アメリカFRB,4日のFOMCで量的金融緩和第二弾の実験を開始!-リフレ策は、魔法の杖か、悪魔の杖か?-

2010年11月02日 14:14

藤井 まり子

   
11月4日にFOMCで決定される量的金融緩和第二弾は、FRBの理想に反して、失敗する可能性が高まってきています。

以下、ここ2カ月間のマーケットの反応を観察してきました。
流動性危機でもないときに、中央銀行がマネーサプライを大量供給しようとする量的金融緩和策(リフレ的な政策)が、一歩間違えると悪魔の杖になってしまう危険について、解説します。

まずは、流動性危機時の量的金融緩和と平時の量的金融緩和については、峻別する必要があります。


【流動性危機時の量的金融緩和】
政策金利をゼロ近辺にして、もうこれ以上金利を引き下げられなくなったアメリカFRBは、2008年9月にリーマンショックが走った後、2008年半ばから2009年3月まで、1兆7、000 億ドル規模の超大量のマネーをマーケットに投入しました。

これが、「QE(Quantitative Easing)1」(非伝統的・量的金融緩和第一弾。 以下、「非伝統的」という言葉を使わず、「量的」という言葉を使います。)です。

「政策金利を下げる」といった従来型の金融緩和策にたいして、 FRBが国債を始めとする資産を購入することによってマーケット にマネーを放出する手法を、「量的金融緩和」(QE)と呼びます。

このQE第一弾の時は、リーマンショック時に、民間金融機関の間で極度の信用不安が連鎖してしまい、短期金融市場で「強い信用不安」「疑心暗鬼」が急速に高まり、短期金融市場でマネーが干上がって、停止(凍結)してしまった時に、行われました。

これが、リーマンショック時の「流動性危機」です。

「流動性危機」を放置しておくと、健全な金融機関でさえも、不健全な金融機関の巻き添えになって、倒産してしまい、大金融危機は大恐慌にまで発展してしまいかねません。

そのこで、当時2008年秋から2009年3月までのアメリカFRBは、この「流動性危機」時の貸し手のいなくなったマーケットに、「最後の貸し手」として、超膨大のマネー1兆7,000億ドルを、延々と供給し続けたのです。

バーナンキは、そのマネー供給量の超膨大さから、このときのFRBの量的金融緩和策(「QE1」)を、自ら「衝撃と畏怖の大作戦」と名付けて、自画自賛しています。
これが、流動性危機時に行われた量的金融緩和第一弾(「QR1」) の中身です。
「QE1」は、2009年3月末には解除されています。

2008年秋から2009年春まで、FRBが「最後の貸し手」として行った「衝撃と畏怖の大作戦」「QE1」は、経済の大恐慌を回避するために、大いに有効でした。

【FRBが量的金融緩和第二弾を実施せざるを得ない背景】

あれから、1年半余りが経過しました。

日本を除く世界経済は穏やかに回復基調にあるものの、まだまだ「穏やか過ぎるくらいの薄氷を踏むような」回復基調です。

マーケット関係者は今年後半の最大のドラマである「量的金融緩和第二弾(「QE2」)」にすっかり気を取られて、欧州ソブリンリスクをすっかり忘れ去ってしまっていますが、欧州ソブリン危機は決して抜本解決されたわけではなく、半年以内に再び顕在化する恐れも高いです。

中国も、チャイナリスク(一党独裁の中央集権国家特有の政治・経済の矛盾)が燻り始めた結果、中国政府もバブル退治に向かって、「段階的な金利の引き上げ」という本格的な金融引き締めへと転じました。

さらに、今回の不況は、なんといっても、アメリカの住宅価格が下げ止まらな
い限り、脱出はほぼ不可能に近いと言えます。
そして、今回の金融危機の根本原因となったアメリカの住宅の価格は、この夏から、中古も新築も、わずかながら再び下落基調を辿り始めています。

バブル崩壊後、アメリカでは、住宅の差し押さえに合ってしまった人々の数が、急増しています。
アメリカの中古の住宅販売「件数」は、年率換算にすると、今現在およそ450万件程度です。この中古住宅の販売件数の三分の一の150万件が、なんとなんと、今や、こういった差し押さえ物件で占められています。
「450万件中150万件が差し押さえ物件」という数値だけ見ても、今のアメリカでは、「いかに差し押さえ物件が多いか」、ご理解いただけると思います。

こういった「実際に差し抑えられた住宅」以外にも、住宅ローンの延滞率が3カ月以上などなどの問題住宅を含めると、「予備軍」としての「影の差し押さえ住宅」が、未だに、全米で400万件程度存在しているとの試算もあります。

こういった差し押さえ物件の増加が、住宅の在庫の積み増し圧力となって、アメリカ国内の住宅価格の大きな抑制要因として働いているのです。

さらにさらに、
この9月のアメリカのコア消費者物価指数は、対前年度比で、わずか0.8%でした。このコア消費者物価指数は、8月と同様に、1961年3月以来の低い伸びです。
FRBが理想としているしている「およそ1.7%~2.0%のインフレ率」には、はるか及びません。

【量的金融緩和第二弾で、「最初の貸し手」となるアメリカFRB】
こういった「流動性危機が発生していない」時期に、 アメリカFRBは、今度は、前代未聞の量的金融緩和第二弾「QE2」を、11月4日にはFOMCで決定しようとしているのです。

11月4日の「QE2」は、平たく言えば、流動性危機も起きていないのに、中央銀行であるFRBが「最初の貸し手」(「最後の貸し手」ではなく、なんとなんと「最初の貸し手」なのです!!!)として、アメリカドル国債を大量に買い支えて、市場へマネーを大量に放出することなのです。

