最大の無駄は「隠れた社会保障」 - 池田信夫

2010年06月23日 13:54

民主党政権も、遅まきながら中期財政フレームで、2020年までにプライマリーバランス(PB)を黒字化するという目標を掲げた。かつて小泉政権で掲げられた「2011年の黒字化」から10年も先送りだが、それも実現は困難だ。内閣府の試算でも、成長率が1%台では2020年にはPBは約20兆円の赤字。消費税を10%にしても増収は10兆円だから、問題は事業仕分けのような個別の無駄ではなく、財政構造の改革である。


今年度予算の一般歳出で最大の項目は社会保障の27兆円だが、さらに大きな無駄は社会保障に含まれていない隠れた社会保障にある。たとえば農業の戸別所得補償の予算は5600億円だが、これは農業政策としては意味のないバラマキであり、実質的には兼業農家への社会保障だ。本来の社会保障は所得の低い人を救済する制度だが、農家の平均所得は普通のサラリーマンより高いので、これは「逆社会保障」である。

農水省の予算は2.5兆円だが、そのうち8700億円がこうした補助金だ。農業土木の1兆円も地方の土木業者への補助金だから、農水省の予算のほとんどは農村への社会保障である。農家に年間1世帯500万円も補助金が投入されているのは世界最大で、農水省を廃止すれば、この不公正な社会保障は本当に貧しい人への給付に回せる。

高校の無償化3900億円も、実質的な社会保障である。大学への補助金も、国立大学への交付金と私学助成を合計すると1兆6000億円だが、大学に入る階層は所得が平均より高いので、これも逆社会保障だ。文部科学省の今年度予算5兆7000億円のうち、3兆7000億円が学校への補助金だが、こういう支出は教育バウチャーにすれば大幅に削減でき、学校の効率化を促進できる。しかし民主党政権では「バウチャーは禁句」だという。最大の支持団体である日教組が絶対反対だからである。

このように一般歳出のうち33兆円以上が広義の社会保障であり、そのうちかなりの部分が平均より所得の高い人に給付する逆社会保障である。さらに地方交付税の17兆円も都市から地方への所得移転だから一般会計だけで合計50兆円以上、さらに年金特別会計のうち社会保障給付が53兆円だから、合計100兆円以上が広義の社会保障費である。これを合理化しないで、歳出を削減することはできない。

しかし政府税調の専門家委員会は、座長の神野直彦氏を初めとして、「強い社会保障」を主張する「大きな政府」派で固められているので、こうした歳出の合理化は困難だろう。このままでは、民主党政権が倒れるまで財政は再建できそうにない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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