迷走する日本の英語教育 - 鈴木和夫

2011年02月07日 12:15

グローバル人材に不可欠である英語重視の傾向が強まっています。就活でも英語、特にTOEICを中心とする検定試験を懸命に学ぶ大学生が増えています。TOEICの受検生は昨年1年間で約180万人もいます。

書店にはTOEICの本が数多く並び、英会話講座では、最近では受講料が安いオンライン英会話の受講生が急増しているようです。就活生から社会人まで、アジアの中では遅ればせながら懸命に学ぶ若者や社会人の姿が浮かび上がります。


日本人の実力は?

日本人の英語力を見てみましょう。TOEFL(Test of English as a Foreign Language)の国際比較です。発表している国別得点によれば、2009年における日本人の平均点は、アジア30カ国中28位です。

ところで、TOEIC検定の落とし穴として、英語を話せないTOEIC高得点者がかなりいるのです。ある外資系の人材紹介会社では、「日本人はTOEIC900点くらい取っても、仕事では使えないレベルが多い」そうです。800点以上取っても、自己紹介さえできない学生も珍しくありません。

なぜならTOEICには、ヒヤリング、リーディングの試験はあっても、スピーキングがないことによる弊害が考えられます。学校教育では補えない英語をTOEICに求めるあまりに、TOEICの持つ欠点が、そのまま日本人の英語の実力に跳ね返っているように見えます。
日本の大学で、英語で講義できる教員は、何割いるのでしょうか。さらに日本の官僚、政治家、テレビや新聞の記者の中に外国語でグローバルに情報発信できる人は何割いるのでしょうか。ゆとり教育などとレッテルを張り若者の教育不足を指摘しますが、日本人の外国語教育を真剣に改めなければ、さらにJapan Passingされるでしょう。

アジアの中でとりわけ劣る日本人の英語力

ところで政府はグローバル時代に対応し、英語教育の充実に取り組んでいます。今年から小学校での英語教育が始まり、中学校では2012年度から英語の授業が現行の週3コマから4コマに増加する予定です。学ぶ語彙も3割増えるほか、会話と読み書きのバランスを重視した指導をする、としています。しかし、このような週に4時間程度の授業で英語が身に付くとは、到底、思えません。

アジア各国の英語教育

そこで、各国の英語教育を見てみましょう。例えばフィリピンはアジアでシンガポールと並ぶ英語の実力国民とされています。私が調べたところ、この国では小学校前から幼稚園で英語を教わります。小学校では、週30時間の授業はすべて英語で行われるそうです。当然、大学でも英語の講義が標準となります。こうして、フィリピンでは、米国やオーストラリアなどの英語圏の人々を相手のカスタマーサービス産業が発展し、GDPの1割を占めるようになりました。

韓国の上位の大学では、英語と韓国語の講義のどちらかを選択できて、意欲ある学生は英語を選ぶのだそうです。当然、教員は英語で講義できなければなりません。サムスンをはじめとする韓国のグローバル企業の躍進を支える人材を輩出できるのもこうした一気通貫の教育システムがあればこそでしょう。

愚かな政府の施策

政府の掲げる教員の実力向上を目的とする英語教育政策を見てみましょう。英語を教える日本人教員の力量を高めようと、文部科学省と外務省は来年度から、20~30代の若手教員100人を米国の大学に半年間派遣する事業を始めます。 若手英語教員、アメリカに半年派遣しようという政策です。これは愚策でしょう。今回の政府案で英語教員のわずか0.3%が派遣されても、まったく効果は期待できないでしょう。「英検準1級」以上などの資格を取得できた割合は全体の24%にとどまっている人の実力アップを期待するより、海外の優秀な人材を招いた方が、日本人の英会話力は増すと思います。

ろくに英語も話せない教員が多い日本の中で、もっと実力をつけろ、というわけですが、ここでタイムラグが生じます。教員の実力を高める→選ばれて海外派遣へ→帰国して教員の実力が確実に付いたと言えるまで、何年かかるのでしょうか。

私は、そんなことをする必要がないです。なぜなら、実力のある教養豊かなネーティブを雇いいれるほうが、日本人の英語力は急激に伸びるからです。

さらに大学の講義に耐えられる英語の実力がしっかりある博士号取得者でも、非常勤講師の仕事しかない状態を聞きます。現在の日本では英語の真の実力がない順に、いびつな英語教員の順序が構成されています。民主党は国民のやる気の息の根を止める愚策を実行しようとしていると思います。

小学校の英語の授業で成績を付けることに保護者の過半数が、ほとんど教員が反対です。教員の実力不足もあるでしょうが、競争を嫌うレベルでは、到底大きな向上は望めないのではないでしょうか。

今回のポイント
・ 英語教員には、フィリピン、シンガポールなどの英語検定上位国から雇用する。
・ 政府の英語教員海外派遣事業は効果のほどが期待できないので取りやめる。
・ 大学教員の英語レベルを上げ、学生には英語講義の授業選択ができるようにする。

バックデータ 一部抜粋

若手英語教員、米に半年派遣、文科省など、「生きた言葉」指導力向上。
2011/01/17, 日本経済新聞 
英語を教える日本人教員の力量を高めようと、文部科学省と外務省は来年度から、20~30代の若手教員100人を米国の大学に半年間派遣する事業を始める。英語の効果的な教え方を学ぶほか、ホームステイを通じてコミュニケーション能力も磨く。日本人留学生の減少が問題になる中、教員が率先して海外に飛び出し、若者の「内向き志向」の打破につなげたい考えだ。交通費や大学の受講料、滞在費は国が全額負担する。来年度予算案に計5億円を計上した。文科省によると、08年度時点で公立中学校の英語教員約2万8千人のうち、英語検定などの外部試験を受けた経験があるのは58%、通常の英会話を十分理解できるレベルである「英検準1級」以上などの資格を取得できた割合は全体の24%にとどまっていた。また、10年度に公立高校の英語教員約2万4千人を対象にした調査でも外部試験経験率は69%、英検準1級以上などの有資格者は49%どまりだった。

文科省 小学校の英語

○英語教育意識調査によれば、国語や算数などの教科と同じように評価(評定や観点別学習状況の評価)をすることについて、保護者の53.5パーセント、教員の85.7パーセントが「よくないと思う」と答えている。(また、保護者の59.4パーセント、教員の86.8パーセントが、英語が中学受験をする場合の科目となることについて「よくないと思う」と答えている。)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/06040519/002.htm
http://www.toeic.or.jp/toeic/pdf/about/transition1979_2009.pdf>
(鈴木和夫 ジャーナリスト MBA diploma)

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