「パチンコもカジノも解禁しよう」論に対して - 木曽崇

2011年01月04日 12:04

経済学者・池田信夫氏がカジノ合法化についてコメントしてくれています。

パチンコもカジノも解禁しよう
http://news.livedoor.com/article/detail/5227849/

まずは、影響力の大きい論客の方にこの論議に参加して頂けることには、このテーマを専門としている研究者としては心より感謝を申し上げたいと思います。そのように御礼を申し上げた上で、私なりの指摘および意見を述べさせて頂きたいです。


世の中にはパチンコとカジノを同一視し、「カジノを合法化するのならば同時にパチンコも合法化すべきだ」という主張があります。池田氏も同様なのですが、この根底には必ず「パチンコは実質賭博なのだから…」という見解がある。しかし、これは我が国の賭博行政に関する知識不足から生ずる間違った論議であると考えます。

大前提として皆さんにご理解頂きたいのは、我が国の刑法は「ギャンブル(射幸)性のある娯楽」を完全に禁止しているわけではなく、刑法の適用が除外される例外規定があるという点です。

刑法 第185条
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。


現在、皆さんが街で見かけるパチンコ店は、この刑法185条で規定される賭博罪の例外規定に基づいて存在しているもの。より具体的にいうと刑法185条の示す「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」の範疇を、さらに詳細に規定した「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風適法)」およびその関連規則に則って営業が行われています。この風適法に基づいた営業行為は「遊技」と呼ばれ、刑法で禁止がなされている「賭博」とは一線を画すものとして規定されています。

ここでまず皆さんに理解して頂きたい点は、「ギャンブル性を持った遊び」のすべてが賭博なのではなく、世の中には「ギャンブル性は持っているが、賭博とまではいえない遊び」の存在が認められているという事です。これは別に我が国だけの特殊な理解ではなく、海外でも存在する概念。欧米圏ではこの種の遊び を「AWP: Amusement with Prize(賞金つきの娯楽)」と呼び、さまざまな国が我が国と同様に賭博とは分けて法的に規定しています。

さて、ここまでは我が国の法理解に基づく事実です。そして、ここから先は私の見解です。

世の中の「カジノを合法化するのならば、同時にパチンコも合法化すべきだ」という主張の根底には、「パチンコは実質賭博なのだから…」という見解があると述べました。しかし、この見解は「ギャンブル性のある遊び」はすべてが「賭博」であるという間違った理解からスタートしていないでしょうか? 繰り返しになりますが、我が国の刑法は「ギャンブル性のある遊び」をすべて一様に禁じてしまうような法律ではありません。国民が「一時の娯楽」として楽しんでいるものに関しては、一定の範囲で市井に存在しても良いとしている。

逆にいえばパチンコ業は、それが刑法が例外として定める「一時の娯楽」の範疇を超えないように、常にそのギャンブル性(射幸性)がコントロールされながら合法的に存在している産業であるのです。なので、「あれは実質賭博なのだから、いっそ賭博として合法化してしまえ」という論議は、論議の方向として間違っているのです。もしパチンコが「実質賭博」となってしまっているのならば、むしろ現行の風適法の運用が刑法の定める例外規定を超えてしまっている事を問題視すべき。事実、パチンコのギャンブル性が過度に高くなりすぎていると判断された時期には、風適法の運用に変更がなされそのギャンブル性を抑えるような施策がとられています。

実は現在のパチンコ産業はそのような運用規則変更の結果、この10年来で最もパチンコのギャンブル性が抑えられている時代。もはやゲームセンターのメダルゲームの方がギャンブル性が高いのではないか?などとも言われる程です。

閑話休題。
それでは一方で、なぜ公営競技や宝くじなど、完全に「賭博」の範疇に入るものが我が国で存在し得るのか。これを突き詰めれば、池田氏がもう一方で主張し、私が専門とするカジノ合法化論議に行き着くわけですが、それにはまた別の法的根拠があります。以下は以前まとめた記事ですが、ご興味のある方は、ご参照下さい。

我が国に合法賭博が存在するわけ
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/758018.html
(木曽崇 国際カジノ研究所 所長)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