昨年末、総務省は、地方公務員に実際の役職よりも高い給料を支払う「わたり」についての調査結果を公表しました。それによると、「わたり」を採用する自治体は、全自治体の12%にあたる219にのぼります。
「わたり」の例として、総務省の報告では、係長のまま昇進できなかった職員に課長補佐待遇の給与を支払う例が書いてあります。もちろん、課長補佐になれなかった職員に課長補佐待遇の給与を与えるのですから、自治体にとってコスト高の要因となり、ラスパイレス指数も上昇します。
地方公務員法24条1項は、「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」と定めています。地位に応じた給与以上の給与を与える「わたり」は、条例違反ではないかもしれませんが、より上位の規範である法律に違反しています。
「わたり」が行われる背景には、年功序列制度があります。ピラミッド型の組織においては、上にいくほどポストが少なくなっていきますが、ポストからあぶれた職員の給与を下げないために「わたり」が行われるわけです。
これは、国家公務員の天下りと同じ構図です。天下りに関しては、もらう額が額だけにか、非常に見る目が厳しいのですが、「わたり」に関しては報道が少ない。両者とも同じ構造ですから、一体的に是正が必要であると思います。
私が考えますに、「天下り」や「わたり」にみる年功序列の問題点は、個人の能力を効率的に引き出せない点にあります。年齢が若くてもできる人はできるわけで、真に実力のある(つまり国や地域を豊かにできる)人材がどんどん上に上がれるようにしないと、国や地域の衰退につながります。