私的なことがらを記録しますが今週、紙の書類を大量に捨てました ― 藤沢数希

2010年05月19日 23:50

正直に白状すると、筆者はクラウド・コンピューティングなるものを大変冷ややかな目でみていた。なぜならばクラウド(雲)となんとなく新しい名前がついているが、そんなものはJavaなんかが流行りだした10年以上も前に出てきたコンセプトで新しいことは何もないからだ。クラウド・コンピューティングというのは要するに「PCにアプリケーションをインストールして使うと、バグ修正やバージョンアップがあるといちいちすべてのPCでやらないといけないからメンテナンスが大変だし、データをいろんな場所で共有したい時とかもめんどくさいよね。だからどっかのサーバーに全部まとめて、クライアント側のウェブ・ブラウザなんかのインターフェイスでサーバー側のプログラムを動かせば楽ちんじゃない」というだけのことである。


そもそもコンピュータの歴史を見ると、IBMなんかの大きなメイン・フレームがデータの計算処理も保存もやって、その中央コンピュータにユーザーの各端末でアクセスするというような中央集権的な仕組みが、安価なPCにそれぞれプログラムをインストールして、各PCでデータの処理も保存もやり、ネットワークを介して各PCがつながるという分散型の仕組みに置き換わって行ったのである。そういう意味でクラウド・コンピューティングというのは、またこの流れに逆行しているわけである。GoogleやAmazonなんかの巨大サーバー群に、インターネットで我々のPCや携帯電話を接続していろんなことをするわけである。

それでインターフェイスはだいたいウェブ・ブラウザになるわけだが、あんなトロいもんでちんたらちんたら仕事なんかできないということで、全然普及しなかった。それがここ1、2年の間、IT業界の人達が「クラウド、クラウド」と急に騒ぎ出したから、こうやって今まで分散していたものを、またどっかのサーバーに統合させるトレンドを作り出して、客にまた設備投資させて一儲けしようとたくらんでいるのだなと思っていた。だから筆者はクラウド・コンピューティングなるものにかなり冷たい視線を向けていたのだ。

ところがどういうわけか気づいてみると筆者自身がクラウドにどっぷり浸かっていた。例えば筆者は私生活ではGmailを使ってるのだが、この1、2年はプロバイダが提供するメールアドレスを使っていない。ウェブ・メールが圧倒的に便利なのだ。ウェブ・メールは引越しなどでプロバイダが変わっても何も変更する必要がない。旅行先でもそのまま使える。携帯でいつでもチェックすることもできる。また、考えてみればブログやこのアゴラの記事だってクラウドだ。筆者はウェブ・ブラウザで記事を書き、それがライブドアのサーバーに保存されて、日本中、世界中の数万人の読書に閲覧される。記事がライブドアのサーバーの中で管理されることにより、筆者自身がファイルを管理する作業から解放される。昔の記事を探し出すときも検索をすれば簡単に見つけることができる。ツイッターだって今までのつぶやきが全て世界のどこかにあるサーバーに保存されている。よく考えると筆者の周りはすでにクラウドだらけなのである。

以上のようなことがらは「気がついたらクラウドを使っていた」というような事例なのだけれど、今週、筆者はもっと積極的にクラウドを活用することを試みた。クラウド・オフィスだ。筆者の場合、東京都港区に住んでいるのでスペースを何かモノが占有しているとそれはかなり高額なコストになってしまう。そのため先々週に本を大量に捨てたことは報告したとおりである。しかし本よりももっと邪魔なものがあった。大量の書類だ。いらない書類は捨てればいいのだけれど、困った書類が2種類あって、ひとつは昔の源泉徴収票とかで、おそらく将来必要になることはほとんどないだろうけどなんとなく捨てるのは惜しいという書類と、もうひとつは洗濯機のマニュアルのように1年に1回ぐらいは使うかもしれない書類である。そういった書類が部屋にうず高く積まれていたのだ。しかも、困ったことに、筆者はその1年に1回使うような類の書類を、書類の山から探しだすために何時間も浪費するというようなことを最近しばしば経験していた。高いのは港区の家賃だけではなく、筆者の時間あたりの賃金もいっしょである。何時間も書類を探していたらそれはかなり大きな機会損失になる。そこで筆者はこういった書類をクラウド化して時間効率を高める決心をしたのである。

といっても、やることは極めて簡単である。こういった書類をスキャナで読み込んでPDFファイルにしてクラウドに保存しておくのである。筆者はクラウド・ストレージとしてDropboxを使っている。無料では2GBまでしか使えないが、少々お金を払えば無尽蔵のスペースを手にいれることができる。このDropboxを使えば家のデスクトップやラップトップ、iPhoneなどで常に同じ内容のフォルダを見ることができ、まさにクラウド・オフィスが実現するのだ。問題はスキャナで読み込む作業がかなり面倒なことだが、筆者はアルバイトを雇ってこの問題を解決した。時給1000円なら10時間作業してもらってもたったの1万円である。おまけに雇用も生まれ日本国のGDPの向上にも貢献できる。

書類をクラウド化した後は、まず使わないけど捨てるのは忍びないというような書類は全部捨てることができる。どうしても原本が必要なものはダンボール箱に詰めて田舎の実家にでも送っておけばいい。クラウド・オフィスというのはなかなか快適である。

通信速度の劇的な向上やハードディスクの大容量化、そしてiPhoneなどのスマートフォンの出現。古くて新しいクラウド・コンピューティングは、ここに来てようやく実用的な段階に到達したようである。ひょっとしたらクラウド・コンピューティングというのは人々のライフ・スタイルを変えるような結構大きなイノベーションなのかもしれない。

参考資料
普通の人がクラウド・コンピューティングをフル活用するための本5冊、金融日記

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