Twitterの潜在力

2010年12月27日 09:18

Twitterというものの潜在力は、どうも思っていたように大きそうです。それと言うのも、Twitterの使われ方が多方向に拡散していて、その意義を固定的に定義することも難しくなりつつあるように思えるからです。


Twitterの「拡散」は、「使われ方」だけでなく、「利用者数の急速な増加」という形でも顕著です。しかもその拡散は全世界に及んでおり、使われている言語も多彩、英語は既に30%をきったとも言われています。

今年の8月1日の時点で、全世界でのTweet総数が遂に200億回に達したというニュースがありました。この200億回目のTweetを行ったのは、奇しくも日本人だった由ですが、それもその筈、この時点で既に日本人の利用者数は米国人を超えていたとの事です。しかし、その後はブラジルやインドネシアでの利用者の増加が著しく、現時点ではこの両国が、それぞれ利用者数で第1位、第2位を占めているとのことです。

ブラジルは総人口で世界の第5位、インドネシアは第4位ですから、この事は分からないでもありません。中国が上位に現れてこないのは、Twitter類似のサービスが中国企業の新浪(SINA)から出ているので、それが計算に入っていない故でしょう。インドはまだこれからなのでしょう。米国の利用者が意外に少ないのは、Face bookなどに分散しているからだと思われます。

あまりご存知でない方の為に、Twitterの一般的な使われ方を一言で説明しようとすれば、下記のように言えるかと思います。

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140字という文字数の制限の中で、誰でもが「ふと思った」事を携帯端末等に打ち込むと、その人をFollow(常時注視)している人達がこれを見て、面白いと思えば自分をFollowしている他の人達に転送(Retweet-RT)したり、返信の形でコメントを出したりします。

RTによって見ず知らずの人達が次々にFollowerの輪の中に参画する事になるので、面白いTweetをする人のFollowerは時を経るにつれて自己増殖しますし、返信に対する返信の応酬があったりして、議論が沸騰したりすることもあります。キーワードを登録する事によって、テーマごとの議論に参加することも出来ます。

参加者に読んでもらいたいウェブ上の記事などがあれば、URLを添付しておけば、そこに多くの人達を誘うことも出来ます。また、携帯電話端末が主要なツールになっていることから、写真の添付が彩りを添えるのも、魅力の一つとなっていくでしょう。

一番重要な事は、他のソシアル・ネットワーク・サービス(SNS)やウェブ上でのチャットと違う点として、全てが「人」から始まり、その「人」の周りに一種のコミュニティーが自然に形成されていくというところでしょうか。

「ビジネスでの利用方法」や「広告としての使い方」等に言及すると、長くなりますので、ここでは省かせて頂きますが、このあたりの事については、「ウェブを使ったマーケティング開発の第一人者」と言われているタラ・ハントさんの「ツイッターノミクス」という好著(文芸春秋刊)があるので、是非ご一読頂きたいと思います。

また、ニュースの速報性という意味で、今後のジャーナリズムのあり方に対してTwitterは大きな転換をもたらすものと思われ、これもまた極めて重要な問題ですが、話し出すときりがなく、ちょっと違ったテーマに属する問題でもある事ゆえ、今日のところは割愛させて頂きます。

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米国ではFace bookが圧倒的な集客力を持っていますが、Face bookは、学校の中から始まったという歴史的背景が示す通り、若者中心であり、現時点では、Zyngaのソシアル・ゲームなどに巨大な数のアクセスが集中しています。これとは対照的に、Twitterには大会社のトップエグゼクティブや政治家、著名な評論家なども参画しており、利用者の年齢も幅広く拡散しているようです。

世界有数のTwitter王国ともいえる日本の情況を見ると、11月における総ユーザー数は1,600万人と推定されています。年初の利用者数は500万人強に過ぎなかったのですから、1年間で何と3倍になったという事です。日本でのFace Bookの利用者は、殆ど増えておらず、現在でも300万人を割り込んでいますので、これはあまり比較になりません。日本最大のSNSと言われるMixiの利用者も、年初の数字と殆ど変らず、960万人にとどまっていますので、瞬く間にTwitterに抜かれてしまった事になります。

日本ではTwitterを巡る話題も豊富でした。鳩山前首相が早々と自らTweetをはじめ、首相を辞めた現在でも67万人を越えるFollowerがいます。Tweetの内容は、当たり障りのないものが多く、あまり面白いとは言えませんでしたが、Followerから寄せられるコメントは、スタッフが丁寧に分析していたと思います。今は綻びばかりが目立つ民主党政権ですが、「一国の首相が自らTwitterをやるのか」という事で、当時は注目を集めました。

尤も、政治家として本格的にTwitterを利用したのは、ベネズエラのチャべス大統領で、彼の場合はスタッフ200人の特別チームを作り、公的基金も設立して、Followerからの要望に丁寧に応えているとされています。

ビジネスの観点からその有益性を認めてTwitterを使い始めたのは、ソフトバンクの孫正義社長を嚆矢とするでしょう。彼は今年の1月からTwitterを始めましたが、既にTweet数は3,150を超え、Followerの数は鳩山前首相を超える71万1,877 人(12月26日現在)に達しています。このFollowerの数は、相当以前からやっているビル・ゲイツ氏の192万6,628人には及びませんが、日本人の実在の人物の中ではトップだと思います。

