富裕層ビジネスには長期の時間軸が必須

内藤 忍

対面型の大手証券会社が運営する「金の鯱」と呼ばれる大口顧客向けのサロンを紹介してもらいました。

こちらの証券会社は東京では日本橋と青山に拠点を用意しています。どちらも駅近のビルの最上階にあり、一歩足を踏み入れるとその静けさと洗練された空間に魅了されます。

これだけの一等地に大きなサロンを構えクオリティの高いサービスを提供するのには莫大な運営コストがかかっているはずです。にもかかわらず、利用する顧客から会費を取ることはありません。

そして提供される飲食の費用もほぼ原価で一般の飲食店に比べるとかなりリーズナブルなようです。ちなみに日本橋のダイニングの運営は帝国ホテルで、デザートまで美味でした(写真)。

さらに驚くのは営業スタッフが金融商品を無理に売り込もうとする姿勢がまったく感じられない点です。

一般的な金融機関の営業はどうしても目先の手数料収入にとらわれがちです。

しかし、短期的な売買を繰り返させて手数料を稼ぐような営業手法は顧客を次々と探し続ける焼き畑農業のようなやり方であり、長期的に良好な関係を築くことはできません。顧客の信頼を失えば最終的には収益につなげることができません。

富裕層を対象としたビジネスにおいて本当に求められるのは、目先の利益を追うことではなく、長期的な視点に立って信頼関係を育むことです。それによって取引を深めていくことができ、さらに紹介による新たな顧客の開拓もできます。

こちらの証券会社の戦略はまずは預かり資産を大きくして、顧客基盤を拡大していく。そこからビジネスのチャンスを見つけ出し長期的に収益化していこうとする方向のようです。

例えば残高を積み上げてもらえれば、その資産を担保にした証券担保ローンのようなビジネスが可能になります。まとまった金額で長期のローンを出すことができれば安定した金利収入を得ることができます。

このサロンを利用するためには最低預かり資産が1億円程度必要なようです。外資系プライベートバンクに比べ取引開始のハードルはそれほど高くありません。

コスト面で優れているネット証券とは違った価値観を提供してくれる金融機関としてお付き合いする価値は充分にあるように感じました。

Ugur Karakoc/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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