ドイツで中道政治が崩れ始めている。地方選挙で右派のAfDと、左派党が躍進した一方、戦後ドイツ政治を支えてきた中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)は、メクレンブルク・フォアポンメルン州で得票率5%を割り込み、議席をすべて失った。

AfDの勝利宣言(AFP)
CDUがまさかの「議席ゼロ」
特に衝撃的だったのが、旧東ドイツ地域のメクレンブルク・フォアポンメルン州だ。AfDが第1党となる一方、CDUは州議会進出に必要な5%の壁を突破できなかった。
かつてヘルムート・コールやアンゲラ・メルケルを生み、ドイツ政治の中心に君臨してきた政党が、地方とはいえ「議席ゼロ」に転落した意味は小さくない。
東部ドイツではAfDの勢力拡大が続いている。移民問題、物価高、ウクライナ支援、エネルギー政策などへの不満を背景に、「既存政治では何も変わらない」と考える有権者がAfDへ流れている。もはやAfDを単なる「抗議票の受け皿」と片付けることは難しい。
ベルリンでは左派が勝つ
さらに興味深いのは、右だけが伸びているわけではないことだ。首都ベルリンでは左派党が第1党となった。住宅価格や家賃高騰への不満を背景に、大手住宅会社の住宅を公有化するという急進的な政策まで支持を集めている。
東部ではAfD、ベルリンでは左派党。右と左で向いている方向は180度違うが、共通しているのは「これまでの政治では駄目だ」という有権者の意思である。つまり今回の選挙で敗れたのはCDUだけではない。「中道」という政治モデルそのものだ。
「極端な政党に投票するな」では勝てない
ドイツの既成政党はこれまで、AfDとは連立しないという「防火壁」を築いてきたが、有権者に「AfDは危険だからCDUに投票してください」と訴えるだけでは、もはや票は戻ってこない。
移民は増えた。エネルギー価格も上がった。経済成長は鈍り、社会保障負担も重い。それでも既成政党から聞こえてくるのが「極右を阻止しなければならない」という話ばかりなら、有権者が「では生活をどうするのか」と聞き返すのは当然だろう。
AfDの勝利と左派党の勝利は、一見すると正反対の政治現象に見えるが、実際には一つの現象の表裏だ。それは「中道政治への不信」である。戦後ドイツを支えてきた政治秩序が、有権者に見放され始めているのだ。






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