経常黒字は財政破綻とは関係ない

2011年01月04日 08:00

日本財政は、毎年の借金が税収を上回る、つまり「財政赤字>税収」という異常事態に2年連続で陥り、危機的な状態にある。もはや歳出削減や埋蔵金の活用には限界にあり、将来世代への負担先送りをやめ、世代間格差の改善を図るためにも、ある程度の増税が必要なのは明らかだ。新年こそ、危機回避の転換点にしてほしい。


しかし、「日本政府の借金はほぼ内国債であり、経常収支が黒字だから、財政破綻は起こらない」という議論を時々耳にする。

この議論が妥当か否か、やや極論であるが、以下のような「アリとキリギリス」のケースを例に考えてみよう。論点を明確化するため、政府が存在しないケースと存在するケースの2ケースを考える。

まず、政府が存在しないケースであるが、この経済には、アリとキリギリスが1匹ずつしかおらず、真面目なアリは毎年、自らの労働で100の食糧生産を行い、国内で80の売上(アリとキリギリスは40ずつ消費)、海外から20の売上を得ているとする。また、労働コストはゼロとする。他方で、怠け者のキリギリスはまったく働かず、アリから毎年40の借金をして生活しており、いまやその借金は1000にも達する。なお、この経済では、海外からの売上20が経常黒字に相当し、GDPが100、国内消費が80、貿易黒字が20となる。

さて、このような状況で、キリギリスはいつまでアリから借金ができるだろうか。

キリギリスは働かず、収入ゼロだから、さすがにアリも心配になり、通常ならばもはや借金を認めなくなるだろう。その際、キリギリスとアリは交渉を行い、キリギリスも来年から働き、借金の半分は返済するが残りはデフォルトするような取決めをするかもしれない。

次に、政府が存在するケースであるが、その際、政府は国債発行でアリから毎年40の借金をして、キリギリスに40の給付をするケースを想定する。しかも、キリギリスの借金1000も政府がタダで引き受ける。つまり、政府の債務1000はアリの資産1000に一致し、政府は毎年40の財政赤字を計上する。このとき、政府には課税権があるから、アリが政府を信任して、さらなる借金ができる可能性がある。

しかし、この構図もいつまで続けることができるだろうか。

政府の借金はアリの資産に一致するから内国債であり、経常黒字20があるから、大丈夫と結論付けることができるだろうか…。

前者と後者のケースの違いは、キリギリスの借金に、課税権をもつ政府が介在しているか否かのみである。だが、この経済で生産をしているのはアリのみであり、政府が、キリギリスが真面目に働いて得る収入に課税してその借金を返済しない限り、アリが損するのは明らかである。

将来的にキリギリスが働くつもりはない場合、実質的に返済を行うのはアリ自身で、アリはキリギリスに毎年40の寄付を行っていることになり、政府からこれ以上の国債を引き受けるのは合理的でない。その場合、前者と同様、アリが心配になり、もし政府がアリに借金40を引き受けてもらえなくなると、この構図が破綻する点は変わらない。

なお、政府が海外から獲得したアリの売上20に課税をして借金を返済する場合についてもアリが損をするのは明らかであり、その場合、アリが政府からこれ以上の国債を引き受けるのは合理的でないのはいうまでもない。したがって、経常収支が「赤字だから」あるいは「黒字だから」というのは、問題ではない。

確かに経常収支が赤字、つまり海外からお金を借りている状態の場合には将来に海外から厳しい借金の取立てがやってくるかもしれないが、経常収支が黒字の場合には海外から取立てにやってくることはない。

ただ、それでもますます増えていく借金をアリに負わせるのに限界があるのは明らかだろう。つまり、「経常収支が黒字だから、財政破綻は起こらない」というのは、「アリはどんな膨大な借金にも耐えられる」といっているに等しい。

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