ロンドン発で懐かしく、すこしほろ苦く、そして嬉しいニュースが届きました。
ロンドン在住の日本人が中心になっている、ロンドン・ジャパニーズRFC(愛称「ロンジャパ」)は、私も在英期間中10年近くにわたってお世話になったラグビーのクラブチームです。(実は私、対戦相手のKew Occasionals RFCでもプレーしていました。)
1979年に創立されたロンジャパは、イギリスにやってくるラグビー関係者の「止まり木」みたいな存在で、イギリスへ行くまではラグビーに無縁だった私も、このチームに所属していたおかげで、同志社/神戸製鋼の林敏之さん、明治/リコーの砂村光信さん、現在の早稲田大学監督の中竹竜二くんなどといっしょにプレーするという信じられない幸運に恵まれました。
2003年にイラクで凶弾に倒れられた奥大使と直接お会いしたのは、1998年のことです。それまではクラブの古参メンバーから故・宿澤広朗さんなどと共にロンジャパ創立メンバーの一人としてお名前だけうかがっていました。
私が奥大使にお目にかかるきっかけとなったのは、1998年にイギリスの国会議員で結成されたラグビーチーム、Commons and Lords RFCが日本遠征を行うにあたって、以前から交流があったロンジャパにコンタクトがあり、そのお手伝いをさせてもらうことになったことでした。
当初は失礼ながらイギリスの陣笠議員(いわゆるバックベンチャー「Backbencher」と呼ばれるヒラ議員)の自主的な日本遠征とあって、全然日本で注目されず、私もガイド役をかってでたものの、途方に暮れていました。しかたなく、私は自らのわずかなコネをつたい、私の父の友人で弁護士の方に、彼の後輩にあたる武見敬三参議院議員(当時)をご紹介いただき、武見さんを通して森喜朗自民党幹事長(当時)にお話を通すことで、やっとのことで試合日直前になって議員チームによる国会表敬訪問が実現しました。そして日本で政治家への足がかりができたことにより、「官」にも動いていただくこととなり、すでに他のロンジャパOBから連絡がいっていた奥さんと英国議員チームの投宿先のホテルでお会いすることになったのです。
あの時は私も若く、生意気盛りでしたし、苦労しながらも国会訪問までこぎ着けたという達成感からいささか鼻息が荒かったのだと思います。外務省というお役所の官僚であるという、奥さんのお立場をあまり考えること無くして、
「なんだ役人が、いまさらエラソーに」
という思いが先にたち、いささか傲慢な態度で奥さんに接してしまいました。今から思い返しても自らの未熟さに赤面するとともに、忸怩たる思いがあります。
英国議員チームによる1998年の日本遠征への返礼として、翌1999年には日本議員チームが英国に遠征。あの年ウェールズを中心に開催されたラグビーワールドカップと前後して開催された、国会議員ラグビー・ワールドカップに参加しました。我々ロンジャパの選手たちも、日本議員チームの助っ人として、「お祭り」に参加しました。(その折に大変お世話になった駐英国日本大使館の中村滋公使(当時)、門司健次郎公使(当時)がそれぞれ後に駐サウジアラビア大使、駐イラク大使になられたことにも何か因縁を感じます。)
そしてあの英国議員による日本遠征から一年経ったこの機会に、私は心ある人から、あの遠征のウラで奥さんが英国議員チームの遠征成功のためにいかにご尽力されたかということを知らされたのでした。
決して自らの功を誇ること無く、裏方に徹しつつ、当日いかにも楽しそうに試合に参加されていた奥さん。かたや一人であの遠征の切り盛りをしたつもりになり、得意顔でイギリス人といっしょに国会議事堂のフカフカ赤絨毯を歩いてはしゃいでいた私。
あれから10年もたった今でも、自らの若気の至りによる思慮の至らなさを思い出し、身がよじれるほどの恥ずかしさを覚えます。
その後、私が2000年に帰国してからは、1/2回ほどオックスフォード大の来日遠征チームのレセプションなどラグビー関係の場で奥さんにお目にかかったのですが、初回の思い出の気まずさから、私の方から敬して遠ざかっていました。
イラクでの殉職のニュースを聞いたのは、既に私が香港に仕事の場を移した後でした。
天の配剤により、あれだけの人物とお近づきになる機会を与えられていながら、自らの偏見と傲慢とつまらないプライドによってそれをむなしくしてしまったこと。いまでも悔恨の思いはつきません。
「一期一会」ともいいますが、人と人との出会いにおいて、一個人の人格をその人の立場と同一視して判断することは愚かなことです。
今回、ロンジャパを継いでいってくれている有志の方々と、旧友レジ・クラーク、そして駐英日本大使館のみなさんのおかげで、私も最近忘れかけていた重要なことを思い出させてもらいました。ありがとうございます。
2006年の奥克彦記念杯の様子
1998年の英国議員チーム日本遠征の様子
森さん、この後総理就任、そして日本ラグビー協会会長。別に因果関係はないと思いますが...。
今回の記念試合直前に行われた大使館でのレセプションに関するロンジャパ・ブログ(コチラ)。