時間管理の著者が教える、年代別・スキルアップの時間を確保するコツ(滝川 徹)

「大きな目標達成には時間がかかる」。これは本来、至極当たり前のことでしょう。しかし、楽にできるノウハウやタイパ重視の考え方が蔓延する現代において、つい忘れられがちな事実でもあります。

key05/iStock

時短コンサルタントの滝川徹氏は、この事実を前提とした上で、充実した人生を送るには、身につけるべきスキルを見極め、しっかりと時間をかけて習得する必要があると説きます。一方、そこに時間と努力を「オールイン」するのではなく、たった1日30分を続けることで、人生のバランスを取りながら、無理なく地道にスキル習得を続けられるといいます。この超現実的な目標達成法、「10年思考」とは?

この記事では、スキルを身につけるための戦略を、4つのライフステージに分けて紹介します。『10年思考でうまくいく――自己投資を実現するスキル戦略』(滝川徹・パンローリング株式会社)から再編集してお届けします。

学生期(生まれてから働くまでの期間)のスキル習得

学生期は、好きなことや興味があることに可能な限り時間を投資するといい。青年期以降のように、お金を稼ぐことへのプレッシャーもない。お金を稼げるか、役に立つかという観点なしに、ピュアな気持ちで好きなことや興味があることに取り組める。

この時期は自分がどんなことに向いているのか、興味があるのか。自分探しの時期とも言える。スキルを身につけることに、あまり意識を向ける必要はない。

勉強以外にやらなければいけないことも少なく、オールイン(使える時間のほぼすべてを一つのことに費やす戦略)しやすい時期でもある。私自身も大学時代は体育会のテニス部に入り、オールインした。得たものは大きかったが、得られなかったことも多い、というのが正直な感想だ。

オールインはステージに限らず、デメリットも多い。学生時代オールインした経験から、現在の私が感じているメリットとデメリットを紹介しておきたい。

●主なメリット

  • 現在の会社に入社できた
  • 大抵のつらいことには耐えられる自信
  • 実行する力
  • 健康な身体

現在の会社(処遇の良い大企業)に入れたのは、バリバリの体育会系テニス部で鍛えられていたのも大きいだろう。もちろん、そうでなくても入れたかもしれないし、別の会社でも同じくチャンスがあったかもしれない。それでも現状、お金に不自由せず、家族を養えている。これは在籍している会社のおかげだ。このメリットは大きい。

学生時代は週6日練習し、家が遠かったので片道2時間かけてコートに通った。正直、練習に行きたくないと感じる日が大半だったし、毎日つらかった。それでも続けた。

この経験から「大抵のことは耐えられる」、そんな耐性と自信がついた。やりたくなくても実行する力も身についた。これらは私の財産と言える。健康な身体。これも財産だ。

●主なデメリット(得られなかったこと)

  • 様々な経験と仲間との青春
  • 自由時間の満喫
  • ほかの選択肢と自分の可能性

同じテニスでもサークル出身の人たちから話を聞くと、いろんなところに仲間と旅行に出かけたり、夜遅くまで酒を飲みながら語りあったりと、青春を謳歌していて羨ましいと感じる話も多い。

一方の私は、週6の練習に縛られて旅行もほとんど行かず、毎日規律正しい生活。当時はそれでいいと思っていたが、今の私は「青春を失った」と感じている面がある。もちろん、部活に全てを捧げたことも青春だが、もっと自由な学生時代を謳歌すればよかった。そう感じている自分がいる。

テニスに全てを捧げたことで失った経験と選択肢もある。学生時代はバイトもほとんどできなかった。今思えばいろんな仕事を体験し、様々な人と出会いたかった。また、オールインしていなければ学生時代、ほかに夢中になれることに出合えたかもしれない。

もちろん、これはないものねだりなのだろう。テニスをしていなかったとしても、毎日自堕落な生活を送って無駄に過ごしたかもしれない。逆に「何かにオールインすればよかった」と後悔したかもしれない。

別の人生を選んでいたらどうなるか・どう感じるかなんて、誰にもわからない。それでも、「少なくとも、自分にはオールインは合っていなかったな」と感じている今の自分がいる。

好きなことや興味があることに夢中になるのは素晴らしい。ただ、「好きに時間を使える」この時期だからこそ、さまざまなことにチャレンジしてみることで、自分の感性や可能性を広げ、気づきを得られるはずだ。将来プロになることを本気で目指すのでなければ、ほかのことにも一定の時間とリソースを割いてバランスを確保すべきというのが私の考えだ。

青年期(働きはじめてから40代前半くらいまで)のスキル習得

学生期と違い、青年期は意識してスキルに時間を投資する必要がある時期だ。社会人となり、多くの時間を仕事に費やすようになり、時間の捻出がむずかしくなる。ほとんどの人は仕事中心のライフスタイルとなり、意識しなければ大半の時間を仕事に占拠される。

だからこそ、自分が何のスキルを身につけたいのか。しっかりと考えて意識して行動する人としない人で、大きな差が生まれる。

まず心がけたいことは、働く時間を管理することだ。仕事だけの生活にならないよう制限する。

まだ仕事を覚える段階で体力もある20代だったり、キャリアを築くことが最優先事項なら、限界まで働くのもよいだろう。だが、そうでない大半の人は、意識して働く時間を制限するべきだ。そうでなければ、目の前の作業に忙殺されるだけで、スキルを身につけるための時間も取れず、家族や友人との時間も確保できない。ここで意識して行動した人との差が大きくなっていく。

