
今年もそろそろ11月。1年の締めが見えてきた。
「いつかやろう」と思ったまま、手を付けていないことはないだろうか。
私はある。それも、たくさんある。筆頭は動画だ。YouTubeをはじめとする動画系の発信である。
動画の時代だと言われて久しい。文章より動画のほうが人に届くとか、始めるなら早いほうがいいとか、そうした話は耳にたこができるほど聞いてきた。
やればいいのにと自分でも思う。文章で書いてきたことを話せばいいだけなら、材料に困ることはないはずだ。それでも手が動かない。
理由ははっきりしている。私は物書きだ。書くのが速い。記事1本なら10分で書ける。推敲を入れても+5分だ。
動画はそうはいかない。撮って、話して、つないで、整える。言い間違えれば撮り直しになる。どう考えても10分では終わらない。速さに慣れた人間ほど、遅い道具に手を出しにくい。いまさらという気持ちが先に立つ。
もう1つある。自分の姿を晒すのが苦手なのだ。
文章なら、読者が見るのは言葉だけだ。顔も声も、話すときの癖も見えない。書き手は言葉の後ろに隠れていられる。動画ではそれができない。おっさんの喋りを誰が見たいだろうか。そう考えるたびに、カメラの前へ出る足が止まる。
ここまで書いて、気づいたことがある。「いつかやろう」と言っているうちは、まだやる可能性を残している顔をしていられる。けれど、5分で記事を書ける人間が何年も手を付けていないのなら、答えはもう出ている。
「いつかやろう」ではない。たぶん、やらない。
認めてしまえば、気持ちは軽くなる。やらないと決めたものは、もう宿題ではないからだ。
それでいいと思っている。書くのが速いなら、その速さで勝負すればいい。苦手の克服に時間を割くより、得意を磨くことに同じ時間を使うほうが、私には向いている。
「いつかやろう」の箱には、本当はもうやらないと決めたものが混ざっている。年の瀬が近づいたら、ときどき箱を開けて、そっと外に出してあげる。それも片付けのひとつだと思う。
尾藤克之(コラムニスト、作家)
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