厚生労働省によると、今年夏の主要企業のボーナスは1人当たり平均97万6043円となり、前年より2万9574円、3.12%増えた。5年連続の増加で、1970年の集計開始以来の過去最高。3年連続で最高額を更新した。
景気のいいニュースに見えるが、この数字だけで「日本人が豊かになった」と考えるのは早い。インフレ時代には、むしろ働く会社による待遇格差が拡大する。
今回の調査対象は、資本金10億円以上、従業員1000人以上で労働組合のある主要企業365社だ。日本の会社員全体の平均ではない。

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インフレは全員に来るが、賃上げは全員には来ない
インフレになると食品、光熱費、家賃、外食費などが一斉に上がる。物価は勤務先を選ばない。しかし賃上げは違う。
利益率が高く、価格転嫁ができ、人材確保のために賃金を上げられる大企業では、5%前後の賃上げや100万円近いボーナスも可能になる。一方、取引先から値下げを求められ、価格転嫁も難しい中小企業では、原材料費や人件費だけが上がり、社員の賃金まで十分に上げられない。
物価は同じように上がるのに、賃金上昇率は勤務先によって大きく異なる。インフレは企業間格差を、そのまま生活格差に変えてしまう。
同じ仕事でも勤務先で生活が変わる
同じ年齢、同じ職種でも、大企業ならベースアップがあり、賞与が100万円近く出て、住宅手当や福利厚生もある。中小企業では基本給がほとんど上がらず、賞与が数十万円、あるいは支給なしということもある。
それでもスーパーのコメも、電気代も、ガソリン代も同じ価格だ。さらに賃上げできる企業には人材が集まり、できない企業からは人が逃げる。企業格差が人材格差を生み、その人材格差がまた企業格差を広げる。
日本の格差は「正社員か非正規か」だけではなくなる
これまで雇用格差といえば、正社員と非正規社員の違いが中心だった。しかしインフレ時代には、正社員の中でも格差が広がる。
大企業と中小企業、成長産業と衰退産業、価格転嫁できる会社とできない会社。同じ「正社員」でも待遇は大きく違う。「正社員になれば安心」という昭和型の発想は、すでに賞味期限が切れつつある。
「平均97万円」が隠しているもの
平均という数字は格差を隠す。主要企業の平均ボーナスが97万円だからといって、日本の会社員がみな97万円を受け取っているわけではない。
むしろ注目すべきは、その97万円を受け取れる会社と、そうでない会社の差だ。物価は全国一斉に上がる。しかし賃金は会社ごとにしか上がらない。ここにインフレ社会の残酷さがある。
インフレ時代の最大の格差は「勤務先格差」になる
これからの格差は、富裕層と貧困層だけでは語れない。同じ学歴、同じ年齢、同じ職種でも、どの会社に所属したかで生活水準が大きく変わる。
インフレに対応できる企業の社員は賃上げの恩恵を受ける。対応できない企業の社員は、給料が上がらないまま物価上昇だけを受ける。インフレはみんなを一緒に豊かにするのではない。賃上げできる会社の社員を豊かにし、できない会社の社員を相対的に貧しくする。
デフレ時代の「どこで働いても大差ない日本」は終わりつつある。これからは「勤務先ガチャ」が生活水準を左右する時代になるのだ。









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