小児科医が考える金のかからない少子高齢化対策 -十河 剛

2010年10月15日 12:59

少子高齢化社会はもはや避けては通れないものとなったが、少子化対策と高齢化対策を関連付けて論じられる事は少ない。

一口に高齢化対策と言っても、介護、老人医療、年金と範囲は広いが、極端な話しをすると多くの人が健康に長生きを出来れば、介護や老人医療はさほど問題にならなくなる。勿論、生物学的に加齢による変化とそれに伴う疾病は当然発生するが、これを最小限に抑え、論点をそこにそ絞る事が出来れば、解決は早い。一方、少子化対策も同様に子育て支援、周産期医療、保育、教育と幅は広いが、単純化すれば、子供が健やかに育つための社会基盤整備にということに尽きる。


この様な目標を達成するために必要な施策を予算制限なしに行えれば良いが、しかし、昨今の我が国の経済状況と医療・介護の置かれている状況を見ると、如何に金を使わず、必要な人材を確保して、必要な施策を行うかということが必須である。さて、そこで経済評論家でもなく、政治家でもない、言わば、ド素人の一小児科医である私が金を使わずに、人を集め、必要なサービスを提供する方法を考えてみた。

ドラマ「北の国から」の中で、田中邦衛演じる黒坂五郎と唐十郎演じる高村吾平とが語り合う場面、五郎が近所の者同士がお互い助け合うお礼は物や金ではダメで手間で返す「手間返し」という慣習があると話すと、吾平は自分の住む地域にも同じ様な風習があり、「結(ゆい)」と呼んでいると応じる。ドラマの舞台となった小樽や羅臼に本当にこの様な風習があったかどうかは著者は知らないが、かつての日本の地域コミュニティには「困った時はお互い様」というような地域の中でお互い助け合いながら自助自立していく文化があった。「手間返し」「結」「お互い様」の日本古来の地域文化が復活出来れば、金をかけずに人を集めて少子高齢化対策が出来るのではないか?ただ、一度崩壊したコミュニティを復活させて、人と人とを結びつけることは容易でない。そこでちょっとした仕掛けが必要となる。

介護、子育て支援の世界にポイント制を導入する。人間を長いライフスパンで考えると金はないけど時間はある時期もあれば、金はある程度あるけど忙しくて時間がない時期もある。一生、貧乏暇なしで両方ともない人は人口比率からするとそう多くはない筈である。大抵、定年後は再就職しても、現役時代よりは時間的に余裕が出来るし、年金を貰って仕事も辞めるとさらに時間は出来る。65歳から年金を貰い始め、時間を持て余した方には自分に介護が必要になるまで、介護、育児、教育など、自分が得意な分野、自分が出来る事を出来る範囲で奉仕活動をして頂く。子育てが最も忙しく、大変なのは最初の一年、せいぜい小学校入学位までであろう。専業主婦も子育てに一段楽して働こうと思っても、この不景気で仕事がない。であれば、仕事探しの余った時間に奉仕して頂く。学生も最近は部活動はしない帰宅部が増えているとか、そして、アルバイトをしたくてもこの不景気で仕事もあまり回って来ないとか。であれば、勉学以外の余った時間に奉仕して頂く。

金はないけど、時間はある人は大勢いる。まとまった時間が取れなくても1日1時間でも良い、こういう余った時間に奉仕活動をして、奉仕活動をした分だけポイントを貯めていく。貯めたポイントは介護、育児の分野で利用できる。どの様なサービスにポイントがいくら必要かはある一定の制約の中で自由に決めていけば良い。既存のマイレージや量販店などのポイントと互換性があっても良い。貯めたポイントは親子間の相続のみ認め、その他の譲渡、売買は認めない。時間はないけどお金がある人は今までの介護保険にわずかばかり上乗せした分を払えば良いし、時間が出来れば奉仕活動をしてポイントを貯めていけば良い。実質的に行政が支援して、財政支出が必要になるのは、貧乏暇なしでお金も時間もない人口比率にするとわずかな人達と病気や障害のため働けない人達だけになる。

お年寄りには活動の場が増えるので認知症予防にもなるし、ある程度体力を使う作業もすれば、寝たきり予防にもなる。学校の授業で奉仕活動を取り入れようとする動きもあるが、子供達には奉仕活動を体験する場にもなる。「ポイントがもらえるのだから、奉仕活動ではない」なんて、細かい事には目を瞑ってもらいたい。行政側からすると、予算を増やさずに介護サービスと育児支援サービスの人材を集めて、サービスの質、量を上げることが出来る。かつ、今迄、行政側が負担して来た低所得者や無収入者の介護保険料や保育料などを奉仕活動という形で現物払いして貰えることになる。

専門家や自称専門家は異論を唱えるだろうが、この国の社会保障のあり方と地域社会の在り方を大きく変え得る提案だと思うが、如何だろうか?

済生会横浜市東部病院こどもセンター 医長 十河 剛(そごう つよし)
twitterアカウント Boo1chomeKojiCh

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