
- 米シンクタンクDefense Prioritiesが2026年9月10日、日米の相互防衛条約を段階的に終わらせ、核の傘も終了、沖縄からは全面撤退という提言を出した。台湾は「明確に不介入」
- なのに三沢・横須賀などは「必要なときに使える場所」として残したい。守りたいのは日本ではなく、日本と韓国の港を通るアメリカの商売。管理料を払ってでも、だそうですww
- 笑えるのは、日本を心配しなくていい理由のひとつに「ナショナリストの高市政権だから中国にはなびかない」を挙げていること。高市さんのオラオラの強気が、アメリカが手を引く根拠に使われている
- しかも同盟強化派のペンタゴン本流も、議会で高市さんの防衛力強化に「楽観している」と証言。撤退派も強化派も、結論は「高市さんが頑張る分、アメリカは楽できる」で一緒
- 但し書き:これは民間シンクタンクの提言で、現政権の国家防衛戦略は第1列島線を固める真逆の方針。ただ政権に人材を送ってきた団体なので、戯言と笑って済ませるのも危ない
こんにちは。永江です。
「トランプに近い軍事シンクタンクが、日米同盟を解消して核の傘もやめるけど、在日米軍基地は使い続けると言ってる」という話が回ってきた。台湾有事にも介入しない。あれほど台湾有事に集団的自衛権ってイキってたのにアメリカが来ないんじゃ行使のしようがない。高市さん、完全にハシゴ外されてて草。
日本の自衛隊は迎撃機と潜水艦に特化しており、アメリカの第7艦隊がいなければ報復能力は0である。その日本との相互防衛条約を終了というんだから見放されると言ってもいいくらいの衝撃。
で、原文を全部読みました。ページに「読了73分」と出る長文ですww 読んでみると、話はもっと皮肉でした。アメリカが日本から手を引いても大丈夫だと考える理由のひとつが、高市さん本人なんですよ。
レポートは「A second island chain strategy for Asia(アジアのための第2列島線戦略)」。書いたのはDefense Prioritiesの軍事分析ディレクター、ジェニファー・カバナ氏。ランド研究所やカーネギー国際平和財団を渡り歩いてきた研究者です。
ざっくり言うと、中国の目の前にある「第1列島線」(日本・台湾・フィリピン・韓国)に米軍を並べるのはもうやめて、グアムやパラオなど遠くの「第2列島線」まで下がろう、という話。中国のミサイルが届く場所に基地を置いても、有事には的になるだけだ、と。
日本に関係するところを抜き出すとこうなります。
| 項目 | 提言の中身 |
|---|---|
| 日米安保 | 相互防衛の条約は終わらせる。代わりに、有事に戦闘支援・武器・情報を出すと約束する長期の安保取り決めを結ぶ |
| 核の傘 | 終了 |
| 台湾 | 「戦略的曖昧さ」をやめて明確に不介入。中国さん、勝手にしてください。台湾にいる米軍の訓練要員約500人も引き揚げ |
| 沖縄 | 海兵隊1万8000人を2030年までに全員本国へ。嘉手納の戦闘機も撤収。基地は閉鎖 |
| 横須賀・岩国 | 横須賀の空母打撃群と岩国の海兵航空群は即時撤収 |
| 残すもの | 三沢(戦闘機2個飛行隊)・横田(輸送)・横須賀(ローテーション艦艇)・座間で約5000人 |
| 2035年 | 常駐はゼロ。三沢・横須賀などを「必要なときに使える場所」として残す |
| 尖閣 | 日本の向きは大事だが、離島の帰属は米国にとって重要ではない。守る範囲が広すぎる |

5万5000人を5000人。9割減ですね。ちなみにレポートは、沖縄の米軍がペンタゴンにとって役に立つのは日本防衛より台湾防衛のため、とはっきり書いている。台湾に介入しないなら沖縄にいる意味もない、という理屈です。
面白いのは、韓国・フィリピン・オーストラリアとの同盟は「切っても大して困らない」と片付けているのに、日本だけは扱いが違うこと。
理由は、日本がこの地域のパワーバランスで一番重要なプレーヤーだから。アメリカにとって絶対に困るのは、日本が中国側に転ぶこと。だから他の国より時間をかけて減らし、有事の支援を約束する取り決めも残す、と。
