解雇自由化は日本経済復活のための一丁目一番地 - 藤沢数希

2010年08月26日 02:02

週刊ダイヤモンドの解雇解禁特集が方々で話題になっている。日本の極めて厳しい解雇規制が、企業の新規採用の抑制、非正規社員だけに押し付けられる不当な雇用リスク、日本のグローバル企業の国際競争力低下、ひいては日本経済の閉塞感の大きな原因になっていることはすでにさまざまな識者が指摘している。筆者は公務員も含めての日本の解雇規制の自由化が日本経済を再び成長軌道に乗せるための一丁目一番地だと考えている。結婚相手の職業人気1位が公務員、学生の就職先人気1位が公務員、そして新卒がみな大企業の正社員を目指す日本の現状は、病的だ。


いったん既得権を握った大企業の正社員や公務員が、どれだけ与えれれた仕事に向いていなくても、どれだけサボっていても給料をもらい続けられる一方で、非正規社員がどれだけがんばっても報われないような仕組みがあっていいわけはない。これでは江戸時代の身分制度だ。

また厳しい解雇規制が企業の採用意欲を削いでいる。いったん正社員として雇ったら、犯罪行為でもない限り首にできないのならば、企業側は雇用に極めて慎重になるだろう。その結果、困るのは職を探している失業者や新卒だ。また企業が雇用リスクを気にして採用を控える結果、数少ない正社員で仕事を回すことになる。そうすると忙しくて死にそうな正社員と、職がなくて死にそうな失業者や新卒が並存するという非常に歪な労働市場になる。

これらの問題を解決するのは、解雇規制を緩和して、労働市場の流動性を高めるしかない。筆者は、解雇規制は緩和ではなくて「自由化」がいいと考えている。ある程度の金銭的な保証を支払えば企業はいかなる理由でも社員を解雇できるようにするのである。アメリカなどは仕事ができない社員を簡単に首にできるのだが、同時に人種差別や性差別に対して非常にきびしく、そういった理由による解雇は禁止されている。しかし筆者はアメリカのこのような法律には疑問だ。首にされた社員は会社に不満を持つことが多く、いきおい「人種差別による不当解雇だ」なんて訴えを起こす。そしてこういう裁判は雇用主が差別用語をいっただのいってないだのの不毛な水掛け論が延々と続き、儲かるのは弁護士だけという状況になりがちだ。雇用なんて、経営者が好きか嫌いかで決めればいいことであって、それが差別だなんだと人にいわれる筋合いはない。

そもそも競争的な市場では、人種などの仕事の能力に関係ない属性にこだわるような経営者は、そういうおかしなこだわりがない経営者よりも採用活動で不利になるのだから、それなりのハンディキャップを背負うのである。そのハンディキャップを抱えながら会社を経営したいならば好きにやらせたらいいのだ。それに特定の人種や性別が採用されにくくて、そういった特定のグループの人材が割安に放置されていたら、目ざとい経営者がそういう人たちをすぐに雇うのである。非常に競争的なサッカーなどのプロスポーツや、国際金融の世界では、さまざまな国籍の人たちが働いており、そのような差別はほとんどないのだが、それは何も監督や経営者が特に倫理的であるということではない。ライバルに打つ勝つために少しでも優秀な人材を雇い入れなければならず、差別なんかしている暇がないのである。

解雇は金銭による完全自由化に限る。そこで金銭解決の額だが、月給一ヶ月程度で十分だろう。これは大企業にしてみたら格安だが、それ以上だと中小零細企業はとても払えない。今の法制度では、大企業が正社員を首にしようと思えば、ちょっと話がこじれれば年収の2年分ほどの金を積んで仕事のできない社員に辞めていただかなければならない。ところが実質的にすでに解雇自由の零細企業では一ヶ月でも重い負担だろう。なぜ零細企業は解雇自由で、大企業は解雇するのに年収の2年分なのかというのは、日本の法制度の執行体制による。要は裁判で社員が勝っても、裁判所は紙切れ一枚書いてくれるだけで、それは大企業には完全なる強制力を持つのだが、零細企業では社長が無視すれば会社の財産を差し押さえるのはかなり大変だし、裁判まで含めると割りに合わないことが多いからである。日本の大企業は国際的な競争にさらされているのである。仕事のできない社員を首にするのに、そんなにコストを払っていては株価が低迷するのも当然だろう。首にするのに月給一ヶ月分で十分だ。

多くの経済学者が硬直した日本の労働市場の問題を指摘してきたにも関わらず、こういった解雇規制に対する改革は政治的に実行不可能だと考えられてきた。しかし筆者は本当にそうなのかと、問いたい。郵政ファミリーへの利益誘導に明け暮れた国民新党は前回の参院選で、結局ひとつの議席も獲得できなかった。日本の首相は、お笑い芸人が視聴率を取れなくなるとすぐにテレビにでられなくなるみたいに、支持率が落ちるとマスコミにボロクソに叩かれ辞めさせられる。今時、利権団体の組織票で選挙に勝てるような時代ではないのである。だったら多少の抵抗はあっても、日本の未来のために正しいことを成し遂げようとする志の高い政治家が現れてもいいではないか。そして解雇規制の自由化こそが今の日本にとって「正しいこと」なのである。

参考資料
ダイヤモンド 「解雇解禁」特集号で大事な3つの論点、山崎元
最悪の時はこれからだ、池田信夫
有期雇用の必要性、あるいは司法修習生の就職対策について、城繁幸

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