プーチン大統領は死恐怖症(タナトフォビア)

独週刊誌フォークスが22日オンラインで報じたところによると、チェコのペトル・パヴェル大統領はポッドキャスト「ロンツハイマー(Ronzheimer)」の中で、「ロシアのプーチン大統領は極めて孤立している。彼は多くの人を信用していない。それどころか、殺されることに対して、ほとんど強迫的とも言える恐怖を抱いている」と指摘、その結果、「プーチン氏は限られた少数の人々に囲まれているため、周囲の者たちは、彼に聞かせたい情報だけを選別して伝えることが非常に容易になる」と述べた。

プーチン大統領、ウィトコフ米特使と会談、2026年10月21日、クレムリン公式サイトから

また、「プーチン氏が前線の状況について、側近らから誤った情報を与えられている可能性が高い。おそらく軍指導部からの報告が原因だろうが、彼は今もなお、作戦が順調に進んでいると確信しているはずだ」と付け加えた。

チェコのパヴェル大統領は、北大西洋条約機構(NATO)がロシアへの攻撃を計画しているとするロシア側のプロパガンダに対し、「ロシアは、自国の領土保全や存立そのものを脅かしているのはNATOであると繰り返し主張しているが、私はNATOの最高レベルの機密情報にアクセスする権限を有していた立場から断言するが、ロシア領土への攻撃を目的とした計画など、一度も見たことがない。そのような計画は存在しない。NATOの計画はすべて、防衛を目的としたものだ」と述べた。

そしてロシアの戦争目的について、「ロシアの目標の一つは、ウクライナでの生活を耐え難いものにし、ひいては欧州諸国へ向かう新たな難民の波を引き起こすことにある可能性が高い。その根底にある意図は、ウクライナに勝利の目はないこと、そして、そこに住む人々の生活を不可能にすることでロシアが勝利を収められるのだと示すことに他ならない」と説明した。

チェコ軍参謀総長やNATO軍事委員長を務めたパヴェル大統領は、ロシア軍が深刻な問題に直面していると指摘し、「もしロシアにウクライナ全土を制圧する能力があるのなら、間違いなくそうしているはずだ。現時点の戦況は、決してロシアの勝利とは言えない。ロシアは毎月、数万人もの兵士を失っている。9月だけでも、約5万人の兵士が死傷した。わずか1ヶ月でこれだけの数に達しており、これはロシアが新規徴兵によって補充できるペースをはるかに上回っている」と述べた。

NATO軍事委員長を歴任するなど軍事専門家パヴェル大統領の発言は非常に信憑性の高い情報だ。

ところで、トランプ米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏は21日、ロシアのサンクトぺテルベルクでプーチン大統領とウクライナの和平問題で会談した。会談の冒頭、ロシア側は米国籍市民スティーブン・ハバード氏の釈放を発表した。ハバード氏は2022年4月に拘束され、2024年10月にはモスクワの裁判所で禁錮7年近い判決を受けていた。ドナルド・トランプ氏は以前、プーチン氏に対し、同氏の解放を求めていた。

それを受けて、ウィトコフ氏はプーチン氏を「人道主義者」と称賛している。「「私の大統領であるトランプ大統領が人道主義者であるとよく語られていますが、あなたもまた人道主義者です。その姿勢を称賛します」と述べたという。会談の直後、クレムリンは、ロシアがウクライナおよび米国との交渉に「原則として」応じる用意があることを明らかにし、交渉の時期として11月中旬を示唆したという。

プーチン氏が突然人道主義者に変貌したのではない。その前に、トランプ米大統領は9日、ロシアのプーチン大統領との電話会談後、対ロシア制裁の一部を解除し、ロシア産のディ―ぜル燃料(軽油)を輸入するなどで米露間で合意したことを明らかにしている。それだけではない。プーチン氏の意向に沿ってウクライナのゼレンスキー大統領の国家元首としての正当性に疑問を呈するなど、ウクライナ寄りの政策から親ロシア寄りの姿勢を見せたからだ。

それに対して、プーチン氏はトランプ氏に3つの贈り物(米国市民の釈放、ディ―ゼルの米国輸送、米ロウクライナの和平交渉の再開)を贈ったわけだ。職業外交官ではない実業家ウィトコフ氏は「プーチン氏は人道主義者だ」と称賛した、というわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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