物価高対策が物価を上げる:IMFがガソリン補助金の弊害を警告

物価が上がったら、政府が補助金を出す。家計にはありがたい話に見えるが、その財源は国民が税で負担する。さらに補助金でエネルギー消費が増えると、インフレは長期化する。

国際通貨基金(IMF)は10月15日、アジア経済の見通しを公表し、エネルギー価格の上昇への警戒を促した。財政支援については対象と期間を限定し、一律の燃料補助金や価格統制を避けるよう求めた。これは日本を念頭に置いている。reuters.com

値札を下げても、負担は消えない

原油を輸入する費用が増えた場合、政府が補助しても、その費用自体が消えるわけではない。給油所で払う金額の一部を、税金や国債で肩代わりしているにすぎない。

もちろん、価格の急騰を一時的に和らげ、生活や事業の混乱を抑える意味はある。しかし、長期間続ければ、消費者は本来の調達コストを把握しにくくなる。省エネや設備更新によって消費を減らす動機も弱まる。

燃料を多く使う人ほど補助額が大きくなる仕組みでは、生活に困っている人に重点的に支援が届くとも限らない。困窮世帯を助ける政策と、燃料の販売価格を一律に下げる政策は、分けて考える必要がある。

政府と日銀が逆方向に動く

物価を落ち着かせるために金融政策で需要を抑えようとしても、政府が広範な補助金で購買力を支え続ければ、政策の効果は相殺されかねない。

ただし、補助金をやめれば、抑えられていた店頭価格が上がる場合がある。短期的な消費者物価の上昇と、経済全体のインフレ圧力は同じではない。補助金によって統計上の物価を低く見せ続けることを、政策の成功と取り違えてはいけない。

政治家にとって、給油時の値下がりは宣伝しやすい。一方、そのために増えた財政負担は見えにくい。受益は今日、負担は後日という構造が、補助金を終わらせにくくする。

必要なのは支援の絞り込みだ

求められるのは、生活支援を一律に打ち切ることではない。支援の必要な低所得層にターゲットを絞った現金給付は意味がある。車が生活に欠かせない地域への配慮も、全国一律の価格補助とは別に設計できる。

同時に省エネ投資や供給面の制約解消を進める必要がある。値札を一時的に書き換える政策だけでは、エネルギーを安定して調達する力は高まらない。

物価高対策を評価する基準は、目先の請求額が下がったかだけでは足りない。誰を助け、いくらかかり、いつ終わるのか。政府が説明すべきなのは、その3点だ。補助金を出す決断より、終わらせる条件を示す決断にこそ、政治の責任が表れる。

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