ネット選挙解禁? - 原淳二郎(ジャーナリスト)

アゴラ編集部

 民主党、自民党がネット選挙解禁に動いている。12月18日開かれたICPFとマニフェスト評価機構(IME)共催のシンポジウム「ネットと選挙活動」でも出席した民主党の高木崇志衆議院議員と自由民主党の片山さつき前衆議院議員の間で来年の参議院議員選挙でのネット選挙実現させるため、次期通常国会に公職選挙法改正案を提出する方向で意見が一致した。詳しくはツイッターのハッシュタグ#1218netをご覧ください。パネラーの意見が載っています。


選挙にネットを活用しようという動きはもう15年以上前からあった。米国でクリントン政権が登場した時もすでにネットが活用されていたことから日本でも解禁せよという世論が盛り上がっていた。当時の日本はまだパソコン通信が主流だったが、ユーザーの過半数はネット解禁を支持していた。しかし、地盤、カンバン、カバンが選挙の三種の神器だった時代、政治家の理解は得られずこの問題は放置された。当時、情報産業議員連盟の細田博之衆院議員(前自民党幹事長)にネット選挙の是非についてインタビューした。机の上にどさっと陳情書の束を乗せて彼はこういった。「これですよ。まだ日本の政治は」。ついで自治省選挙課長にもインタビューした。「公職選挙法は議員立法だから議員がその気にならないとどうにもなりません」。

その後インターネットが普及、政治活動にホームページやブログを活用する議員が現れるが、いまだに法改正は実現していない。28日秋葉原で開かれた「ツイッター議員との今年最後のつぶやき祭り」でも取り上げられた。ネット選挙解禁を求める声が多かったが、まだ与野党議員、国政地方議員の間で利害が一致しているようには見えなかった。

 両集会を総括すると、議員諸氏は選挙運動期間中にホームページやブログを更新できないこと、電話による選挙運動はいいのに、電子メールは禁止されていることなどに苛立ちが強い。逆にネットによる誹謗中傷に対する不安が大きい。目に見えない運動より地に足がついた地道な活動が政治家の王道だ、との意識が強いようだ。

確かにネット解禁はいろいろメリットが考えられる。選挙民と双方向の対話が可能になる。政治の動きに即座に反応できる。何よりカネのかかりすぎる選挙が安上がりにできる。米国大統領選挙のように政治資金を集めやすくなる。これには公選法以外の法改正が必要になるのはいうまでもないが。しかし、選挙民から見ると、ネット選挙が解禁されてどういう恩恵があるのだろうか。街宣車の連呼がなくなるだろうか。だれも読まない選挙公報をネットで読むようになるだろうか。つまらないテレビの経歴放送はなくなるだろうか。選挙民の質問に候補者がきちんと答えてくれるだろうか。配布するビラに事実上制限がなくなるので、迷惑メールのような選挙勧誘メールが増えるのではないか。たぶん、いずれも期待できないだろう。民主党議員がいっていた。「ネット選挙は野党にとって有利。自民党さん一緒にやりましょうよ」。これに前自民党若手議員がいっていた。「今回当選した自民党議員はお年寄りが多くて、ネットに理解のある若手の多くは落選したから」。

今回ほどネット解禁の議論が盛り上がったことはない。何も米国をまねてネット解禁することはないが、何が日本型選挙なのか、その中でネットはどう位置づけるのか、をまず議論する必要がある。選挙管理委員会が管理するサイトでのみ解禁する考え方もある。議員に任せておけばいいとはいえない。試行錯誤を繰り返すしかない。