「高卒も大卒も初任給30万円」ミスミの採用改革が問い直す「大学の価値」

大学を卒業していなくても初任給は月額30万3000円。工場や製造現場で使われるFA(ファクトリー・オートメーション)用部品、金型用精密部品、および流通事業(VONA)などをグローバルに展開するミスミグループが、従来の日本企業の採用慣行に一石を投じる改革を始めた。

同社はことし11月から、高校卒業以上で社会人経験3年程度までの若手を対象に、通年採用の新コースを開始した。新卒と中途の区分をなくし、入社時期も年4回から選べる。さらに入社初年度から実績を評価し、昇格や報酬に反映する。

【参照リンク】若手ポテンシャル人材の採用を通年採用・一本化へ ミスミグループ

若手ポテンシャル人材の採用を通年採用・一本化へ | 株式会社ミスミグループ本社
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この改革が問いかけるのは、単なる初任給の問題ではない。そもそも大学を卒業することに、どれほどの経済的価値があるのだろうか。

大卒というだけで給料が高いのはなぜか

日本企業は長年、高卒、大卒、大学院卒という学歴によって初任給に差をつけてきた。

もちろん、大学で身につけた専門知識が仕事に直結する職業もある。しかし営業や企画、管理業務などでは、大学卒業という資格が仕事の成果を保証するわけではない。

企業にとって学歴は、応募者の能力を簡単に推測できる便利な指標だった。だが、それは必ずしも合理的な人材評価ではない。

生成AIの進化によって、情報収集や資料作成、プログラミングなどの仕事は大きく変わりつつある。これから重要になるのは、知識の暗記よりも課題を発見し、AIを使いこなし、変化に対応する能力だ。

その能力が大学の卒業証書で測れるとは限らない。

少子化なのに大学を増やしてきた文科省

ここで問われるべきは、文部科学省の大学政策である。

1989年に499校だった日本の大学は、2024年には813校に増えた。一方、18歳人口は198万人から約半分に減少した。学生が減っているのに大学だけが増えてきたのである。

その結果、私立大学の半数以上が定員割れに陥っている。それにもかかわらず、定員割れの私立大学にも多額の私学助成が続いてきた。

【参照リンク】財務省「人口減少と私立大学の定員」

文科省も最近は大学の再編・統合や規模適正化を打ち出している。しかし、少子化が何十年も前から予測されていたのに、大学の増加を容認し、抜本的な整理を先送りしてきた責任は重い。

大学は教育機関であると同時に、教職員の雇用を守る組織でもある。学生のためではなく、大学を存続させるために公費が投入されているのではないか。

大学教育の質を問わず、大学の数を維持することが政策目的になっているとすれば、本末転倒である。

大学に行かない合理性を取り戻す

大学には研究や専門教育という重要な役割がある。しかし、すべての若者が大学に4年間通う必要はない。

高卒で働き始め、必要になったときに大学で学ぶ。企業で実務経験を積みながら専門知識を身につける。そうした選択肢がもっとあっていい。

大学進学には授業料だけでなく、4年間働けば得られた所得という機会費用もある。卒業資格だけを目的に大学へ進学することが、本人にも社会にも合理的とは限らない。

ミスミの改革は、学歴より能力を評価する時代への転換を象徴している。

好むと好まざるとにかかわらず、18歳のときの受験結果ではなく、30歳になって何ができるかで評価される社会になりつつある。 企業が変わり始めた今、文科省も大学の数を守る政策から、教育の質と実際の価値を問う政策へ転換すべきではないだろうか。

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