映画『ソーシャルネットワーク』からの裏話 - @ogawakazuhiro #socialnetwork

Facebook誕生秘話を描いた『ソーシャルネットワーク』がゴールデン・グローブ賞4部門を制したことをご存じの方は多いでしょう。

次はオスカーを手にできるかどうかが楽しみですが、今日はこの映画に関するネタをいくつか紹介しながら、話題を提供しようと思います。

まず、主人公のマーク・ザッカーバーグと、Facebookのアイデア盗用を訴える、ハーバード大学のボート部の双子のウィンクルボス兄弟は、アーミー・ハマーという役者の一人二役なのですが、彼は実際にも石油王を曾祖父に持つ富裕層の出です。あれだけ長身でハンサムなのに金もある。困ったものです(笑)。
また、同じくマークを訴える共同創業者の一人、エドゥアルト・ザヴェリン役のアンドリュー・ガーフィールドは、次期スパイダーマン役に抜擢されています。

そして僕がもっとも好きなエピソードは、ショーン・パーカーとマーク・ザッカーバーグ達3人が初めて会う中華レストランのシーンです。

ちまたではマークとショーンがヴィクトリアシークレットのモデル達と飲んでいるクラブでのシーンが人気?のようですが(もちろんこのシーンも素晴らしいが)、僕はショーンのカリスマ性に3人の年少の若者が圧倒される初対面のシーン、そしてその裏側の「ある事実」がたまらなく気に入っています。
詳しく説明しましょう。

Facebookを気に入ったショーンから連絡を受け取ったマーク達は、NYの高級中華レストラン「トライベッカ」に招待されます。

25分の遅刻の後で、プラダのジャケットに身を包み、風を切るように颯爽と現れたナップスターの創業者に、マークは強く憧れ、ザヴェリンは打ちのめされ、(ザヴェリンの彼女の)クリスティは眩惑されます。めまぐるしいまでの早口とジェスチャーたっぷりの話し振り。音楽業界やベンチャーキャピタルとの苦闘の歴史。彼らとの軋轢を復讐心たっぷり話すショーンはまさしくネット業界の破壊と創造のカリスマです。
100万ドル程度の企業価値で満足するな、10億ドルを狙え(ワンミリオンではなくワンビリオンだ、と韻を踏んでいます)と発破をかけ、年若の起業家の心をつかむのですが、たくさんの小さな魚より、1匹のでかい魚を釣れ、とか、パーティを23時に終わりにするな、楽しいことはこれからだ、というように、非常にうまい比喩で彼らを魅惑するのです。最後に、元はTHEFACEBOOKという名称だったFacebookから”THE”をサービス名から外せと言い放って立ち去る姿もクールです。そもそもジャスティン・ティンバーレイクがショーン役を演じるという皮肉も素晴らしい。

ところで、ナップスターは音楽共有サービスです。ただし、著作権無視の。
だから訴えられた。そして裁判でショーンは身ぐるみはがされました。
しかしナップスターがなければiTunesの成功もない。ナップスターが音楽業界の古いパラダイムを確かに破壊したのです。(ここで彼と音楽業界の確執が生まれますが、ショーンからすれば裁判では負けたものの彼らの業界を破壊したことでおとしまえはつけたと思っている)

次に作ったPlaxoはアドレスブックの共有サイトです。言ってみればショーンは何かをネットで共有させるというサービスを考える天才です。しかし天才ゆえの脇の甘さがあって、Plaxoに投資していたベンチャーキャピタルの手によって、彼はPlaxoを追い出されてしまい、ストックオプションもすべて奪われてしまう。(ここで彼とベンチャーキャピタルとの確執が生まれます。いつか復讐することを生き甲斐にしているときに、彼はマーク達と出会いました)

ショーンからすれば、Facebookは、人間関係を共有するサイトです。一枚咬んで、自分も大成功しよう、そしてベンチャーキャピタルに復讐してやる。そう思った彼はマークを手伝い始め、かつ成功を阻害する要因となりそうなものはすべて排除し始める。その一つが、追い出されることになるエドゥアルトだったわけです。

そして、僕がこのシーンが大好きな最大の理由は、彼が実は金がなくトライベッカでの支払いを済ませると一文無しになっていた事実です(笑)彼はナップスターとPlaxoの成功でもまったく金銭的な成功を得ておらず、自己破産もしていたのです。
その彼が、やせ我慢をして、無理をして有名な高級レストランに若い三人を招く。一張羅のプラダを着て。そこに僕は一種の美学を感じます。

第三の”インターネット共有サイト”のプロジェクトに、何が何でも乗ってやる。そして成功して自分を追い出した連中に復讐する。
そんなショーン・パーカーの、自信に溢れた言動の裏で、実は勘定の心配をしていたとしたら?
それもまたカッコいいじゃないですか(笑)僕はそう思います。