ユニクロの致命的な弱点を見つけたり!

2010年11月08日 14:59

★加藤鉱の会社すくらんぶる  ファーストリテイリング編★

 ファーストリテイリングのようにメーカー機能を持つ小売業をSPA(speciality store retailer of private label apparel)・製造小売業と呼ぶ。
 自前工場こそ持っていないものの、生産以外は商品のすべてに携わるやり方なので、実はユニクロとはファーストリテイリング社のプライベートブランド(PB)ということになる。
 ユニクロのフリースがバカ売れした1998年頃から日本のメディアは、やたらとSPAという言葉を使いだしたけれど、これは別に目新しい手法でもなんでもない。

【5兆円構想に厳しい視線を向けるアパレル専門家たち】

 わたしの知るかぎり、アパレル産業での先駆者は、1980年代に香港で大ヒットしたジョルダーノ。商品開発、原料調達、生産工程、流通、販売まで、つまり川上から川下までの全工程を管理、加えてITを駆使したジョルダーノ・モデルは瞬く間にアジア中に広まっていった。

 だが、1989年にわたしの取材に応じたジョルダーノの創業者のジミー・ライ氏は、「SPAはヨーロッパの小売業のやりかたを参考にしただけ」と明かしたし、その頃からわたしは欧州系の食品商社の人間からさかんに「SPF」という言葉を聞かされていた。これはspeciality store retailer of private label foodsのことで、すでに当時から欧州の小売業は食品のPBを開発していたのだ。

 それはさておき、知ってのとおり、ユニクロの柳井正会長兼社長は「2010年度のグループ売上8000億円(予定)を2020年までに5兆円にする」という大風呂敷を広げている。
 ユニクロのグローバル化は10年前からスタートしており、今年5月には世界最大のグローバル旗艦店を上海に出店、中国市場では1000店、売上1兆円を目論んでいる。

 いつの時代にもとてつもないアドバルーンを打ち上げる企業は登場するものだし、マスコミはそのたびに騙され続けてきた。たとえば、ヤオハンの和田一夫代表などはその代表だった。はたしてユニクロはどうなのか?
 アパレルの専門家に聞くと、本音ベースではかなり厳しい目で見ている。

「開発はすべて東レ頼み。毎年ヒット商品が出るという前提で達成できる計画には疑問」
「あそこまでシンプルなデザインとラインアップではグローバルでは通用しないのではないか」
「中国人のテイストはどちらかというと欧米人に似通っている。飽きられる前に、大幅なトレンドチェンジが不可欠」

【ユニクロは本当にアパレル企業なのか?】

 わたしは生産面で懸念を抱いている。ユニクロが本気で2020年に年商5兆円の売上げ達成を考えているならば、今後の最大の課題は、どう製造委託先工場を確保するかだと考えている。
 欧米の衣料チェーンや総合スーパーのほぼすべてがSPAをやっていて、ユニクロとはケタ違いの発注量で、優秀な製造委託先を囲い込んでいる。現実には、日本の繊維商社でさえバイイングパワーでは欧米のグローバルリテーラーにはまったく歯が立たない。しかも日本勢はクオリティに厳しいという理由で、製造委託先から敬遠される傾向が強い。要するに、「買い負け」しているのだ。

 数年前から、日本の専門商社がグローバル市場においてマグロや鶏肉の買い付け交渉で他国業者に買い負けしていると話題になっているが、それと同じ現象が衣料の分野でも起きているわけである。
 これまでユニクロのSPAの主力工場は中国華南地区にあったが、数年来の人件費高騰により優位性がかなり薄れてしまった。
 そこでユニクロはバングラデッシュ、ベトナム、カンボジアあたりに製造拠点を移しつつある。特にバングラデッシュでは貧困層向け「マイクロファイナンス」で知られるグラミン銀行と提携、ユニクロは同行のネットワークを利用した対面販売で恩恵を受け、銀行側はユニクロ工場の大量雇用で国民の所得増を期待できるといったウィンウィン関係を築く計画が伝えられている。

 そんな矢先、ユニクロを退社した人の集まる会があるというので、取材に行った。20代後半から30代前半の十数人が集まっていた。大手百貨店やアパレルメーカーを蹴ってユニクロを選んだという人たちが多く、若者たちのユニクロ人気を再認識させられた気がした。

「なぜ、あなたはユニクロに入社したのですか?」
「海外勤務の可能性が高いから」「実力主義だから」「柳井さんにあこがれていたから」などという答えが返ってきた。
「勤めてみた実感はどうだったですか?」
「すべてがマニュアル化していました」
入社5ヶ月で一人前の社員になり、2年で必要な資格をとり店長となる社員教育システムが完璧に出来上がっているのだという。
 だが、彼らはそれが嫌で退社したわけではない。
そして異口同音に言い募った。
「洋服の好きな人がほとんどいない会社なんです」「洋服のことがわかっていない」「アパレルの会社ではなかった」

餅屋に餅がない会社になってしまった。これが現在のユニクロが抱える最大の弱点ではないか。

ノンフィクション作家 加藤鉱

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