このコラムも、今日が今年の最後になる。1月に「アゴラ」ベータ版がスタートしてから、ちょうど1年。最初は試行錯誤で始めたのだが、最近は1日1万3~4000人の読者があり、月間100万ページビューに達する。これはオピニオンを発表する媒体としては、数万部しか発行されない「論壇誌」をはるかにしのいでいる。今年アクセスの多かった記事をはてなブックマークのデータでランキングすると、
- それでもあなたは生保に入りますか? 11/1
- オーストラリアにおける「不都合な真実」の悲惨な結末 5/25
- 大学生は勉強しなくていいのか 11/6
- 目に余るNTTグループの独占回帰への試み 4/7
- 株価が予言する民主党政権の未来 12/3
- 日本ITの国際競争力 11/19
- 「地域間格差」はもっと拡大すべきだ 9/21
- 日本は「変な国」になってゆく 8/7
- 日米関係は本当に壊れるかも 12/14
- 「ユニクロ悪玉論」の病理 12/10
これまで日本のウェブでは、こうした天下国家を論じる記事は少なかったが、民主党政権になって変わってきたように思う。自民党政権では、政治は政治家と官僚機構と利益団体の利害調整や「政局」の力関係で決まり、国民が政治に何をいっても無駄だというあきらめが強かった。政治を論評するのもマスコミに勤務するサラリーマンで、アゴラに集まっているような専門家が直接コメントする機会は少なかった。
この状況が民主党政権になって変わり、政策で政治が決まる状況が生まれた。影響を与えるメディアも新聞・テレビだけではなく、ネットの影響が大きくなった。アゴラにも、多くの政党関係者がアクセスしている。どの意見が影響を与えるかは、媒体という入れ物ではなく、その記事を書く人の専門知識で決まるようになった。これはかつて韓国でネット上の言論が盧武鉉大統領を生み、アメリカでブログがオバマ大統領を生んだ状況に近い。
しかし記事の多くは、民主党政権に批判的だ。それは民主党が、政治手法においては自民党の利権政治を脱却したものの、政策の内容はあい変わらずの利益分配型だからだ。アゴラを独自コンテンツ部門としてスタートしたBLOGOSでも、日本経済を建て直す長期戦略なしに税金をばらまく民主党の場当たり的な政策への批判が強い。
もちろん一挙にすべてが変わることは望めない。民主党のようなアマチュア的な政策が通用するのは、相手が政策をもたない自民党しかなかったからだ。日本の民主主義は60年以上の眠りから覚めたばかりだから、それが成熟するには専門家が政治家を教育し、古い発想をたたき直す必要がある。来年は、さらに幅広い分野のみなさんの参加を得て、アゴラやBLOGOSがマスコミに対抗できる言論プラットフォームとして機能するように努力したい。
コメント
> それが成熟するには専門家が政治家を教育し、古い発想をたたき直す必要がある。
今年最後の記事に対して恐縮ですが、この一文だけは同意出来かねます。まるで亀井静香氏の言葉のようです。「専門家が政治家や民衆を触発し、古い発想が自動的にたたき直される仕組みや環境の構築と保守を行う必要がある。」こんな感じでしょうか。盲目的な民衆の一人ですが、この一年間アゴラには大変感謝しております。よいお年を。
shitofheavenさん
古い発想とはケインズの亡霊のことでしょう。政界とかマスコミとかによくいますが。彼らは、ケインズを否定したらバラ撒きの理屈がつぶれてしまうので、今でも徘徊させているのではないかと思います。ケインズの亡霊は、左翼の平等主義・社会主義の変形でもあるんじゃないですか。
ismaelxさん
ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りと思います。そのような状況を否定する意図はなく、表現が未熟だったことを反省しております。ただ、私はあの一文に、超人が世を正し人々を導く、という言葉に似た意味を感じてしまい、池田先生の日頃の言説を鑑みて強烈な違和感を覚え、反射的に投稿してしまったのです。私が理想とするのは、超人がいらない世界です。それは、子供の最適な遊び場のようなものです。ケインズの亡霊も左翼の平等主義・社会主義も、そして合理的期待仮説・効率的市場仮説でさえも超人の存在を必要としています。私は、アゴラが超人の死に繋がることを希望しているのです。