外需依存ではなく、逆輸入代替を目指そう--池尾和人(@kazikeo)

2010年05月28日 10:02

編者の小峰隆夫さんからと、出版社の日経BP社からとで、『政権交代の経済学』をつごう2冊ももらってしまった。大変に有り難うございます。標準的な経済理論に基づいて経済政策の分析をした良書だと思うので、私からも大学生とかに大いに薦めたい。それで、同書の第17講で小峰さんが書いていることとかなり重なる内容になるが、外需依存を改めるということの意味を改めて私なりにも確認しておきたい。


外需というのを純輸出(=輸出-輸入)と理解するのか、外需=輸出と理解するのかでは、ずいぶんと意味が変わってくる。近年の経済学では、前者の意味で使うのが普通だと思うので、私自身もそういう意味で使っている。この意味では、外需依存型の経済成長というのは、経常収支(純輸出)の黒字を出し続けるような成長パターンということになり、重商主義的な成長路線ということになる。今回の景気回復も、こうした路線によるものであって、当面、対GDP比で3~4%の経常収支黒字が見込まれている。

しかし、日本が重商主義的な成長路線を今後も追求し続けることは、私には望ましいとは思えないので、「外需依存型からの脱却を目指すべきだ」と言っている。すると、輸出依存度を下げるべきだと言っていると理解する人が出てくる。しかし、そうした理解は誤解で、私の本意ではない。わが国の貿易依存度は、国際比較でみてむしろ低い方であり、もっと高まっていいと考えている。その際に、輸出依存度だけを高めるのではなく、輸入依存度も見合う形で高めていこうという話である。

もっと輸出もするけれども、もっと輸入もする。その結果として、現状よりも貿易依存度は上昇するけれども、経常収支の黒字幅はむしろ縮小するという姿が望ましいと考えている。というのは、日本の人口動態を前提にすると、われわれは否応なしにより多くの経済資源を医療・介護・健康産業といった分野に回していかなければならないからである。こうした状況において、われわれに日本国内で非効率な活動に資源を割いているような余裕はもはやない。とくに海外から買った方が安くつくようなものを国内で生産したりする無駄は許されない。

もし医療・介護・健康産業といった分野への資源投入を増やさないならば、日本人の多くが、その高齢期において惨めで不満足な状態におかれるということになる。換言すると、そうした悲惨な状態を回避しようとする限りは、医療・介護・健康産業といった分野以外で使える経済資源の量は減っていかざるを得ないということである。そうであれば、医療・介護・健康産業といった分野の生産性を高める努力をできるだけ行うとともに、残された資源の配分の効率性を改善しないと、われわれの生活水準は低下してしまうことになる。

したがって、資源配分の観点からは、医療・介護・健康産業といった分野以外は、日本では比較優位がある活動しか行わないことにすべきである。そして、資源を比較優位のある分野に集中して、それで外貨を稼いで、必要なものの大半は輸入する。要するに、これまで輸入していたものを国内生産に切り替えていくことを「輸入代替」というが、いまの日本にはその逆、いわば「逆輸入代替」が求められているといえる。そして、貯蓄率の低下とともに外貨を貯め込む余裕は段々となくなっていくだろうから、貿易依存度は高まるが、外需依存度は縮小する。

以上が、私の考える今後の日本経済が目指すべき産業構造の方向性である。ただ最近、少々心配なのは、日本に比較優位があって、それを輸出して輸入の原資を稼げる製品って、ところでなんだろうかという点。例えば、日本国内で乗用車を作ってアジアに輸出するというのが成り立つのだろうか。このところ日本企業の投資は、国内向けよりも海外向けが増大してきている。外需に依存できる能力があることを当然視するのではなく、国際分業の中でのわが国の立ち位置はどこに見出せばいいのかを真剣に再検討してみる必要がある。

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