警察庁の前サイバー課長を懲戒免職:捜査費170万円を私的流用か

警察庁は9月10日、捜査費約170万円を不正に取得し、私的に流用したなどとして、伊貝耕・前サイバー捜査課長(55)を懲戒免職処分とした。伊貝氏は警視長で、現在は長官官房付だった。警視庁は同日、詐欺や背任などの疑いで書類送検した。

伊貝耕前課長Internet Watch)

領収書を加工し、捜査費を不正取得

報道によると、伊貝氏は2022年から2026年ごろにかけ、欧州などで行われた捜査協力者への謝礼や、海外治安機関との交流会などに関する費用を水増ししたり、架空請求したりする手口で捜査費を不正に取得したとされる。

不正は数十回に及び、パソコンを使って領収書を加工・偽造することもあったという。不正に得た金は知人女性との交際費や身内との会食、遊興費などに充てられたとみられている。不正取得分はすでに全額返済されたという。

サイバー犯罪を取り締まる部署のトップ経験者が、パソコンを使って領収書を偽造していたとすれば、何とも皮肉な事件である。

ユーロポールにも派遣されたサイバー捜査の幹部

伊貝氏は国家公務員総合職の技官として採用されたキャリアで、2022年6月からオランダ・ハーグに本部を置く欧州警察機構(ユーロポール)に海外連絡担当官として派遣されていた。

2025年9月29日付で警察庁サイバー警察局のサイバー捜査課長に就任。警察庁の人事資料でも、今年5月時点で同職にあったことが確認できる。全国のサイバー犯罪捜査を取り仕切る立場だった。

さらに今年7月発行の警察専門誌「警察公論」では「世界のサイバー警察へ」と題する記事にも登場していた。わずか数カ月後に本人が捜査対象になるとは、警察庁にとって極めて痛い不祥事である。

問われる「捜査する側」のチェック体制

問題は170万円という金額だけではない。捜査費は、その性質上、一般の行政経費より使途を公開しにくい。情報提供者への謝礼など、詳細を明らかにすれば捜査に支障が出るケースもある。その秘密性を利用して、現場や幹部が数字を操作できるのであれば、制度そのものへの信頼が揺らぐ。

しかも今回の不正は一度ではなく、数年間にわたり数十回繰り返された疑いがある。領収書の偽造や水増しをチェックできなかったとすれば、本人だけを懲戒免職にして終わる問題ではない。警察庁は、ユーロポール派遣時の上司らについても監督責任を問い、処分する方針と報じられている。

サイバー犯罪では、警察は企業や国民に対して「不審な取引を見逃すな」「記録を確認せよ」と繰り返し注意を呼びかけている。その警察庁自身が、内部の不自然な精算を数年間見抜けなかったとすれば説得力を欠く。サイバー犯罪者を追跡する高度な技術も重要だが、まず自分たちの領収書をチェックする仕組みから見直す必要がありそうだ。

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