孫社長のTwitterの使い方は、「発信」(「純粋な独り言」や「報告」「呼びかけ」を含む)、「問いかけ」、「要望への応答」の三つから成り立っていますが、最も画期的だったのは、最後の「要望への応答」でした。Followerからの要望の幾つかに対しては、即座に「やりましょう」又は「検討します」といった答えを出し、約束した事柄については、実現したときに「出来ました」と報告、「え、こんな形で本当に自分の要望が実現するのか!」という驚きに満ちた感動の輪が広がりました。

しかし、私がこんなことを書くと、「これこそ孫さんお得意の『スタンドプレー』じゃあないか。俺はそんな『子供だまし』には騙されないぞ。それが証拠に、都合の悪い突っ込みには沈黙を守っているじゃあないか」と、水を差す人が必ずいるでしょう。孫さんには熱烈なファンが多い一方で、残念ながら不信感に凝り固まっている人達もいるので、これは止むを得ない事かもしれませんが、実情を知っている私は、「それは違う」と声を大にして言いたいのです。

孫さんのTweetに対するFollowerからのコメントには、「賛辞」と並んで、「ソフトバンクに対する不満」をストレートにぶつけてくるものも、当然数多く含まれています。特に現時点では、iPhone等による通信トラフィックの急激な増大にネットワークの通信能力が追いつけていない為に、通信品質に対する強い不満が噴出しており、厳しいコメントが満ち溢れています。私が声を大にして伝えたい事は、それらのコメントは、筋の通ったものである限りは、全て真摯に受け止められており、決して無視されている訳ではないという事です。

勿論、これらのコメントにストレートに答える事は、多くの場合不可能です。対応策は真剣に議論され、既に実行に移されていても、結果が確約出来ない時点では、会社として発表するわけにはいかないからです。これは、決して逃げているわけではなく、「会社としての公式な発言には慎重を期さざるを得ない」故です。

私が何故ここでこの事をこんなにも熱心にお伝えしようとしているかといえば、何も「会社の誠意」をここで宣伝しようとしているわけではなく、私自身が感じ入ったTwitterの威力についてお伝えしたいからです。

1月の後半の或る日に、孫社長は、「今日の経営会議で、多くの皆さんからご指摘頂いた電波問題についての心からの反省を真摯に語り合った。皆さん、本当に有難うございます。頑張ります」とTweetしていますが、それが掛け値なしに心の内を語ったTweetである事は、実際にその日の経営会議に参席していた私が保証します。

この事は、逆に言えば、私自身を含む社内の技術問題に携わる幕僚の「それまでの非力」を告白する事でもあります。ネットワーク増強への取り組みは、これまでも決して手を抜いていたわけではなかったのですが、Twitterを通じてのユーザーからの直接の突き上げがなかったら、孫社長があそこまで闘志をむき出しにするには至らなかっただろうと思うからです。

それ程迄に、Twitterが契機となったこの日の経営会議での議論は、「大きな転換点」となる「一つの重要な決意」を生み出し、その後の多くの具体的施策に影響を与えたのでした。

Twitterは、いわば道を行き交う全ての人々に対して、自由に参加する事を呼びかけるパーティーにも似たものです。老若男女を問わず、また仕事上の立場や信条も問わず、不特定多数の人達に対して、自分の言いたい事を言い、その人達の自由な発言に耳を傾ける場を提供するのです。

私自身について言うなら、生産的な発言が一切なく、唯ひたすら「意味のない悪口雑言」を撒き散らすような人には、時として「ブロック」という形で退場をお願いする事もありますが、基本的には、「匿名の人達の無遠慮な批判」をも大いに歓迎しています。それは、「多くの人達が感じている事には、世の中の真実が宿っている」と思っているからです。

一言で言うなら、「Twitterを通じて経営幹部がユーザーと直接向き合う事を厭わない企業」は、「それを面倒と思う企業」に今後大きな差をつけていく事になるだろうと、少なくとも私自身は感じています。これは、企業にとって、タラ・ハントさん達が説く「Twitterによるマーケティング戦略」以上に重要なものだと、私には思えてなりません。

更に言うなら、この事は、世の政治家にとっても、企業に対する以上の意味を持つ事になるでしょう。これについては、大統領自身のTwitter重視の姿勢が際立っているベネズエラの実績を、これからよく吟味していく必要があると思います。

さて、最後に、私自身のTwitter体験についてもう一言。

私は、実はずっと以前に、息子からTwitterというものが存在する事を聞いていましたが、その意味が一向に理解できず、「へえ、世の中には暇な連中がいるんだなあ」とだけ思っていました。ですから、まさか自分がTwitterにハマる事になろうとは、夢にも思っていませんでした。

しかし、今年の初めに孫さんから奨められて半信半疑でやり始めてみると、いつしかそれが生活のリズムの一つになってしまいました。一回の送信が140字に限られているので、電車を待つ時間とか、会議が始まるのを待つ時間とかいった、ちょっとした時間が利用出来、仕事の合間の息抜きにもなります。私の場合は、寝起きが悪くて朝はなかなかエンジンがかからないので、この時のウォームアップにもなりますし、就寝前のクールダウンにもなります。

既に始めてから1年になりますが、丁寧にやっているうちに、私のような無名の人間でも、いつの間にかFollowerが17,387人(12月26日現在)になっており、何となく親類縁者が増えたような不思議な気持になっています。Twitterからの誘導でアゴラの記事を読んで頂けた人も、相当の数に上ると思います。

Twitterが契機となって昔懐かしい人との邂逅が果たせたり、面白い考えを持った人と出会えたりという事もあり、最近では、Twitterとは一生の付き合いになりそうな気持になっています。

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