日本を破綻に追いこむ「60年償還ルール」 - 井上悦義

2011年01月28日 13:27

来年度の国債発行額は「169.6兆円」にも及ぶ。

この内訳は、新規国債発行額44.3兆円(建設国債6.1兆円、赤字国債38.2兆円)、財投債14兆円、借換債111.3兆円となっている。この「借換債」とは、名前のとおり、借り換えを行うために発行される国債であるが、なぜこれほどまでに「借換債」の発行額が膨れ上がっているのだろうか。

意外に知られていないが、普通国債(建設国債、赤字国債)は、「60年」で償還すれば良いルールとなっている。


この「60年償還ルール」は、“建設国債の見合資産(つまり政府が公共事業などを通じて建設した建築物など)の平均的な効用発揮期間が概ね60 年であることから、この期間内に現金償還を終了する”(「債務管理レポート2010」P54より引用)という考え方の下、当初は「建設国債」のみに適用され、1973年度に初めて「借換債」が発行された。

しかし、“特例国債の本格的な償還を迎えるに当たり、厳しい財政事情の下で、その全額を現金償還しようとすると、極端な歳出カットや極度の負担増が不可避となり、経済や国民生活に好ましくない影響を及ぼすおそれがあったため”(同P55より引用)、1985年度からは「赤字国債(=特例国債)」にも適用され始めた。

※「赤字国債(特例国債)」:公共事業費、出資金、貸付金以外の目的で、日本政府の財政赤字を穴埋めするために発行される国債

では、例えば10年物の新規国債を600億円発行した場合に、どのような返済となるのだろうか。実は10年後に返済するのは、6分の1(10年分/60年分)の100億円であり、残りの500億円は「借換債」を発行して借り換えを行う。その「借換債」も10年国債で発行したとすると、次の10年後もまた100億円のみを返済し、残った400億円はまた「借換債」を発行する。このようなことを繰り返し、60年間で国債を返済していく-“予定だ”。(参照:同P55)

既にお気づきの方もいるだろう。

このルールが適用されて以降、1970年代や80年代に発行された国債もまだすべてを返し切っていないのだ。自転車操業もいいところだ。このルールの下、新たな国債を安易に発行し、そして都合の悪い借金返済のほとんどすべてを後世に先送り。多額の借金を残された世代にとっては「詐欺」以外の何物でもない。

今どき60年で減価償却をしている資産は、ほぼ皆無だろう。住宅購入の際に親子ローンを組んでも「50年」で返済しなければならない。なぜか、国の借金だけにこの「60年償還ルール」が採用され、誰も歯止めをかけることなく、現在に至ってしまった。

当然、このような仕組みになっているため、国債の発行残高が膨らめば膨らむほど、借り換えが必要な国債も増えていく。結果、「借換債」の発行額が膨らんでいく。近年は多額の新規国債を発行し続けていることもあり、2017年度には「借換債」だけで130兆円に達する見込みだ(「債務管理レポート2010」P24より)。

先日、2011年度予算案を基に2014年度までの歳入と歳出の見通しを推計した「後年度影響試算」が発表されたが、それによると財源不足(新規国債)は2013年度に50兆円に迫るようだ。財政法人などの財投機関向けに発行される「財投債」を含めると、毎年の国債発行額が「200兆円」に近づいていく日がまもなくやって来る。

こうなると当然怖いのが、金利の上昇だ。1%、2%の金利上昇でも、即座に利払い費が毎年2兆円、4兆円と増加していく。現在の税収は約40兆円しかなく、すでに約20兆円もの国債費(国債償還用の積み立て財源、国債の利払い費など)が無条件に税収から差し引かれ、手元に半分しか税収が残らないなか、これはとても無視できる数値ではない。安易なルールを運用し続けたツケだ。

景気回復に伴う「良い金利」の上昇であればまだしも、このままの状況を放置すれば、財政悪化懸念から「悪い金利」の上昇が起き始めるのは時間の問題だ。

日本の財政は今、大きな岐路に立っている。
(井上悦義 ブログ Twitter)

※参考資料:「債務管理レポート2010」

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