でも同時に、こうも書いている。
- 日本の本土は海に囲まれていて、中国から台湾よりずっと遠い。守りやすい
- アメリカが広く守ってあげているせいで、金持ちで技術もある日本が防衛にちゃんとお金を使わない
- だから今の安保条約は、日本が自分で何とかできる攻撃に保証を出しているだけで、むしろ逆効果
要するに「あなたは強いから、一人でも大丈夫」。恋愛でいうと「きみは一人でも生きていける人だから」と言って別れを切り出すやつですよww 褒めてるようで、手を引く口実。これが正真正銘のアメリカ・ファースト。つまりアメリカの利益を最優先にする、です。
ここが本題。レポートは、アメリカが引いたときに日本がどう動くかについて、2つの説を並べています。
- 説1:日本は自分で軍備を固める(核武装も含めて)。他国と組んで中国に対抗する
- 説2:軍備が間に合わないと恐れて、中国の要求をのむ。事実上の中国の衛星国になる
で、説2について「ナショナリストの高市早苗首相の下では起こりにくいが、将来は否定できない」と書いている。首相の名前を出して、ですよ。
つまりワシントンの撤退派から見ると、高市政権は「アメリカが抜けても中国になびかない保証」なんです。だからアメリカの理想は、日本を「自分で軍備を固める側」に押し出せるギリギリの支援だけ残して、あとは少しずつ引いていくこと。そう書いてある。
日本の保守派からすると「強い日本を見せればアメリカも本気で守ってくれる」という感覚だと思う。でもアメリカ側の受け取り方は真逆。「高市なら勝手にやるから、うちは手を引いて、使える基地だけ使わせてもらおう」。頼っているつもりが、計算に入れられているだけ。
ちなみにレポートは、日本の憲法上の制約と非核三原則が軍備の足かせになるので、場合によっては説2の可能性も見積もりより高いかもしれない、とも書いています。高市さんがいなくなった後の日本は信用されてないってことでもあるww
「でもそれは民間の撤退派の話でしょ」と思いますよね。そのとおりで、トランプ政権の本流は今のところ逆方向です。
2026年4月22日、戦争省(旧国防総省)のジョン・ノー インド太平洋安全保障担当次官補が米下院軍事委員会で証言している。中身は、日本での米軍の存在と態勢を強化するのが国防総省の最優先事項。第1列島線に沿って強力な「拒否的防衛」を築く、と。撤退派とは真逆です。
ところが同じ証言で、こうも言っている。
- 同盟国には、中核的な防衛費をGDP比3.5%にする「新しい世界標準」を満たすよう求めている
- 高市首相の防衛力強化の約束には楽観している。特に2026年2月の選挙で与党が圧勝してからは
- ただし「まだやることがある」
撤退派:高市さんがいるから、抜けても大丈夫。
強化派:高市さんがもっと払ってくれるから、楽しみ。
どっちの派閥でも、高市さんの強気は「アメリカの負担が減る材料」として計算されている。違うのは、基地に残るか帰るかだけ。財布はどっちでも日本です。
Xで回っていた「台湾有事に集団的自衛権の行使もない」という言い方は、ちょっとズレてます。集団的自衛権は日本側の話で、レポートには一言も出てこない。でも中身を詰めると、もっと痛い話になる。
高市さんは2025年11月7日の衆院予算委員会で、台湾有事が、戦艦を使い武力の行使も伴うものなら「存立危機事態になり得る」と答弁したと報じられています。事前の答弁要領にはなかった発言で、ここから中国の訪日自粛要請や日本産水産物の輸入手続き停止など、日中関係が一気に冷え込みました。
で、存立危機事態の法律上の定義はこうです。
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態事態対処法 第2条第4号
台湾有事で想定されている「密接な関係にある他国」は、助けに来た米軍です。米軍が来なければ、米軍への武力攻撃も起きない。存立危機事態の前提がそもそも成立しない。
