破綻した電監審 - 池田信夫

2010年08月17日 23:07

きょうの電波監理審議会で、VHF帯の「携帯向けマルチメディア放送」について答申を出せないという異例の事態になった。これまで電監審は、総務省から諮問された通りに数時間で答申するのが慣例となっており、即日答申できなかったのは総務省はじまって以来だという。


こうなることは、関係者が予想していた。この帯域ではドコモ=民放グループとKDDI=クアルコム・グループが対立して譲らず、6月25日に公開ヒアリングをやり、7月21日に非公開でヒアリングをやり、27日にまた公開でやり、8月3日に民主党の勉強会で説明し、その場で民主党から「総務省が勝手に決めるのは許さない」と強硬な申し入れがあったからだ。その結果、総務省が事業者を決めずに諮問したため、電監審の委員は決められなかった。そもそも次のメンバーでは、決めようがないだろう。

  • 原島博:東京大学名誉教授(会長)

  • 小舘香椎子:日本女子大学名誉教授(会長代理)
  • 松崎陽子:消費生活アドバイザー
  • 山田攝子:弁護士
  • 山本隆司:東京大学大学院法学政治学研究科教授

会長の原島氏は画像処理の専門家で、小舘氏は「回折型機能デバイス」の専門家。他の3人は、完全な門外漢だ。民主党の勉強会で「電監審が事業者を決められるのか」という疑問が出たのも当然だ。これに対して、情報流通行政局の大橋総務課長は「われわれプロフェッショナルが決める」と気負って答えたが、今回はそのプロフェッショナルでさえ決められなかった事業者を、いったいどうやって素人集団の審議会が決めようというのだろうか。

原島氏は「慎重に審議するが、いたずらに時間をかけない。1社に免許割当という方針は原則変更がない」とコメントしたというが、3年近い大論争で決着がつかなった問題に、何も知らない彼らが答を出せるはずがない。問題は技術だけではなく、ビジネスとして成り立つかどうかまで決めなければならないのだ。まったくビジネスを知らない5人の委員が、収益性を判断できるのか。ウィルコムのように破綻したら、誰が責任を負うのか。

今回のケースは、霞ヶ関の不透明な意思決定の隠れ蓑に使われている審議会の実態を白日のもとにさらした。大橋氏がいみじくもいったように、審議会なんてあってもなくてもよく、すべて事務方が決めたことを追認するのが実態だ。専門家がいないのは、へたに電波の知識があると、役所の決めたことに異を唱えられても困るからだ。こんなダミーに利用されている原島氏は、研究者として恥ずかしくないか。

今回の事件は、電波社会主義のみならず、霞ヶ関の伝統的な意思決定システムがもう機能しなくなったことを示している。これまで電波行政では、電波部が強力な権力をもっているため、それに公然と刃向かう業者はいなかったが、今回は外資がアメリカ大使館の圧力を背景にして粘ったため、官民カルテルが崩れてしまったのだ。日本は、やはり外圧でしか変わらないのだろうか。

勉強会で民主党の岸本周平衆議院議員もいったように、こんな茶番はもうやめるべきだ。VHF帯全体の電波の分配からゼロベースで仕切り直し、周波数オークションを含めて制度設計を考え直したほうがいい。それによって事業開始が、半年や1年おくれてもかまわない。ここで変な割り当てをすると、数十年にわたって電波が浪費される。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