一方でスキルに時間を投資するにしても、まだ自分が何が得意でどんなことに興味があるか、模索する時期でもある。何のスキルを身につけたいのか、そのために何にどれくらい時間を投資すべきなのか。正しい情報を収集したり、本を読んだり考える時間も確保しながら、しっかりと計画することが大切だ。

パートナーや子どもがいるなら、家族と過ごす時間を意識して確保しよう。忙しいことを理由に疎かにする人も多いが、そうすると先に記したように中年期以降にツケを払わされることになる。あとになって、もっと一緒に過ごせばよかったと後悔してももう遅い。友人との時間も同じだ。後悔しないよう、意識して時間を確保するのだ。でなければスキルも積めず、人間関係もゼロ。のちの人生で何も残らない晩年を迎えることになる。

青年期のキーワードは「バランス」だ。複数の物事に、バランスを保ちながら時間を取るのは大変だが、がんばりどころだ。

中年期(40代前半から60代前半)のスキル習得

中年期は青年期よりもさらに強く、スキルを意識して時間を投下すべき時期だ。

仕事にも慣れ、在籍期間が長ければそれなりに居心地も良くなるが、新鮮味はなくなり、成長意欲が薄れてしまう。意識しなければ漫然と仕事をし、仕事を終わった後も漫然と過ごし、気づいたら中年期が終わっていた。そんな事態になりかねない。それを避けるためには、やはり意識を持つことが大切だ。

とはいえ、仕事面、プライベート面、金銭面のいずれをとっても過酷な時期であることは間違いない。さらに、「自分の人生、このままでいいのだろうか」と自問自答しはじめる悩み多き時期でもある。

だがこれまでの人生で、自分が何が得意で、どんなことに興味があるか。わかってきているはずだ。もちろん苦手なことも。だからこそ、自分が得意なこと・興味あることに打ち込む時間を持つのは、精神的安寧を得るうえで大切だ。

中年になって今さら……と思うかもしれない。だが、この時期から新しいスキル習得をはじめても、70歳くらいまでと考えれば時間は十分にある。気分転換がスキル向上につながるなら一石二鳥ではないだろうか。

さらにスキルのテーマと努力次第で、一流レベルにまで上げることも不可能ではない。あきらめずに努力し続けることが大切だ。

中年期は健康も重要なテーマになる。青年期なら多少の無理も睡眠で復活できるし、暴飲暴食も続けなければさほど影響はない。だが中年期は心身ともにガタが出てくる。少し走っただけで息切れがし、食べたい気持ちがあっても体が受けつけない。体型も変わってくるが、清潔感は保ちたい。

そんなときは、私のように1日1回の腕立て伏せから始めるといい。継続すれば習慣になり、成果は複利で大きくなるのでおすすめだ。

仕事、プライベート、金銭面など、踏ん張り時期だからこそ、費やす時間のバランスを意識しよう。来る晩年期に向けて、残りの人生をどう生きたいのか。自分の理想の老後はどんな生活なのかをあらためて考え、時間の使い方を必要に応じて見直そう。

晩年期(60代後半以降)のスキル習得

この時期の戦略はシンプルだ。残された時間をどう使いたいのかを考える。晩年期は青年・中年期と比べると時間がある分、スキルに時間を投資しやすい。一方で体力はもちろん、気力・意欲の衰えも出てくるのは否めない。

青年・中年期に意識してスキルを磨いてきた人は、おぼろげながらも理想の晩年期がイメージできているだろう。時間ができた分、これまで培ってきたスキルをより上達させたい。スキルを生かして社会貢献したい。さらに、これまでスキルを習得してきた“スキル”を生かして別のことにチャレンジしたい。そういった、やる気に満ちた晩年期を過ごせる。

一方、これまでそうした意識を持ってこなかった人、定年まで会社の仕事に専念してきた人などはスキルに時間を投資するのに苦労することになるかもしれない。だが、まだ時間はある。まずは、どのスキルにチャレンジしたいかを自分の余力を基準に考えよう。

  • 若い頃ほどは体力はないが、金銭的余裕はある。
  • 学生時代の友人とは疎遠だが、趣味仲間はいる。
  • 家族はいないが、フットワーク軽く出掛けるのは得意。

学歴も肩書も不要な晩年期こそ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:自分自身が充実していると感じられる生活)の向上を目指そう。そのためには、これからの残りの時間をスキルにどれだけ投資するか。現実に即して予定・計画し、実行していくとよいだろう。

■

滝川 徹(時短コンサルタント)
1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。

【関連記事】

■脳をダマせば習慣化できる。「5分だけやる」でも着手できない人に試してほしい単純ルール (滝川徹 時短コンサルタント)
■「10億円あってもやりたいことは?」好きなことを天職につなげるスキルの選び方 (滝川徹 時短コンサルタント)
■やりたいことと生活費を切り分けて考えれば、天職はすぐに見つかる。 (滝川徹 時短コンサルタント)
■本業があるからこそ好きなことができる(滝川徹 時短コンサルタント)
■副業講師で月10万稼ぐ私が、セミナー準備に30分以上かけない理由とその方法(滝川徹 時短コンサルタント)


編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2026年9月30日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。