つまりこの提言どおりになったら、日中関係を壊してまで言い切った答弁が、丸ごと空振り。もちろん与那国など日本の領土が攻撃されれば、それは普通の個別的自衛権(武力攻撃事態)の話になる。でもその場合も、提言どおりならアメリカの関与は武器・情報・戦闘支援どまり。前に立つのは自衛隊です。
ここが元ネタの「都合のいい拠点」の部分。レポートは、北日本や東日本の基地へのアクセスを、交渉するか「管理料」を払って確保しておくといいと書いています。目的は、日本と韓国の商業港へのアクセスを、攻撃や封鎖(特に潜水艦を使ったもの)から守るため。
日本を守るためではなく、アメリカの貿易が日本と韓国の港に出入りできるようにするため。守ってはくれないけど駐車場は貸してね、駐車料金は払うから、ってことですww
ただ、これは逆から見ると日本のカードでもある。レポート自身が、同盟があっても基地を使える保証はないと認めていて、イラン戦争でサウジアラビアが自国からの米軍機の発進を断った例を挙げている。条約がなくなれば、日本は「家主」として値段をつけられる立場になる。そこまで考えて言っているのかは怪しいですが。
- あくまで民間の提言。現政権の国家防衛戦略(2026年1月)は第1列島線の防衛が柱で、レポート自身もトランプ政権の1.5兆ドル国防予算案や国家防衛戦略を「逆方向」として批判している
- ただし「トランプに近い」は半分当たり。Defense Priorities自身が自分たちの考えはトランプ大統領の原則と整合的だと主張していて、元寄稿者のウィリアム・ルーガー氏は2026年6月まで国家情報副長官(任務統合担当)を務めた。ヘグセス長官の上級顧問だったダン・コールドウェル氏も元は同団体の政策アドバイザー(2025年4月に情報漏えい調査の中で国防総省を去っている)
- 提言の論理自体は「日本は自分で守れる」という評価でもある。中国には日本を征服する能力はないし当面持てない、とまで書いている
- 在日米軍の人数は、レポート内で「約5000人」と「2030年に約2万人」が食い違っている。後者は地域全体の数字の誤記とみて、この記事では前者を採った
「高市は見放されるのか」への答えは、見放されるというより、手のかからない子として放っておかれる、です。そして駐車場だけ使われる。
レポートには、日本には米軍抜きの防衛計画がないとも書いてあります。台湾が中国に統一された場合の計画も、アメリカ頼み以外にない、と。撤退派だけでなく強化派も「日本が自分でやれ」の方向で一致している以上、与党も野党も「米軍が来ない前提」の計画を持っておかないとまずいでしょ。
強いことを言えばアメリカが付いてきてくれる、という時代はもう終わっている。強いことを言うほど、アメリカは安心して帰り支度をする。皮肉な話です。
原典確認済み(43件):Defense Prioritiesのレポート本文(公開日・著者・提言内容・在日米軍の人数と基地名・沖縄海兵隊1万8000人・台湾訓練要員約500人・核の傘・尖閣・高市首相への言及・憲法と非核三原則・管理料と商業港・サウジの例・米軍抜きの防衛計画がないこと・政権の予算と国家防衛戦略への批判・人数の食い違い)、同団体のカバナ氏の肩書き、ノー次官補の下院軍事委員会証言(2026年4月22日)、事態対処法第2条第4号
報道・二次情報ベース(8件):同団体が「トランプの原則と整合」と主張していること・ルーガー氏の経歴(Stars and Stripes)、コールドウェル氏の経歴と2025年4月の退任(AP)、カバナ氏の前職(Lowy Institute等の略歴)、高市首相の2025年11月7日答弁の文言と事前要領にはなかったこと(東洋経済/ブルームバーグ、共同通信系)、中国の対抗措置(共同通信系)
確認できなかった主なもの:高市首相答弁の国会会議録の原文(複数報道で文言は一致)
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年10月22日の記事より転載させていただきました。









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