事の発端は、9月20日に実施されたベルリン市(特別州)の議会選で「左翼党(Die Linke)」が47議席を獲得して第1党に躍進したことだ。その結果、ドイツの首都ベルリンで左翼党が主導し、緑の党(26議席)と社会民主党(SPD、22議席)の「赤・緑・赤」の3党の連立政権樹立の可能性が出てきたことだ。

「エリフ・エラルプの不安」というタイトル表紙の独シュピーゲル最新号
ドイツの首都ベルリンで先月8日、「左翼党」、緑の党、「社会民主党」(SPD)の3党は連立政権樹立に向けて最初のハードルを越えた。独メディアによると、「左翼党」、緑の党、SPDの「赤・緑・赤」の3党は計3回の会合を経て予備協議を終え、本格的な連立協議の前段階となる探索的協議を終え、いよいよ連立交渉が始まる予定だ。ドイツのメディアではベルリンで初の左翼党主導の政権が発足する可能性が高まったと報じられてきた。
そのような時、爆弾が破裂したのだ。テロではない。独週刊誌「シュピーゲル」の最新号(10月29日号)は「エリフ・エラルプの不安」というタイトル表紙で、ベルリン市の左翼党の筆頭候補エリフ・エラルプ氏が、イスラム過激テロ組織「ハマス」の支持者から自身の安全を懸念していると報じたのだ。「シュピーゲル」誌によると、エラルプ氏は、著名なパレスチナ支持活動家について明確に言及すれば、自身の家族の安全が危険にさらされるというのだ。この事実は、同誌が行ったインタビューに付随していた内部メモから明らかになった。エラルプ氏の事務所が、インタビューの原稿を同誌に返送する際、誤ってこれらの内部コメントも一緒に送ってしまったのだ。
左翼党には反イスラエル、親パレスチナのメンバーが多く、その中にはイスラエルの生存権すら否定する過激派メンバーも含まれていることは良く知られている。党幹部のエラルプ氏は悪名高く広く知られた「反イスラエル主義者」を恐れていると認めたのだ。その結果、左翼党主導の政権がベルリン市で発足した場合、次期ベルリン市長候補がパレスチナの過激派勢力や組織犯罪グループの強迫を受けて言いなりになってしまう危険性が出てきたのだ。
ドイツ民間放送ニュース専門局ntvの主任論説委員ニコラウス・ブローメ氏は「エラルプ氏や左翼党は、何らかの報復を恐れるあまり、本来なすべき行動を控えてしまうというケースが懸念される」と指摘、「左翼党の選挙開票イベントの場に、ハマスの闇の指導者とも言うべき人物と共に、ある氏族のリーダーが姿を現したという事実は、全く異なる意味を帯びてくる。それは一種の縄張りの誇示であり、自らの支配下にあると主張する領域に対する、先制的なマーキングとして機能しているのだ」と説明した。
左翼党は過去、独自の受け入れプログラムを通じて、可能な限り多くの亡命希望者を市内に呼び込もうとしてきた。それどころか、同党は亡命希望者に対し、言語テストのような「尊厳を損なう」ような審査を課すことなく、できるだけ迅速に市民権を与えることさえ望んできた。要するに、政策面においても政治的姿勢においても、ベルリンの左翼党は、同党の看板女性政治家が今や「恐ろしい」と語るような層に極めて接近してしまっているのだ。
ベルリンの左翼党は選挙で統治の委任を得た。有権者――とりわけイスラム教徒の有権者たち――によって、第一党に選ばれた。しかし問題は、彼らが実際にその責務を果たす能力があるかどうかだ。CDU(ドイツキリスト教民主同盟)内では、左翼党が主導する連立政権に参加することへの警戒を促す声が上がっている。
左翼党と連立を模索している緑の党とSPDの反応はどうか。緑の党の連邦代表であるフランツィスカ・ブラントナー氏は、エラルプ氏が内部で語った懸念に対し、「エラルプ氏が恐怖を感じているのは、極めて理解できることだ」と述べた。さらに、過激派や組織犯罪から脅迫を受けている人は誰であれ、同情の対象となるべきであり、何よりも保護されなければならないと付け加えた。
ベルリンSPD代表のシュテフェン・クラッハ氏は、エラルプ氏の発言は、首都ベルリンにおける組織犯罪に対して、より一層断固とした対策を講じる必要性を浮き彫りにしているとの見解を示した。 両党とも現時点では左翼党との連立交渉を進める意向だ。
一方、エラルプ氏自身は記者団に対し「私はベルリン市長として、全てのベルリン市民の安全を確実に守る」と語った。さらに「暴力やテロに対して断固たる姿勢で臨み、決して脅しには屈しない」と付け加えた。左翼党は「シュピーゲル」誌に対して法的措置などを検討しているという。なお、左翼党は31日に党大会を開き、連立交渉を開始するかどうかを決定する予定だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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