トランプが全国民に5000ドル給付を公約:総額1.35兆ドルの選挙買収?

トランプ米大統領が、また桁外れの給付公約を打ち出した。彼は9月9日、テキサス州ダラスで開かれた共和党大会で、11月の中間選挙で共和党が上下両院を維持すれば、すべての成人米国市民に5000ドルを支給すると表明した。

総額1.35兆ドルの「配当」

トランプ配当(Trump dividend)と名付け、唯一の条件として、受け取った金を米国内で使うことを求めるという。「共和党が勝てば、あなたも勝つ。そして5000ドルを受け取る」というが、問題はその金額だ。

成人米国市民全員に5000ドルを配ると、総額は1.35兆ドルにのぼるとロイターは試算している。日本円にすると200兆円規模である。日本の一般会計予算を上回るような現金を、一度に国民へ配るという話だ。

トランプはこれまでにも、関税収入を原資に2000ドル程度を国民へ還元する「関税配当」を提唱したが、この構想も実現していない。2025年には政府効率化による歳出削減を財源とする5000ドルの「DOGE配当」も浮上したが、実現しなかった。

財政赤字が70%増える

問題は財源である。今回も財源として念頭に置かれているのが関税収入だとみられるが、関税は魔法の財布ではない。

CBO(米議会予算局)の2月時点の見通しでは、2026年度の関税収入見通しは4000億ドル程度(最高裁判決前)だった。関税は米国内の流通業者が払うので、これは「配当」ではなく、単なる所得移転である。

しかも米連邦政府はすでに巨額の赤字を抱えている。CBOは2026年度の財政赤字を2兆ドルと予測しており、7月までの10カ月間だけでも赤字は1.8兆ドルに達した。そこへさらに1.35兆ドルを配れば、赤字は70%も増える。

もう一つ重要なのは、トランプが「配る」と言っても配れるわけではないことだ。米国では連邦政府の歳出を決める権限は議会にある。今回の5000ドル給付について、トランプは「共和党が上下両院で勝てば」という条件をつけている。これは財政政策というより、中間選挙向けの公約という性格が強い。

インフレ対策で1兆ドルばらまく矛盾

皮肉なのは、米国民が現在最も不満を抱いている問題の一つがインフレであることだ。現金を配れば、短期的には家計は喜ぶが、1兆ドルを超える総需要を押し上げると、再びインフレ圧力を強める。

しかも米国の政府債務は40兆ドルを超え、長期金利にも財政懸念が反映され始めている。最近では10年国債利回りが5%以上に上昇する場面もあった。

結局、関税収入で足りなければ、国債を発行して将来の納税者から借りて5000ドルを配ることになる。それは「配当」というより、国民が自分自身に5000ドルの小切手を書き、その請求書を将来へ回しているだけだ。

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