12月8日を知らない若者 - 原 淳二郎

2010年12月14日 17:24

たまたま12月8日が大学の講義日に当たった。授業の冒頭、「今日は何の日か、知っているひとは手をあげて」と聞いた。だれも手をあげない。ひとり女子学生が答えた。「ジョン・レノンの命日です」。腹の中で「お前は日本人か」と叫んでいた。


ことし12月8日は太平洋戦争の開戦、日本軍の真珠湾奇襲から69年。来年で70周年になる。実は去年も同じころ、同じ質問をした。数人が手をあげ、正答した。12月8日が何の日か知らない若者が増えているという記事をどこかで読んでいたから、確かめてみたかった。若者でも日本人ならだれでも知っていると思っていた。だが、報道の通りだった。8月15日は何の日か、質問する気にはなれなかった。授業のついでに9月2日は何の日か聞いてみた。戦争というコンテキストでの質問だから正答はあった。だが東京湾上の米戦艦ミズーリ号で重光葵全権 が降伏文書に調印、国際条約上の終戦が確定した日であるということまでは知らなかった。

戦争の記憶は年々薄れていく。新聞やテレビがいくら戦争の特集をしても薄れていくのは仕方がないが、なぜあのような戦争を始めてしまったのか、語 り継ぐ責任が年寄りにはある。戦争の実体験がない戦中派の自分も高齢者に仲間入りしている。戦争体験を語り継ぐほどのものはないが、現代に最も近い戦争について、終戦の日の記憶は残り、開戦の日の記憶は薄れていく。敗戦という被害者意識は長く残り、加害者としての記憶は先に消えていく。人間という動物の記憶は都合よくできている。

私でさえ、日露戦争の開戦日、終戦日など覚えていないのだから、太平洋戦争がもう歴史の1ページでしかなくなっていても不思議ではない。戦争が始まった年、終わった年、それくらいしか歴史の教科書に残らない日はすぐそこに来ている。

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