最優先課題は選挙制度改革の争点化

2011年01月08日 12:26

2009年9月に自民党から民主党への政権交代が実現して1年半弱。政権交代によって、停滞した日本経済と、制度疲労甚だしいこの国の抜本的な構造改革が行われると考えた有権者の期待は、完全に打ち砕かれました。

「支持率が1%でも辞めない」というリーダーの言葉は、紙面を埋めるため毎週のように支持率調査を繰り返すマスコミへの皮肉として、また、一年足らずで政権を投げ出し続けた過去の先輩首相達への皮肉としては有効でしょうが、一方で「国民がなんと言おうと、この地位は絶対手放さない」とでもいうような地位への執着の声にも聞こえます。

また歴史上も多く例がみられるように、政権をとった権力者がまず手がけるのはライバルの粛清であり、現状が余りにセオリーどおりに進んでいることにも苦笑してしまいます。

なぜこんなことになってしまったのでしょう?ようやく実現した政権交代が、こんな期待はずれの様相を呈している理由は何でしょう?


私の考えでは、それは、民主党に政権をとらせた勢力が、必ずしも“日本の構造改革を心から望んだ有権者”だけではなかったからです。民主党の政権奪取の功労者のひとつは、連合に代表される労働組合組織であり、もうひとつは小規模兼業農家を中心とする地方の有権者でした。

もちろん、改革を切望した都市部有権者の票や若い世代の浮動票が民主党に流れたことは最後の決め手とはなりました。しかしそれらの票はあくまでも”決め手”となっただけであり、そもそもの勝負の土台となる組織票なしに全国の小選挙区で議席を積み上げることはできなかったでしょう。

社会党の崩壊以来ずっとくすぶっていた労組の支持を取り付け、小泉政権で自民党に裏切られた地方の農業票を自民党から奪い取った小沢一郎氏の選挙手腕なくしては(都市部の浮動票獲得だけでは)政権交代は起こりえなかったのです。

だから政権をとった後の民主党の政策や姿勢が、あたかも一昔前の左翼政党とそっくりに見えることや、TPPや所得保障政策に関して常に農業関係者が最優先に語られることは当然の帰結ともいえるでしょう。

(農業票の政治力に関する分析については“農政にみる民主主義の罠”-「Chikirinの日記」をご覧ください。)

★★★

では「抜本的な構造改革を求める勢力」の力だけで、政権をとらせることは不可能なのでしょうか?

この実現には2つの克服すべき障害があります。ひとつは一票の価値の格差です。抜本的な構造改革を求める勢力は都市部に多く、その票の価値は司法の場で違憲判決がでるほどに低いものです。まずは公正な票の重みを取り返さない限り、この勢力だけで支持する政党に政権を取らせることは困難です。

私は一票の格差は、今のこの国では「最も深刻な格差問題」だと考えています。

もうひとつの問題は、抜本的な構造改革を求める層に非常に不利な(時代遅れの)選挙制度です。現在の選挙制度では公示日以降はネット上で演説会のスケジュールを更新することさえ問題だといわれたりします。ツイッターやブログで政策の説明をしたり有権者からの問いに答えるなどもってのほか、ということになっています。

また選挙日にはわざわざ住民票登録された地域の小学校や公民館まで出向く必要があり、職場の近くでの投票もできないし、出先からスマートフォンや携帯で投票することもできません。

このため、平日の昼間から公民館に集まっての支持大会にでることが可能な人たちや、活動範囲の狭い人たちと比べて、土日も働いていたり、土日しか遠出できない多忙な都市部の人たちの選挙権行使コストが非常に高くなっています。

またこのような選挙制度の中では、立候補者側も効率的なネット上での政策討議より、毎朝の駅前での連呼のような“根性系”行動を優先する必要があるため、それらの非合理な選挙運動が嫌いな人たちは立候補自体をしなくなります。

実際、ネットやマスコミ上で政治や政策について継続的に発言している発言者の多くが、「選挙にでるなんてばかげたことは、自分には絶対できない」と考えていることでしょう。

このように、まともな人ではとても立候補する気になれないような選挙制度にしておくことによって、「どんなにバカげたことをやってでも権力を手にしたい」と思う人が当選しやすい制度が維持されているわけです。

★★★

この現状を打破し、“抜本的な構造改革を求める人たち”が支持する政党が政権の中核を担えるようにするには、下記のふたつが必要です。反対にいえばこのふたつだけ実現すれば、政治家の言動も、有権者行動も、当選する人たちの顔ぶれも大きく変えることができるでしょう。

(1) 一票の価値の格差是正
(2) 時代にあわせた選挙制度の合理化

今の制度のまま次々と異なる政党に政権を回しても、結局は「浮動票を獲得するために口では改革を叫びながら、裏では組織票を得るために利益誘導型の政策を着々と推し進める政治家」しか当選できないし、そういう政党しか政権を獲ることができません。

今、私達が声を合わせて主張しなければならないことは、このふたつの政策を争点化すること、そして、それを最優先課題として推し進めると確約した候補者に投票すると宣言することではないかと思います。

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