ハッキング大国、北朝鮮をどう取り締まるか?:狙われたバイナンス社

北朝鮮をどのように形容するか、人によって表現の仕方は違うかもしれませんが、概していえるのは世界の中でもトップクラスの不良国家ということでしょうか?不良国家の定義としては不良行為を国家が取り締まるどころか、後押ししている点であり、それを比較的公にやっているのが北朝鮮とロシアとされます。

先般、仮想通貨取引の最大手、バイナンス社が北朝鮮ハッカーグループに狙われ、1兆円弱の仮想通貨がハックされました。この状況を生々しく伝えたブルームバーグの記事はまるで小説を読んでいるような内容です。バイナンスはハッキングされていることがすぐにわかり、直ちに世界中にいるチームに防戦、防衛させるとともに関係各所に連絡をし、ハッキングされた仮想通貨が他の仮想通貨経由で他の通貨に「資金洗浄」されないよう手を廻します。

結局、63億㌦がハッキングされましたが、素早い対応で半分近い30億㌦(4700億円相当)が他の業者や当局との連携で凍結されました。しかし残りの33億㌦(5000億円相当)が北朝鮮の手に渡った可能性があります。手口は相当複雑、かつかなり早い動きだったようで今回のハッキングを「史上最大の銀行強盗」と表現するところもあります。

バイナンスは仮想通貨市場への影響を最小限に食い止めるべく、33億ドルの穴埋め(買い戻し)を行っており、数日後には95%程度完了したとされ、仮想通貨相場への影響は最小限に食い止められています。盗まれたのはビットコインやイーサリアムが主流でステーブルコインは無事だったとされます。バイナンス社が今回盗難にあったのは預かり資産全体の数%程度であり、会社の経営には影響はあまりないとされます。

では盗んだ北朝鮮です。ブルームバーグによると北朝鮮は政府支援のハッカー部隊が数千人いるとされ、その中で特に精鋭部隊とされる「トレーダートレイター」というチームが今回のバイナンスハッキングを主導しました。チームは数十人規模の小さな組織とされます。

北朝鮮はこのチームに限らず国家を挙げてハッキング行為を行っていますが、その理由は国家財政の為とされます。同国の国家歳入は2022年に2ビリオンドル(3000億円程度)とされました。ただ、内訳のうち、正規の貿易、労働者派遣、IT技術関係など表向きの歳入はざっくりその半分である1500億円程度に見えます。2025年の正規財政も1500-2000億円規模であります。

これでは2700万人の国民を食わせていくには無理があります。北朝鮮にはそもそも一般国家の尺度でいう税金制度がないので我々の発想と全く違います。この独特の経済システムでは歳入が不十分なため、金正恩氏が直接的に支配する「統治資金」をつくり、こちらが国家財政を支える形になっています。

金正恩総書記 北朝鮮HPより

その多くは違法取引、デジタル搾取、兵士のロシアへの派兵、武器売却といったものでその裏金の年間平均「歳入額」は年間8000億円を超えるとされ、正規の歳入の4倍にも上る状態になっています。一言で言えば北朝鮮国家は「金ファミリー様により生かされている」のであり、金正恩様は神様であり、何があっても正恩様の言いつけには従う」社会が出来上がっているとも言えます。国民は善し悪しの判断もできない、そんな状況が見て取れます。

今回のバイナンスを巡る搾取では国家財政の3/4ぐらいを一気に獲得したものであり、トレーダートレイターチームは間違いなく同国や金正恩氏からヒーロー扱いされているはずです。

当然ながらこの資金があることでミサイル発射実験を繰り返すこともできるし、核軍備の準備もできるわけです。彼らは世界のあらゆるノウハウを盗むことには長けていますが唯一、大量生産の工業化はまだ十分進展しておらず、核ミサイルの様な近代的生産手法に頼らない兵器への傾注は大いにあり得るとも言えます。

ところでトランプ氏が「お友達の金正恩氏との会見のタイミングを探っている」とされます。特にイラン問題で厳しい世論の批判にさらされたため、次のポイントゲットとして北朝鮮との対話は当然、候補の一つになり得ます。ただ、私見としては前回のトランプ氏と金氏の会談がうまく行かなかったのはそもそもの思想が全く違う土台にあり、たぶん、金氏とは誰も波長の合う話ができないとみています。唯一、可能性があるとすればプーチン氏だろうと思いますが、話が合うというより「世界のならず者」同士でたまたま目的を同じにするだけで思想は相違すると考えています。

では習近平氏なら北朝鮮をどうしたいのか、と考えてみたのですが、習氏と金氏も思想的には相当かけなはれており、彼らが接近、会談したとしてもそれはあくまでも政治的な駆け引きに過ぎないとみています。

つまり金氏を押えられる人物はいないのではないでしょうか?

もちろん、この状態がずっと続くとも思っていません。が、今の世界はあちらこちらでいがみ合う関係があまりにも多く、それ故に北朝鮮には居心地の良い状況が続いているとも言えるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年11月3日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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