもらい、役所が権限を守って天下りポストを確保する。こういう政治腐敗は発展途上国にはよくあるが、日本では昭和の時代までだった。それがタクシー業界には、まだ残っているのだ。

一般ドライバーと新規事業者には参入規制を残し、既存タクシー会社にはライドシェアの運行管理という新しいビジネスを与える。その一方で、国内最大級の配車プラットフォームは上場し、2800億円の株式価値が生まれたのだ。

GOの成功は、スマートフォンによるマッチングが交通市場を効率化できることを証明した。次にやるべきことは、その技術を既存タクシーの囲い込みに使うことではなく、一般ドライバーにも市場を開放することだ。

政府が守るべきなのはタクシー会社の事業モデルではない。利用者が「乗りたいときに乗れる」交通サービスである。「挑戦しない国に未来はない」が口癖の高市政権は、こういう本質的な問題には挑戦しないでバラマキだけをやっている。これが日本経済の低迷する原因である。

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