こういった流動性危機が起きていないときに、中央銀行が「最初の貸し手」として国債を買い支える「量的金融緩和第二弾」の目的は、もちろん、
・マネーをジャブジャブにして、インフレ期待をしっかりと経済に根付かせるこ と、
・FRBが国債をダイレクトに買い支えることで、国債金利を始めとする「長  金利」を低めに誘導し、その結果、民間企業の設備投資やM&A、個人の住宅 投資を活発化させて、アメリカ国内で力強い経済成長(名目経済成長率が長期 金利を上回るブーム)を巻き起こすこと、
です。

最後に、以下の二点はFRBは決して公式には認めたがりませんが、

・FRB自らが意図的にドルと言う名の通貨の価値を下げることで、ドル安を誘 導し、アメリカの輸出競争力を高めようとすること、
・こちらも、FRBは一切公式に認めていませんが、確信犯的に株式などの資産 価格の上昇を狙って、 「資産効果による消費の活発化」を狙っていること
などなどです。

「QE2」の「効果と弊害の程度」については、まだ「人類未踏の領域」ですので、はっきりしたことはまだ分かっていませんが、FRBの目的は、上記の四つが上げらます。

【QE2の副作用(弊害)】

「QE2」の副作用については
・理想家のFRBの予想に反して、ヘッジファンドたちが暗躍し、主に、ゴール ドや原油・農作物をはじめとする資源コモディティー分野や、新興国の不動産 や株式市場で、制御不能なバブルを形成してしまうこと。
・一歩間違えると、ドル安・スタグフレーションが起きて、初期目的に反して、 ドル国債を始めとする長期金利が急騰する危険があること、、
などな どです。

そして、その弊害の兆候は、「QE2」のアナウンス効果だけで、すでに赤裸々に始まっています。

そして、とうとう、歴史的瞬間である「人類未踏のQE2」の「規模」の発表が、あと二日後の11月4日に迫ってきたのでした!

【アナウンス効果だけで証明された「QE2」の弊害と副作用】

理想家のFRBの予測に反して、現実には、ヘッジファンドを始めとする投機家たちのホットマネーが、2か月前の8月終わりから、この11月の「QE2」を織り込んでしまいました。
彼らのホットマネーは、日本株式市場を除く様々なリスク資産で、この秋の初めに、「過剰流動性相場(投機マネーによるバブル)」を形成してしまいました。

世界のマーケット関係者の間でも、「『QE2』は、国家ぐるみの確信犯的なねずみ講で、悪魔の杖になるのではないか・・・・」と、疑問視・不安視する声が、徐々に高まってきています。

新興国の国々では、もう既に、先進各国から新興国群へ、大量の「気まぐれな投機ネー」が流れ込むんでいるのを警戒して、防衛する動きが続出しています。
「アジア通貨危機の二の舞が御免」と、ブラジル、タイ、インドネシアでは、もう既に、資本流入規制を実施しはじめました。

「想定以上に急速に進むドル安」「新興国および資源コモディティーでのバブル形成」「なにやら雲行きが怪しくなってきたアメリカの長期金利の動向」と言う意味では、FRBの「QE2」は、8月下旬のアナウンス効果だけで、たったの二カ月間だけで、その弊害と副作用を、十分すぎるくらい十分に、証明したとも指摘できます。

あまりに急速に進むドル安(ドル国債売り)に、ガイトナー財務長官が慌てて、この10月下旬には、「強いドルはアメリカの政策」発言をしたことは、記憶に新しいことです。

はたして、アメリカFRBは、11月4日のFOMCで、いったい全体どれくらいの規模の「QE2」を発表できるのでしょうか?

【いざ実行となると、意外と難しいQE2】

1990年代、アメリカの経済学者であるクルーグマンとバーナンキは、「失われた10年」時代の日銀が国債の買い支えなどの量的金融緩和を小出しにしか行わないことを強く批判して、「STUPID!」と批判していました。

実際、成熟国家の最終的な運命、成熟し過ぎた国が最後に辿ってしまうサダメである「巨大な不動産バブルの形成と崩壊、そして衰退」という順番が、我が身に初めて降りかかったとき、はたしてバーナンキ・アメリカFRB議長は、超大量のヘリコプターマネー「QE2」を再びバラまけるのでしょうか・・・・。

成熟国家の投資家のほうが、理想家肌のバーナンキFRBよりもずっと賢くって、バーナンキの「QE2」のヘリコプター・マネーは、かつての90年代の日本のように、アメリカ国内の投資に向かうことなく、本来の「QE2」の目的からすっかりかい離してしまう可能性が高まっています。
つまり、国内で無駄に山積みされたままになるか、あるいは、新興国バブルや資源コモディティーで制御不能のバブルを形成するか、最終的には、ドル国債をはじめとする長期金利の想定外の上昇を招いてしまう可能性が、現実のものとなって来ているのです。

【マーケットは具体的にはどのように反応するか】

マーケットでは、「QE2の規模が、5,000億ドル以下ならば、ヘッジファンドなどの投機家は落胆して、『売り』。1兆ドル規模以上ならば、ヘッジファンドは大喜びで、『買い』」
「FRBは、一旦は半年かけて500億ドル規模程度の小出し実験をして、とりあえずドル安を推し進めるけど、来年初めには、ドル国債の長期金利がコントロール不能の上昇に遭遇し、株式などの資産価格も下落を開始する」
「FRBは『QE2』は、一回は実験してみて、来年あたり失敗してから撤退」
「FRBの巨大なネズミ講だから失敗する。」
などなど、様々な予測・憶測が飛び通っています。

はたして、人類未踏・前代未聞のFRBの「QE2」は、悪魔の杖なのか、魔法の杖なのか、11月4日から、実験が開始されます。
個人的には、とても興味しんしんです。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